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覚醒  前編

-放課後-


2人は町外れの廃工場の前に立っている。

学校が終わると陽一は上機嫌で教室に入ってきた愛梨に手を掴まれ、引きずられるような形で自転車小屋まで連行された。

自転車小屋に連行されていく最中何人もの生徒から何事か注目を集めた。

こっちを見ないでくれ。

顔を逸らし、心の中でそう思った。

自転車にまたがった愛梨は「行くわよ」と一言いって、猪のような勢いで自転車をこぎ学校を出て行く。

流石に1人で行かせるわけにもいかず、陽一は仕方が無く愛梨を見失ってしまわないように急いで自転車に乗り追いかけた。

そして現在にいたる。



「早速中に入ってみるわよ」

いきなりだった。

「待て待て、敷地の入り口に入るなって言う立て札とこの鍵が目に入らないのか?」

目の前の入り口は2メートル半くらいの金属で出来た格子状の重そうな扉が閉まっていて、中央には錆び付いた鎖が3カ所ほど巻き付けられていた。

おまけに南京錠までつけられている。

流石にこれを壊して中に入ることはまず無理だろう。

というか壊したら入った事がばれてしまう。

工場は長方形で東京ドームに近いくらいの大きさがあり、それを囲むようにして格子状の扉と同じくらいの高さのフェンスが立っていて、上の部分は外側に傾いているためよじ登って入るのも難しい。

「これは流石に無理だって」

愛梨はそんな言葉を聞ずに扉に巻きつけられた鎖を何とか外れないかとガチャガチャ音を立てながら外そうとする。

しかし、鎖は錆と適当に巻きつけられたせいか、全く外れる気配がない。

外すのを諦めた愛梨は塀に沿って、時計回りに歩き始めた。

陽一も愛梨が度が過ぎた事をした時にすぐ止めれるように後ろについて歩く。



しばらく歩くと何かを見つけたらしく急に愛梨が走りだした。

「陽一、ここから中に入れるわ!」

フェンスを指さし、大きな声で呼ばれた。

早く来いと言いたげな顔をした愛梨に歩み寄り、中に入れると言いながら指さされた場所に目を移す。

そこには大人の男性1人がギリギリ通れるくらいの穴が空いていた。

「今度こそ中に入るわよ!」

腰を落として、フェンスをくぐろうとする愛梨の腕を捕まえる。

「本当にいくのか?」

「当たり前でしょ!」

そう答えると愛梨はフェンスをくぐって工場の敷地内に入ってゆく。

陽一は小さなため息をつき、後を追うようにフェンスをくぐった。

「こっからどうするんだ?」

「近くの建物から1つずつ調べていく」

「ですよね」

陽一は肩を落とす。

予想はしていたがもしかしたら適当に調べてすぐに帰れるかもしれないなどと一瞬でも考えたのが悪かった。

工場の探索を始める前からこれでは最後まで精神がもちそうにない。

「とりあえずここの建物から見ていくわ」

そう言ってドアノブに手を掛け回す。

しかし、ドアは開かなかった。

どうやらイタズラをされないように鍵をかけられているようだ。

「なによこれ!開かないじゃない!」

愛梨は何度もドアノブを回し、前後にドアをガチャガチャと大きな音を立てて開けようとするがビクともしない。

『これは思ったより早く変えれるんじゃないか?』陽一は心の中でそう思い、愛梨に悟られないように喜んだ。

「いくらそんなことをしても開かないと思うぞ。諦めて次の場所に行こうぜ」

愛梨は仕方なく次の建物のドアまで移動する。

同じようにしてドアを開けようとするがやはり鍵がかかっていた。

愛梨が不機嫌になり始めたのが背中から伝わってくる。

無言になった愛梨は乱暴にドアが開くか確認して開かないとわかったら次の建物に移っていった。

不用意に声をかけるとこちらにとばっちりが来そうだったので声をかけず、ただ後ろからついて行く。

半分くらいの建物を見終わったが開いた扉は1つとしてない。

それにより愛梨のイライラもどんどん大きくなっている。

いつ八つ当たりされるか分かったものではない。

だが、そんな心配は一瞬にして消えた。

ドアが開いたのだ。

「開いたわよ陽一!」

振り向いた愛梨は目を輝かせ、満面の笑みだった。

「お、おう。よかったな」

愛梨の勢いに気圧される。

ドアが開いて機嫌が良くなったのは良いが、早く変えれないのが確定して複雑な気分だった。

「早速行くわよ」

2人薄暗い建物の中に足を踏み入れていった。

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