異形VS異形
「シェルター前に着いた」
赤髪の少女は、落ちていった少年を一瞥してインカムに話しかけた。
すると、インカムから声が漏れだす。
「OK。じゃあ、デバイスを認証機に接続して」
少女、言われた通りに持っているデバイスをドアの認証機に繋ぐ。
「接続を確認。システムハックを開始。解錠までおよそ5分かかるわ」
「悪いけど、そんな時間ないわ」
デバイスに大量に表示された数字の羅列を横目に少女は、頭上へと視線を向ける。
「来たわね。本命が」
「大丈夫?咲哉」
「わたしを誰だと思ってるの?」
咲哉と呼ばれた赤髪の少女は、手のひらに炎を出現させて不敵に微笑む。
***
「NEXTを確認。これより交戦を開始する」
咲哉の頭上、そこにはある少女が宙に浮いていた。
銀色に染まった髪を肩までの長さで切り落とし、瞳は赤い。
そして、その体には黒い機械の鎧が着せられていた。
彼女の名は、空中浮遊都市警備部隊NO36ルーナ。
この都市を警備するために生まれた、いや、造られた。
戦いに特化した体に改良されたクローンだ。
「人形が邪魔をするな」
「排除」
咲哉は右腕から紅蓮の炎を呼び出し、ルーナは両手に一丁ずつ計二丁のフルオートのアラサルトライフルを乱射する。
放たれた無数の弾丸が咲哉の体を食いちぎろうと接近するが、その全てが炎によって迎撃される。
炎にさらされた銃弾は、一瞬で溶解し塵と化す。
「目標を発火能力型と断定。現在の装備では撃滅が困難と判断。よって、装備をA型武装からB型武装に切り替える」
ルーナは、機械的に言うと両手に持っているアラサルトライフルを折り畳むように機械の鎧の中に格納する。
そして、今度は鎧の背中の部分から黒い棒状の物を出す。
すると、その柄から緑色に発光する光の刃が現れる。
プラズマエネルギーによって構成された刀だ。
「言っとくけど、わたし近接戦も得意よ?」
そう言って両手を炎で包む。
「ハッ!」
「シッ!」
灼熱の拳撃とエネルギー刃が空中でぶつかり合い火花を散らす。
何度も何度もぶつかり合う。
人知を越えた異形同士の戦いは、エルドギアの浮遊建築物をなぎ倒しながら続いた。
***
「嘘だろぉ!」
咲哉の攻撃によって空中に振り落とされたケイは、地面に向かって落下しながら自分の人生を振り返った。
「ハハッ、短い人生だったな……」
自虐的に微笑む。
だが、どうやら俺の人生はまだ終わらないようだった。
俺が使っているホバーグライダーが落下中の俺を受け止めたのだ。
「お、お前……」
愛用してきたホバーグライダーに命を救われ、軽く泣きそうになる。
そして、ホバーグライダーを手にしたらこっちのものだ。
そのままホバーグライダーにまたがり、一気に加速させようと操作ディスプレイに手を伸ばす。
だが……。
「ハッ!」
突然上空から一人の少女がホバーグライダーに落ちてきたのだ。
そして、その少女は。
「ネクスト!?」
さっき殺されかけた少女、咲哉だった。
更新です。
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