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771.~780.

771.

粘着シートタイプのゴキブリ捕獲器からガサガサと音がする。入ったのか。殺虫剤を手にして近付く。その時隙間から、見えた。猫の手が。伸ばした爪を床に突き立てている。えっ?!思わずシートを覆う厚紙を開く。猫の腕を六本持つ、例の甲虫がいた。はい、殺しましたよ。キモいもん。


772.

飼っていたカタツムリがいない。大きなカタツムリで、のたりと水槽を這う姿や大きな目玉に癒されていた。一体どこに行ったのか。呼んで出てくる筈もない。また、あそこかな。押入れを開ける。思った通り、死んだ恋人の骨を食んでいた。異様に人間に似てきた目玉がこっちを見る。


773.

その町では、雨に小さなイカが混じっている。雨が降り始めると町民は桶やバケツを出してイカを集め、専用の池で育ててから市場に出す。海のない町から届くイカは安価だが美味で、特に梅雨の時期は巨大化する。町民はイカを決して食べない。町に降ったイカかもしれないから。


774.

人類は突然飛ぶ術を得た。耳がどんどん大きくなり、しかも自在に動かせるようになったのだ。だが耳の巨大化には条件があった。嘘を吐くこと。嘘吐きほど耳は大きくなり、そして高く早く自在に飛べるようになる。アクロバティックに飛び回る人々を、僅かな飛べない人達が見上げている。


775.

いつからだろう。コーヒーを覗き込むと、自分ではない顔が映り込むようになったのは。豆をミルで挽いても缶コーヒーをカップに注ぐだけでも必ず現れる。ミルクを混ぜれば消え失せる顔は、いつも無表情に私を睨む。角砂糖を五ついれると、にまあっと不気味に笑う。


776.

絶世の美少年が慌てた顔で駆け寄ってきて、私の腕にしがみついた。周りからは似てない姉弟か何かに見えるだろう。それは違う。このあまりにも美しい彼は人喰いだ。この美しさは人間を誘うための罠。そして私は彼のペットだ。人間だってブタを食べるし飼うでしょうというのが彼の論理。


777.

羽化できなかった蝉の幼虫を七七七匹集め、甘辛く煮て潰してペーストにしたものを造り替えたい体の部分に塗ると、七割の確率で理想の形に変異するのだという。かわりに別の場所が、最愛の人にとって最も忌まわしい形に変異するが、これは100パーセントの確率である。


778.

クトゥルフGOというゲームが世界一斉配信された。勿論減るのは充電ではなく正気度だ。あらぬ方にスマホを向けて発狂する者が続出。事故や事件も同時多発し、世界は阿鼻叫喚だが、真実の世界が見えるようになっただけの話。ちなみに今夜日付変更時にクトゥルフ討伐イベント配信予定!


779.

クトゥルフGO最初のイベントは、外洋に出る必要があったため盛り上がらなかった。だから召喚しようということになった。皆参加できるよう、陸地で討伐するためである。討伐するため召喚。なるほど?邪神だからってヒドくない?でもまあ、皆正気度がゼロなので余裕である。


780.

兄は蚊取り線香の焚きすぎにより、相討ちになって死んだ。父はゴキブリ駆除剤、妹は部屋用消臭スプレー。みな、壮絶な戦死だった。我が一族の、これは宿命なのだ。わたしも覚悟を決めた。白い煙が既に部屋中に蔓延している。わたしは更に部屋を白く埋めるべく魚を置いた七輪を扇ぐ。

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