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プロローグ とある女の日常の終わり
「こんなの……、こんなのってないよ」
加奈は今、目の前で起きている事態を理解したくなかった。職場から帰ってきた加奈を待っていたのは荒らされた家と倒れた一人の少女。全裸で横たわるその少女は加奈の唯一の家族、妹の真琴だった。
加奈は心の中に渦巻くとてつもない憤りを抱えながら、その死体のそばへ歩み寄った。
「真琴、起きてよ。……ねえ、真琴!」
その少女は既に息絶え、決して返事をする事はなかった。
「酷いよ、こんなの。」
妹の身体にはいたるところに傷があり、まともに直視出来なかった。
「あいつが……、あいつがやったんだ」
数時間前まで笑っていたはずの妹を抱きかかえ、加奈はあの男の顔を思い浮かべ、吐き気を堪えながら呟いた。
「殺してやる。この命に代えてでも」