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791.~780.

791.

くしゃみをしたら、鼻から蝸牛が飛び出した。慌てて拾って口に入れる。その拍子に耳からカイワレが零れてしまい、恥ずかしさのあまりしゃがみこんでしまった。「これ使ってください」真っ赤になりながら顔を上げると、目からうどんを垂らした良い男がアホロートルを差し出してくれた。


792.

見上げた空は、青と雲の白さのコントラストが美しかった。もくもくした雲は、夏の太陽をうけて陰影がつき、その立体感に私は空の広さを知ることができる。でも長く見ていると数え切れないほどある目玉が痛む。未来を見る御目が潰れてしまうからと、巫女が分厚い石の蓋を閉めていく。


793.

雨上がりの空に、きれいな金色の夕焼け。以前ならケータイのカメラですぐ撮って、SNSにでもアップするところなんだけど、今はとてもそんな気分にはなれない。なぜなら空一面に脂ぎった父のスマイルがキラめいてるから。行方不明になって六年。世界の空でスマイルしている。


794.

蝉時雨だ。入道雲に似た雲から、半死半生の蝉の豪雨が降り注ぐのだ。急いで傘を差すか、屋根の下に逃げないと、死にかけの蝉が体にぶつかったりしがみついてきたりする。何かの拍子に服の中に入ったらパニックだ。ほっとくとゾンビ化して血を吸い、空へ舞い上がって蝉時雨雲になる。


795.

「あの雲、絶対に乗れる」子どもの頃から君はそんなことを言っていた。幼い頃は本気で、長じてからは冗談半分…冗談、だったのか。雲には到底届かない五階建てのビルから飛んだきみをたくさんの人が見たがきみは落ちて来なかった。雲間から手を振るきみに何人が気付いているんだろう。


796.

久し振りにクトゥルフGOを起動した。噂どおり、ティンダロスの猟犬は全部逃走、グールとショゴスは共食いを重ねて勝手にレベルアップ、落とし仔系も最も強い一体のみが生き残っていて、起動に気づいた途端カメラのレンズからこっちへ出ようとしている。あ、電源切れないのも噂通り。


797.

体から植物が生えるようになった。世界中の名医や科学者が呼ばれたが、原因も治療法もわからないまま、私は光の差さない屋敷の奥に軟禁。感染防止とやはり見た目がおぞましいらしい。もうすぐ史上最強の嵐が来ると聞いた。植物の成長を支える小さな天井の穴が、もう少し広がると良い。


798.

郵便受けにウサギがバラバラにされて詰め込まれていた。可哀想に。出来る限り集めて、縫い合わせてあげたら生き返った。深々と頭を下げて、ツギハギウサギは窓から出て行った。翌日、ベランダにストーカーがバラバラにされて置いてあった。可哀想じゃないので、縫い合わせない。


799.

リンゴをまるごと齧ったら、異様な歯応えがあって、驚いて吐き出すと指が一本出てきた。武骨な男の指で、第二関節のところまで。食い千切った感じではなく、皮膚にきれいに覆われている。思いきり噛んだので歯型がついてしまったが、一晩で消えた。撫でると擽ったそうに震える。


800.

恋に恋するお年頃というのはよく聞く話。けれど私の友達は、失恋の痛みが病みつきになって、恋に落ちては片恋の相手と別の誰かを呪術でくっつけて、二人が幸せの絶頂に至るまで見守ってから呪殺するようになった。殺すのは略奪愛などで自分の恋が成就する可能性を確実に潰す為だとか。

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