帰宅
「ただいま」
日が落ち、街灯が点き始めた頃帰宅した。
「おかえり」
リビングのドアを開けるとひかりがソファーに座り雑誌を読んでいた。
テーブルの上には2人分の食器が用意されている。
どうやら、帰りを待っていたようだ。
「遅かったじゃない。夕御飯にするから部屋に道具置いてきな」
雑誌を閉じてソファーから立ち上がり、用意していた夕御飯温める。
陽一はリビングに入ってすぐにある階段を上り、カバンを自分の部屋に置きに行く。
自分の部屋に入り、ベッドにの上にカバンを投げて着替えるために川原で拾った宝石を制服のポケットから取り出す。
蛍光灯の光で透かしてみるが青い宝石の中心辺りだけがはっきりとは見えず、何かが閉じ込められているかは分からなかった。
宝石を机の上に置いてすぐに着替えてリビングへと戻る。
テーブルには夕食が並べられ、ひかりが待っていた。
陽一が席につくと2人はいただきますと言い、夕御飯を食べ始める。
「あんた今日遅かったけど、愛梨ちゃんとデートでもしてたの?」
「愛梨と一緒だったけどデートではない」
勘違いされても面倒なだけなのではっきりと否定する。
「じゃ、なにしてたの?」
「吸血鬼探し」
一言で片付ける。
これだけで理解するのは少し難しい気もするがひかりになら通じるだろうと判断した。
「なるほどね、またふりまわされてたのね」
クスクスと笑っている。
幼い頃から陽一は、興味を示したものしか見えなくなってしまう愛梨に毎日のように手を引かれ、引っ張り回されていた。
そのせいなのか、今でも愛梨は何かあるたびに陽一を連れ出す。
「あんた愛梨ちゃんには弱いよね。付き合っちゃえば?」
またクスクスと笑われた。
ぜんぜん面白くない。
なぜ今の流れで付き合えばなどと言えたのだろうか。
全く分からない。
「愛梨と付き合ったら毎日が大変なことになるから嫌だね」
そう答え、その後も下らない話をしながら夕食を終えた。