夢
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ここはどこだろうか?
何となく見覚えのある気がしたが思い出せない。
空は赤く、月が不気味に廃墟を照らす。
どこへ向かうわけでもなく、ただひたすらに廃墟を歩き続ける。
どこまで行っても人の姿はない。
あるのは崩れ落ちた瓦礫だけ。
「俺は何をしているのだろうか?」
ふと、疑問が口から漏れる。
人1人居ない廃墟でなんの目的もなく歩いているのだから不思議と思ってもおかしくない。
目的を忘れているだけかもしれないが、今の俺にはそんなことはわからない。
だが、足だけは止めずに動かす。
そうしなければいけない気がしたから。
しばらく歩くと何かが瓦礫の下で今にも消えてしまいそうな小さな光りを放っていることに気づく。
下手に動かせば崩れてしまいそうな瓦礫を少しずつ動かし、光の正体を確かめる。
瓦礫の下には手のひらに収まる棒状の青い宝石が落ちていた。
宝石の中には何かが閉じこめられているように見える。
手に取った瞬間、宝石は強い光りを放ち、辺りを包み込む。
「なっ、なんだ!?」
あまりの眩しさに目を閉じてしまう。
目を開けると先程までいた廃墟でわなく、真っ白な世界に変わっていた。
「ここはどこだ?俺はさっきまで廃墟にいたはずだが…」
自分の足が地面についてないことに気づく。
辺りを見渡すが何もない。
『貴方の願いはなんですか?』
頭の中に声が響いてくる。
瞬きした次の瞬間、目の前に女性が表れた。
髪は焦げ茶色で長く、左目だけが青い。
20代前半だろうか。
先程、頭に響いた質問が再び頭に響く。
「あんたは誰だ?なぜ、そんなことを聞く?」
質問には答えずに逆に質問をする。
『私の名前はアリス。願いを叶えるものです』
彼女は自己紹介をする。
相変わらず、口は開かずに頭の中に直接答える。
だが、その後は黙り混む。答える気がないよだ。
しばらく沈黙が続く。
沈黙を破ったのは女だった。
『貴方の願いはなんですか?』
再び同じ質問をしてくる。
しばらく考えた後、喋り出す。
「俺の願いは…」
口を開いた直後、目の焦点が合わなくなり始めた。
だんだん気が遠くなり、ついには意識を保てなくなり、その場で意識を失ってしまう。
携帯のアラームの音で目を覚ますと、見覚えのある天井が目に映る。
「…あれ?俺の部屋?」
あれは夢だったのだろうか。
アラームを止めるために手を伸ばそうとするが何かを握っていることに気づく。
手を開き見てみると、ペンダントに加工されてあるが、あの宝石が握られていた。
「これは廃墟で拾った宝石。やっぱりあれは現実だったのか?」
宝石を朝日の差し込む窓に向け透かしてみる。
やはり、何かが宝石の中に閉じ込められているようだ。
生き物のように見える。
宝石を見ていると突然携帯のアラームが再び鳴りだし、びっくりしてしまい手から宝石が落ちてしまった。
大きな音を部屋中に響かせているアラームを止める。
陽一は宝石を拾い、ポケットにしまいこむと朝食を取るために自分の部屋を出ていく。
キッチンには陽一より1時間ほど早く起きて、家事をしている姉のひかりがいた。
「姉ちゃんおはよう」
「おはよう、あんたの分の弁当、鞄の中に入れといたから」
ひかりは2人分の朝食を並べる。
陽一は自分の席に座る前に冷蔵庫冷えたお茶をとりだし、2人分のコップを用意した。
ひかりが椅子に座ると2人は手を合わせ、「いただきます」といい、朝食を取る。
テレビに目をやると不気味なニュースが流れていた。
『今日の午前6時頃、川原で変死体が発見されました。死因は多量の出血とのことですが遺体に大きな傷は見当たらず、首筋に噛まれた跡があっただけだそうです。回りにも血の跡はなく、犯行現場は別の場所と見られています。』
「なんか吸血鬼に血を抜かれたみたいな事件ね」
全くその通りだ。
だが、吸血鬼など存在するわけがない。
存在しているのであれば今頃大騒ぎになっているに違いないだろう。
「姉ちゃんも襲われないように気をつけたほうがいいよ」
冗談混じりにそういった。
「はいはい、あんたもね」
そんなバカらしい会話しながら朝食を終え、学校へと向かった。