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821.~830.

821.

友人から大きな石を貰った。両手で持って少し重いぐらいで、青のグラデーションになっている、割と綺麗な石だ。幸運を呼ぶとか。「漬物石に良いんじゃないか?まあお前に漬物なんか無理か」ビール片手に笑う夫の頭に叩きつける。頭と石が両方割れて、中から可愛い男の子が出てきた。


822.

鳩が嫌いと彼女は言う。幼い頃、猫の死体をつついて食べていたからだそうだ。烏じゃなくて、鳩?うん、真っ白な鳩が子猫の死体を引き裂いてた。彼女の見間違いだ。それは白い鳩じゃない。目の前で轢死した子どもの死体に群がるのは白い翼の天使。体の中のきれいな魂を探している。


823.

最近よく星が落っこちてきて、困っている。地球上の被害は甚大だ。星は大気圏で割と燃えて、空に見えていたぐらいの大きさまで小さくなっているのだが、物凄く眩しいのだ。その上一昨日落ちてきた彦星を追って織姫が降ってきて、光速で恋人を探しまわり、建造物を破壊し続けている。


824.

どうして卵を割ったのか?あのうつくしい卵。卵が見ている夢を、私も見たからだ。いや、私と同じ夢を見ていたから、割ったのだ。見た目は確かにうつくしい。貴方がたが私の容姿を讃えるのと、同じようにうつくしい。だけどあの卵が孵化したら。新たな卵が見つかった?更にうつくしい?


825.

殺されてバラバラにされて海に捨てられた私を、集めて縫い合わせてイロイロやって甦らせたのは、海底にいた邪神でした。人類滅ぼすとかじゃなく、ただ住んでいるんだとか。「やっぱり陸へ帰りたい?」なんか胸が痛む。この手の見た目、嫌いだったんだけど…改造されたせいなのかなあ。


826.

朝起きたら、瞼が縫い合わされていた。悲鳴に気づいた家族に連れられ病院へ。「上下の睫毛を使って丁寧に縫合されてますね」数時間かけ、睫毛を全て失って元に戻して貰った。翌朝、弟が叫ぶ。鼻で息ができないという。病院へ。「鼻毛が丁寧に編まれてますね」全身除毛することにした。


827.

黒い桜の花だけを食べさせて育てた羊は、墨より黒い血肉になる。同じ桜の葉を芋虫に与えれば、墨より黒いりんぷんを撒く。私は同じ桜のさくらんぼだけ食べて育った。暗闇の中でしか息ができず、闇に紛れて誰にも見えず。羊と蝶を育てて売り、桜のためのきれいな人の死体を貰う。


828.

厳重に封印された地下室を守るため、一族は己に生き写しの人形を創る。できるだけたくさん。でもいつか地下室から溢れる呪いに追いつかれ、生きた人間を狂わせ尽くす。人形は創り手と違って狂わない。正気と使命感も生き写し。狂った創り手を捻り殺し、狂っていない赤子を育て始める。


829.

不思議なカメラを手に入れた。未来が写るという。お気に入りのマグカップは粉々に砕けた写真が撮れた。二日後、猫が落として割った。老人ホームの祖母は、苦悶の表情で写り、一週間後に煮物が喉に詰まって死んだ。自分を撮った。廃墟と化した部屋で、今と変わらない姿の写真が撮れた。


830.

朝起きるとトンボの翅に似た虹色に光る透明なものが睫毛の代わりに生えてきた。まばたきすると微風が生じ、雪の結晶が舞う。吐息が凍ってはコトコト落ちる。雪雲から降りてくる人喰いの化け物たちが、まだ湯気立つ人間の臓物を差し出して頭を垂れた。逃げ惑う人々が私に石を投げる。

もはや今更だが、クトゥルフ縛りという言い方はかなり苦しくなってきた気がするな(笑)

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