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951.~960.

951.

ドブ浚いをしていたら、半液状の生物と思しきものを見つけた。ヘドロの中で弱っていたので、自宅の冷たい井戸水で洗ってやると、元気良くかつ気持ち悪く動き回り、体の一部を伸ばしてその辺にいた野良猫や鳥を喰い始めた。バケツに入れて持ち帰り、寝たきりの母の部屋に置いてきた。


952.

アニキの妹に手を出したバカをバラしたので、いつものように山奥の元溜め池に捨てに行く。一人では絶対に行くなと言われてたんだが、皆忙しいので俺がちゃちゃっとやることにしたのだ。死体を放り込んで車に戻ると、中にいた。座席の全部に今まで池に捨てた奴らが帰りたそうなツラで。


953.

顔を上げて歩いてはいけない。俯いて足元をよく確認し、傍を通るものの影のかたちをよく見なくてはいけない。今すれ違った人の影は、首が三つあった。横切る影は尻尾がある。追い抜く影は、色が赤い。でも真正面から見れば特徴のないふつうの顔。私の影はどんなふうに見えているのか。


954.

生まれた時から清水だけを与えられ、無事に十歳を迎えた子は村の風土病を抑えるための生贄だ。痩せ細りとても十歳時には見えない小さな子どもは、その日初めて清水以外のものを口にする。古木の赤い樹液。「美味しい」微笑みながら絶命した体を根元で焼けば、木の胞子が薬に変わる。


955.

小惑星が地球に衝突し、地上の生命は全て滅びると発表されてから、人間は殺し合いを始め、半年でほぼ全滅した。小惑星はぶつからなかった。かつてないほど暗い地球の上をどんな人類も見た事のない美しい天体ショーを、最後の一人となった人類が羆に喰われながら見上げていた。


956.

蜘蛛は益虫だから大事にしなさい。庭作りが趣味で素晴らしい庭を残した母がいつも言っていた。蜘蛛以外にもいろんな生き物が庭に住むことで、手入れを助けてくれる。接近禁止命令を当然のように無視して庭に入りこんだ元交際相手が、藪の中に引き摺られていく。お礼は何を置こうかな。


957.

人間に卵を産みつける寄生蜂が出現した。しかも人間大の巨大な蜂で、人を攫って自らの唾液とビニール袋を何千枚と張り合わせ、銃弾も通さないほど堅固な巣に集めて幼虫に喰わせる。逃れる方法は容易い。麻薬で心身共にボロボロになった人間には目もくれないのだ。


958.

背に白い翼を生やした子どもが見つかった。著名な詩人の豪邸の地下室で。詩人の子どもが赤子の頃に行方不明になっていたことから関係があるかと思われたが血縁はなかった。詩人はいくら詩を作っても帰らないんだと泣き伏した。程なく子どもは病院から消え、詩人は屋上から飛び降りた。


959.

古い映画で空飛ぶ殺人魚と戦うやつがあった。続編もあって、たぶん全部見た。海中だけじゃなく空を飛んで陸でも襲ってくるのが怖かった。最強じゃないかと。まさか本当にそんな魚が現れて耳を喰われるとは思わなかったし、一週間ぐらいで鵜とかに食べ尽くされるとも思っていなかった。


960.

母が遺したクマのぬいぐるみは、母以上に過保護だ。その柔らかくてふくよかな体を使って、父を殺してくれた。母や姉を関節ごとに切り分けて食べ、私に食べさせ、ついに私を食べようとしたから。ゆっくり振り返ったぬいぐるみが、柔らかくてふくよかな体を押し付けて私の鼻と口を塞ぐ。

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