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751.~760.

751.

孕み腹の鯨が座礁するのは惨劇の始まりだ。母鯨の子を救いたい願いと胎児の生存の欲求を、優しすぎる山神が叶えるからだ。腹を裂いて出てくるのはもはや鯨ではない。武器を手に浜へ走る。人のみならず山から獣もやってきて共に闘う。人と獣と、どちらでもないモノの血で海が染まる。


752.

仕事を休むと、いつも電車が事故で止まる。それも半日以上の大騒ぎだ。運がいいなあと思いながらベッドの中で寝返りを打つ。「違いますよ」隣に、顔のない黒い男が寝ていた。反射的に関節をとって抑え込む。「貴方が出勤すれば事故が防げるんですいだだだだ」警察呼ばないと。


753.

最初はもっと小さなものだったのだろう。気づいたのは偶然だ。ベランダに落ちていたバッタの頭。小鳥の食べ残しかと思っていたが、次の日に雀の頭が落ちていた。次第に大きくなり、土佐犬の首が転がっていた時には警察を呼んだ。今度はゴリラの首が落ちている。どうしたらいいのか。


754.

日本刀は守る為の武器なのだと祖父が言っていたのを、実父に犯されながら思い出す。首を曲げて安置されている家宝の刀を見つめるが守ってくれる様子はない。天井に目を向ける。大鋏と虫のあいの子のようなモノが問いかけてくる。「助けて欲しい?」私はいつも横に振る首を縦に振った。


755.

大気の酸素濃度が増し続け、人間を含めた殆どの生き物が生きられなくなった。シェルターを作り、人と動植物は中に逃げ込んだ。数万年経ち、シェルター内の生き物がとっくに死に絶えた頃、地上には生命が進化し高度な知性体が生まれた。酸素濃度が変り始めたことには気づいていない。


756.

恋人の死体を栄養にして育てた錦鯉を、妹から預かったデブ猫が食べてしまった。ごめんねと泣いて謝りながら彼女は恋人の死体で育てた猫の背骨をへし折る。「私も次は魚にしようかな」「水温水質の調節とかけっこう面倒だし、飛び出したりするよ」「いいよ。猫より食べ易そうだもの」


757.「14日はツイノベの日お題:半」

愛犬のペコが半分だけになって帰ってきた。右半身だけきれいに車に潰されるなんて、いらない奇跡を起こしただけじゃなく墓から這い出してきたのだ。その上喜んで抱きついた妹をバリバリ食べ始めたので金属バットで叩き潰した。全部潰れた父が帰ってきませんように。


758.

全人類の美的感覚が、ある日いきなり変ってしまった。今迄美しい可愛い良いとされていたものが、我慢ならない程おぞましくなったのだ。暫くの間、殺戮と破壊と自殺が嵐のように荒れ狂った。一先ず落ち着きを取り戻したが、雨が降ると窓が割られるか、己の頭を割る者が絶えない。


759.

暑さが見せる幻覚なのか、金魚鉢の中を鯨が泳いでいる。魚を食べるハクジラで、金魚を追い回して次々喰っている。どうしたらよいか分からず、勢いで手を突っ込んで鯨を掴み上げたが、暴れる鯨は蕎麦を茹でている鍋の中に落ちた。ばちゃばちゃ。しーん。…。………美味しかったです。


760.

篝火を焚いて夜の川へと船を出す。長い紐の先には最後の鵜が繋がれている。鵜飼の暗く澱んだ視線の先で鵜が黒い川面へ没する。黒い水を割って浮上した鵜の嘴には活きのいいアユのように煌めく生白い女の手首。鵜はぐびりと手首を呑む。鵜飼は紐を締めあげて、最後の一羽も縊り殺した。

うむ。もはやただの不気味なお話シリーズになってきているな!

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