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気がつくと霧の中にいた。

霧はかなり濃く、10メートル先くらいまでしか見ることが出来ない。

まるで雲の中にいるかのようだった。

足下に気をつけながら少しずつ歩き始める。

目的があるわけではない。

ただ歩かなければいけないような気がしたのだ。


しばらく歩いていると遠くから音が聞こえた。

目を閉じ、足を止めて耳を澄ませる。

悲鳴だ。

声の感じから、若い女性のようだ。

悲鳴のする方にゆっくりと足を進める。




霧が少し薄くなり、視界が広がる。

辺りを見回してみると何かの工場の敷地内だろうか。

倉庫のような建物がいくつも建てられている。

よく見ると塗装は剥げ、所々にヒビが入ったり欠けたりしている。

さっきの声はこの辺りからだったのだろうか?

一番近くの建物の扉を開け、中に入ってみる。

建物の中は薄暗くよく見えない。

だが奥の方から音が聞こえる。

何の音かまではわからない。

音の正体を確かめるため、足を進める。

建物の中はいくつもの大きな棚が並んでいるがかなり時間がたっているようで埃を被った棚が重なるように倒れており、通路を塞いでしまっている箇所がいくつかあった。

何度か迂回しながら建物の奥まで進む。




建物の奥にたどり着くと目を閉じて微動だにしない女性を抱き抱えた男性らしき人物は猫背で正座のような形で座っていた。

「あのぉ、すみません…」

恐る恐る声をかけてみるが反応がない。

「すみません!!」

今度はもう少し大きな声で呼び掛けてみる。

すると男は声に気づいたのか、ピクリと反応した。

男は女性を抱いたまま振り返る。

陽平は背筋が凍りつく感覚に襲われた。

その男の顔は自分に似ていたのだ。


目が赤く光っているように見え、歯は鋭く、犬歯のようだ。

無表情のまま、こちらを見ている。

何故だから分からないがこれ以上、声をかける事をためらった。

自分に似ているこの男になんと声をかけたらいいのか分からない。

抱き抱えた女性へと目をそらしてしまう。

そして、気づいてしまった

その女性が自分の姉である、ひかりに似ていることに。

薄暗さのせいで見間違えているのだと思いたかった。

しかし、男の足元にひかりがよく身に付けていたブレスレットが落ちている。

「姉ちゃん…」

小さく言葉を漏らす。

今にも消えてしまいそうな声だ。

自分に似ている男に視線を戻すと笑っていた。

今の声が聞こえていたのだろうか。

それを見た瞬間、陽平は怒りに身を任せ、走り出していた。

拳を握りしめ、勢いよく振り抜く。

だが、当たった感触がない。

ひかりを抱いたまま、煙のように消えてしまった。

辺りを見回し、消えた男を探す。

どこにも見当たらない。

「お前、うまそうだな」

突然だった。

背後から低い男の声が聞こえた。

振り返ろうとした瞬間、体を押さえつけられ首筋に噛みつかれる。

「ああぁぁぁ!!」

あまりの痛みに叫ぶ。

振り払うために暴れようとしてしてみるが凄い力で押さえられ、うまく動けない。

体の力が抜けていく。

そこで初めて気づいた。

これが捕食ではなく、吸血であることに。

だんだんと意識が遠退く。

そして、意識を失ってしまった。


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