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クリエイター×クリエイト  作者: 桜田櫻華
3/4

事の重大差

 暮羽くれはのしたことの重大差に気がついたのは、彼女に会ってから既に二日も後の事だった。むしろ、二日間その意味に気が付かなかった自分を殴り飛ばしてやりたい気分だ。

 まず初めに、『プレイヤーからの声』と表している掲示板に書かれていたこと。


【規定の範囲外で、犯罪行動を犯すプレイヤーが増えています!改善か、アク禁してください!!】というような内容が複数来ていた。

 行動を緩和するということは、今までできなかった事ができるようになる。ゲーム自体のルールが緩くなっていることを意味していた。

 暮羽の言うほんとうの自由とは、規制が全く無くなると言うことだ。

 僕がどれだけ管理していたとしても、不正を働こうとすると輩は沢山いる。少し前には不正だけを行うグループもいたが、早急に団体ごとアク禁にさせてもらった。

 なのに!!


「くそっ!!あのあまっ!この世界の秩序は僕で、支配権も何もかも僕の物なのにっ!!」


 僕が苦労して作り上げたプログラムも、存在だけを残して仕事をしない。

 比喩ではなく本当に頭を抱えて悩む僕を尻目に、そんなぼくを嘲笑うかの様にゲームの中では非道な行いをするプレイヤーで溢れかえっている。

 それこそ、現実では許される事の無いような行為を行うプレイヤーも。

 勿論、警官の役職や、その様な真似事をするプレイヤーもいたが、彼等ももう手に負えないと判断したのか完全に見てみぬふりだ。

 まさにお手上げ状態。


「何のためのシステムだ!!プログラム自体に異変はない!何者かに書き換えられた形跡もない!本当に停止しているだけっ!」

 

 これがほんとうの自由だとでも言うのかっ?!


「何々ぃ~?どうかしたのかい、茄畝なすせぇ。相当悩んでるみたいだけどぉ、どうかしたのぉ?」


 隣の席で大胆にもスマフォを弄りながら意地の悪い声音で話しかけてくるこいつは不得手ふえて 雨期うきだ。いつから友人だったのかもわからないほど古い付き合いのこいつは常に僕の側にいた。

 自分の体格よりも一回り以上大きな制服に身を包み、だらしなく垂れた袖越しに僕の頬をつつく……と言うか、突き刺す。いつもの事ながら若干腹が立つが、それを気にする様な年はもう等の昔に過ぎている。


 唯一僕のゲームのことを知っている雨期に相談するか迷っていると、どうやら事を知っていたようで、弄っていたそれを僕に向ける。画面に写し出されていたのは、僕のいつも巡回している所とはまた違う掲示板。

 ずいぶんとコアな層のファンで埋め尽くされたそこはまさに阿鼻叫喚。怒りや焦りの絵文字や顔文字、AAアスキーアート、製作者の僕に対する激しい罵詈雑言、今まで見たこと無いほど荒れていた。


「いきなりシステムが消えるなんてぇ、一体どうしたんだよぅ」

「説明しても訳のわからない未知の人型生物に消されたんだよ」

「なにそれ、新手のギャグか何かぁ?超ウケるんだけどぉ」


 ケラケラと笑いながら画面をスクロールしてくる。ログを流せば流すほど酷くなっていく書き込みに、段々と僕のやる気が萎えていく。

 萎えていくが、長い時間かけて作ったプログラムを見捨てるなんて無情な選択肢は無い。

 それをする時は、完全に僕の創作心が消えた時だ。


 教師の許可無く勝手に持ち込んだノートパソコンで、コピーしたプログラムをもう一度洗い直す。それだけではなく、もうワンランク上のシステムを作成するつもりだ。


「ねぇねぇ茄畝ぇ、その作業って今日で何回目ぇ?って言うか、何日目ぇ?」

「は?そんなの、どうでもいいだろ?」

「良いから答えろって」

「…………珍しく食い付くんだな。さっきまでの間延びした語尾はどこに捨ててきたんだ?……記憶しているだけで、既に20回は越えているよ。……一日でな。だから、その二日分……ざっと40回弱じゃないか?」


 答えるつもりなんて一ミリも無かったが、突然真面目になった奴に動揺して答えてしまった。お陰でちっとも進まない。

 ニヤニヤしながらこちらの顔を覗き込んでくる雨期に、そろそろ集中力の限界を感じ、シャットダウンすると、雨期は目の前でイスから降りて床に膝をつき、覗き込んでいた顔を机に乗せていた。一番始めに見たあの顔よりもさらに歪めた意地の悪いと言うより、悪どい顔で。


「それって、もう無駄なんじゃなぃ?」

「なっ!真面目な話し方になったと思ったらなんだよ!僕に諦めろって言うのかよ?!」

「雨期の質問1つで集中力切らした人が何を言うのやら……。まぁ、落ち着きなよぉ、茄畝。何も雨期は諦めろなんて言ってる訳じゃない。違う方法を考えればいいんじゃない?って、遠回しに言っているだけなんだよぉ?」

「遠回しに言う時点でバカにしてる感がムンムン伝わって来るな。てか、お前も男なんだからいい加減その間延びした語尾はやめろ。みっともない」


  話し終わると猫のようにすり寄ってくる雨期に、気持ち悪さと暑苦しさを感じながらもこいつの言うことも一理あると思った。こんな奴の意見を取り入れるだなんて、余りにも、いや本当に不覚で情けないが背に腹は変えられない。

 今度はスマフォを立ち上げると、僕のゲーム(もちろん今問題になっているやつ)を開き、ログインする。

 アバターの僕を使おうと考えたのだ。


「ふぅん?自分のアバターを、使うのかぁ」

「なんだよ、意味深な事を言うなよ」

「んんんん?茄畝にはこれが意味深に聞こえるのかなぁ?まぁあ、茄畝がそう思うならそうなんじゃなぁい?」


 ニヤニヤクスクスしながら僕から離れる。


「思うように動けるかなぁ?今の君は余りにも存在が濃すぎるから、どうなっても知らないよぉ?」

「なんだよ、存在が濃すぎるって」

「何だもかんだも、すったももんだも無いよぉ?そのまま、言葉の通り、茄畝の存在が濃いんだってぇ。それはもう、胸焼けして吐いちゃう程にっ!」


 キャピっ!

 と、効果音が出そうなほどあからさまな笑顔を向ける雨期。

 こいつの頭の中は僕でもわからない。

 ただ一つ、こいつは嘘は付かない。

 言葉遊びを、巧みに使って会話をしてくるこいつは、その話の何処かに必ずヒントや解決策が隠れている。


「雨期は何時でも茄畝の相談にのるからねぇ。これは茄畝のためでもあって、雨期のためでもあるんだからねぇ」







だから、速く解決するといいなぁ…………♥

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