悪魔のルビとお姫さまのリル
ルビは退屈していた。この国の人間は皆
、幸せでルビはそれを気に食わなかった。
ルビは悪魔である。悪魔の仕事は大きく分けて二つある。一つは人間を不幸にすること、もう一つは罪深い人間を地獄に落としいれること。
ルビの仕事は人間を不幸にすることであった。だから、この国でやりがいがあると思っていたが、1人不幸にしても皆、不幸になるわけではないから1人1人不幸にしていくのがめんどくさかった。なのでルビは一気に皆、不幸にする方法を探していた。だか、その方法も見つからず、やがてめんどくさくなり暇を持て余していた。
ルビは黒い翼を広げ、空から市場にいる人たちを見ていた。
ルビの姿は誰にも見えていないから怪しむ者なんて居なかった。
(なんで、あいつら笑顔なの?意味わかんない)
ルビは、どんどん機嫌が悪くなっていく。人間たちは笑顔で話してて何が楽しいのか、ルビにはわからなかった。
ルビは果物屋さんの傍に一旦に降りた。そして果物屋さんにいる、二人のおばあさんの話に耳を傾けた。
「やっぱり、姫様がお生まれになってから国の雰囲気も良くなったわよね!」
「ええ!リル様がきっと幸せを運んで下さったんだわ!国民からの信頼も熱いですし!」
「国民にも平等に優しいものね!まるで天使みたいだわ!」
ルビはまた黒い翼を広げ、空に飛び立った。ルビは二人のおばあさんの話を聞いて、ある作戦を思いついていた。
───お姫様が不幸になったら、皆不幸になる
そう思った、ルビはこの国で一番大きな城に向かった。
お城には大きな塀があるがルビは黒い翼で軽々飛んでいく。
(二階の窓が開いてる…そこから入ろう)
ルビは二階の窓から入り、お姫様を探すことに決めた。
(よっ……と、着地成功!)
ルビは着地を成功させた事を心の中で一人喜んでいた。
お姫様を探そうとしたときだった──。
「あら、かわいいお客様ね。」
凛とした声がルビの耳に届き、肩をビクッとさせた。
ルビの目の前にはルビが探していたお姫様がイスに座っていた。
「う、うちが見えるの!?」
ルビはびっくりして声を上げた。
お姫様はゆっくり口を開いた。
「えぇ、見えるわ、私だけにね…。だって迎えに来たんでしょ?」
「……は?」
ルビは急にお姫様が何を言っているのかわからなかった。
「いや……、迎えになんかじゃないんだけど」
「違うの……?私、死なないの?」
このお姫様、頭おかしいの?とルビは思った。
「私にとうとう迎えに来たのかと思ったわ。ねぇ、あなた名前は?お友達になりましょう?」
突然の展開でルビの頭は追いつかなかった。
「私、お友達がいないの。小さい頃からお城に住んでいるから、だから悪魔でもいいから私、お友達が欲しいの」
なんで悪魔だってわかったの……!ルビの頭は混乱していて返答すらできる余裕がなかった。
「私、小さい頃から信じていたの」
「……なにを?」
「神様がいること。神様がいるなら、天使や悪魔も居ると思うの。そしたら今日、本当に悪魔が現れた。悪魔は悪いイメージがあるけど、あなたは悪い悪魔ではないわ。」
悪魔にいい奴なんていない。だって、人を不幸にするのが悪魔の仕事だから。でも、友達になって、その友達が裏切ったら?……お姫様は不幸になる!!!こんなバットエンドなんていいじゃないか!!!
「うちはルビ!」
「ルビ……いいお名前ね。私はリルよ。気軽にリルって呼んでね、ルビ」
二人は握手した。周りから見たらお姫様が一人で変なことをしてるようにしか見えないがお姫様は初めての友達に喜んでいた。
そしてルビも友達ごっこを始めた。
その日からリルの目の前にルビが現れるとリルは笑顔になり「ルビ!」と嬉しそうに話しかけてくる。ルビも笑顔で対応した。
「ねぇ、ルビあなたは本を読む?」
「読まない。」
「悪魔は本を読まないの?」
「読む人と読まない人がいるよ。人間と同じで好き嫌いもあるし趣味や特技だってあるよ」
リルは目を輝かせながらルビの顔を見た。
「すごいわ!悪魔にも人間らしいところがあるのね!」
リルの顔を見てルビは吹き出してしまった。
「悪魔だって、人間らしいところもあるよ。だってこうして話してるじゃない」
「それもそうね」とリルはある一冊の本を持ってきた。
とても分厚い本だ。
「ルビ、この本にはね、悪魔の事が載っているの。本当の事なのか教えてくれる?」
悪魔には教えていいところまではあるが、それ以上教えたら何が起こるかわからない。
「教えれるとこまでならね」
パァとリルが笑顔になった。
そして、リルはペラペラとページをめくり始めた。
「このページ!悪魔って人間と年の撮り方が違うの?」
「違うよ、うちは見た目リルより小さく見えるけど本当は100歳過ぎなんだよ」
「すごいわ!本当にそんなことがあるのね!」
神や悪魔や天使の存在は信じていたのに、こういうことは信じてなかったのか。とルビは思ったが口に出さなかった。
「じゃあ、これは?人間が悪魔の羽を引きちぎったら地獄に落ちない話!」
ルビはそんな話聞いたことがなかった。
「これは知らない。聞いたことないもの」
「じゃあ、これは嘘ね!」
その後、リルとたくさんお話したが人間が悪魔の羽を引きちぎったら地獄に落ない話しが気になっていた。
夜、久しぶりに悪魔界に帰った。仕事を終わらせてから帰ろうと思っていたが昼間のことが気になり、ルビは本当とか確かめようとしていた。
「ルビ、どうした?仕事がまだ終わってないだろ」
ルビの父様が姿を現した。ルビの父様は悪魔界でも有名な成績を残している。
「父様、聞きたいことがあります。人間が悪魔の羽を引きちぎったら地獄に落ちないとは本当なのですか?」
ルビが言い終わった瞬間、父様の顔が険しい表情になった。
「ルビ、その話はしてはいけない。昔その出来事があって以来、その話しをすることは禁止になった。今のは全て忘れて、仕事に戻りなさい。」
ルビは父様に逆らえない、仕方なく「はい」と返事をして人間界に戻った。
人間界と悪魔界は時間の感覚も違うので人間界は朝になっていた。
朝早く市場も賑わいを見せていた。
悪魔は寝なくてもいい生き物だ。寝るのを好んで寝る人もいるがルビは寝ずにリルに会いに行くことにした。
せっかくだし、リルの寝顔でも見ようと思っていた。
屋敷の二階の窓、つまりリルの部屋の窓が開いていた。
いつものようにそこからルビはリルの部屋に入っていく。リルは小さい寝息を立てながらベットに寝ていた。でもその頬には涙がつたっていた。
(人間は夢を見ながら泣いてる時があるからな、うちら悪魔にはわかんない)
悪魔なんか夢など見ない、泣くことなど、ほとんどない。人間という生き物はめんどくさい。
リルの目がゆっくり開いた。
「……あら?ルビ、今日は早いわね」
小さな声でリルは呟いた。
「今日は、朝早く用事があったからね。」
「そう」
リルはゆっくり起き上がった。
「ねぇ、ルビ…私にはいつお迎えが来るのかしら?」
リルはゆっくり語り始めた。
「私、きっと天国になんていけないわ。私の犯した過ちは決して許される事ではないもの」
「どうして、そんなこというの?」
ルビが問いかけるとリルは苦笑いでこう言った。
「私、裏でいらない人を捨てていってるのよ。この国に必要ない人達を次々と。」
───私、罪のない人達を命を捨てるの。
「ある人は悪いことをしてないのに家がないから。ある人は悪いことをし ていないのに王から嫌われてるか。またある人は悪いことをしていないのに知ってはいけないことを知ってしまったから」
リルは悪いことをしていない人の命を捨ててきた……。
「わかったわ、リル。あなたがうちを見えてた理由が」
「え?」
なんだ、だからリルは悪魔が見えていたのか。
「リル、あなたの方が“悪魔”だからよ」
リルはびっくりした顔でこちらを見た。
けど、視線をすぐに下に落とした。
「そうね…。だから罰が当たったのね。だって、私もうすぐ死ぬもの…。」
「え?」
リルがもうすぐ死ぬ……?
「数ヶ月前に私、一度病で倒れたの。医者に手遅れだと言われたわ。でも私は運命だと思って受け入れたわ。裏で命を捨てるのも運命だと思い、ずっとやってきたわ。本当はやりたくなかったけどね。」
黙ってリルの話を聞いていた。
リルはきっとこのままでは地獄に落ちてしまう。
けど、リルは本当に地獄に落ちていいのか…?
運命だと思いやっていたけど、本当は嫌で嫌で仕方なかったはず。
今も目に涙が溜まっている。
「ねぇ、ルビ私が死ぬまで一緒にいてくれる?朝も夜もずっと、だってあなたは私の最初で最後のお友達だもの。」
───最期くらい、夢を見させてやろう。
「うん、いいよ。傍にいてあげる」
その日からリルの部屋に泊り始めた。
時々、リルは涙を流しながら寝ていた。
ルビはその涙を見る度、胸がズキズキした。
そして、リルはとうとうベットから出ることが許されなくなった。
国は、どんどん不幸に溢れていった。
姫様が死んだら、この国はどうなるのか。と国民たちは心配していた。
これがうちの望んでいたことだ。皆、不幸にすること。
でも、仕事をもう少しで達成出来るというのに嬉しさが出てこない。喜びが出てこない。
なんで?なんで?
なんで?なんでよ!!!なんで、涙が出るの!?悪魔なんか涙なんか流さないのに……!
───バサァ。
翼の音が聞こえた。この翼の音は──。
「父様……」
「なんだ、ルビ泣いてるのか?」
「い、いえ!泣いてなどいません…!」
すぐに袖で目をこすった。
「ルビ、この者を知っているか?」
寝息を立てて寝ているリルを指した。
「はい、この国の姫君リルです」
「なら、話は早いな」
まさか……。
私は嫌な予感しかしなかった。
「ルビ、この者の命を引き取り地獄へ送る」
嫌な予感が的中した。
「この者のした罪は大きい。ルビ手伝え。」
「……はい、父様」
これで……これでいいの?本当にこれでいいの?
リルはゆっくり目を開いた。
「ルビ……」
リルはうちを見た。
「リル……」
「私にとうとう迎えが来たのね……。でも怖いわね。死ぬこともそうだけど……地獄へ行くのは……。きっと、そこの悪魔が連れていくのね。」
リルは涙を流していた。リルは父様の事を見えてる。父様がリルの額に手をかざし始め、呪文を唱え始めた。
ダメ、ダメ、ダメ!!!!!!!!!
私はリルの手を取り、黒い翼を握らせた。
父様は呪文を唱えてるから、こちらに気づかない。
(リル……さようなら。)
私は黒い翼を握らせているリルの手にギュッと私が手を握り、力を入れた。
───ブチィ!!!!!!!
黒い光が私を包んだ。
最期に私が見たのは、リルの泣いている姿と父様がびっくりした顔で私を見ていたこと。
さようなら、さようなら、さようなら──…。
悪魔が消えた。私をお迎えに来ていた悪魔が。ルビも消えていた。
悪魔の代わりに迎えに来たのは天使だった。
真っ白な天使。
(ああ、私天国に行くのね。)
天使が私の額に手をかざし、呪文を唱え始めた。
悪魔の声より優しい優しい綺麗な声で。
そして、眠りについた。起きたらルビに会えるかしら?
ぽかぽかと暖かい日差しに綺麗なお花畑が広がっていた。
(私、天国に来たのね)
ルビを探さなきゃね。あの子がいないと意味ないもの。
あそこにいる天使にルビの居場所を聞きましょう。
「あの、天使さん……ルビは?」
「ルビ……?」
「はい、黒い髪の子で悪魔の……」
「悪魔の話はここで禁じられてるのよ、だからもう話してはならないわ。けど、あなた悪魔のおかけで天国に来たから特別に教えてあげるわ。」
天使は優しく微笑んだ。
「あの子は堕天使だったのよ。」
堕天使……。
「そのため、悪魔になった。けどね、あなたを助けたから、もう悪魔ではないの。普通そんなことしたら、罰を受けるのだけれど……」
天使は私の後ろを指さした。
「ルビ……私の娘は正しい選択をしたから、もう一度天使に戻れたのよ。」
私は真っ白な天使のルビに抱きついた。
「ルビ……!ルビ……!」
私は涙を流した。
「リル……うちが悪魔になっていた理由がわかったよ。」
ルビは元々、あの悪魔とあの天使の子供らしい。小さい頃天使だったが、周りの天使がルビをいじめていて、怒ったルビは怪我を負わせたらしい。その為、悪魔となったが今回の事件があり、天使の方が向いてるということで、また天使になったらしい。神様達の会議で決めたらしいが神様達も少し軽いんだとリルは思った。
その後、リルとルビは天国で仲良く暮らしました。
リルが生まれ変わるその日まで仲良く──…。
end