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721.~730.

721.

僕はシリアルキラーだ。人間を嬲り殺しにするのが大好きだ。この生き方を続けたいのだが、片付けるのがとても面倒くさい。けれど、最近死体処理中に出会ったこの生き物は人喰いだった。でも一族の中では体が弱くて人間が殺せず困っていた。運命の出会いって、こういうことをいうのか。


722.

古い蛍光灯がでろりと溶けて、ちゃぶ台の上でもっちりとスライム的な塊になった。わけがわからないが、とりあえずその灯りを頼りにLEDに取り換える。そいつは、もちもちと部屋をうろつき、ペットのフェレットとも仲良くなって、今ももちもちと光ったり消えたりしている。


723.「毎月14日はツイノベの日お題:はじめまして」

かくれんぼを始めてどれくらい経っただろうか。あの子は小さいから、暫くすると遊んでいるのを忘れちゃう。でも必ず見つけてくれるからずっと待っている。「はじめまして、何してるの?」久し振りに見つけてくれた時はいつもこれ。ほんと忘れっぽいなあ、人間は。


724.

米とぎをしていたら、中にかたつむりが混じっていた。一匹かと思ったら、ザクザクと出てくる。研ぎ続けていたら、米がすべてかたつむりにすり変わってしまった。炊いて食べた。美味しかった。また米とぎをしているが、中に混じっていたのは、やどかりだった。ザクザク。


725.

桜が散りゆく中、真紅のハナミズキが満開になった。桜の返礼に贈られたという美しい花に心が和んだのは、ほんの一瞬。朝露に光っているかに見えた肉厚の花弁は、舌だ。唾液にまみれた赤い舌が、枝に生い茂っている。唐辛子スプレーを噴射してみた。面白いくらいボトボト落ちた。


726.

母さんの作る料理は大量破壊兵器―料理ベタな母を、私と父さんは愛をこめてそう呼んでいた。見た目も味も悪かったが一生懸命なことは分かっていたからだ。だが、コレはだめだ。愛していても食べられない。なにしろ料理の方がこっちを食べようと襲ってきて、あ、父さんが飲み込まれた。


727.

レジンにハマってしまった。今は亡き妹の趣味だった押し花を、キラキラ輝く宝石のように加工できることが嬉しかったのだ。押し花が尽きても、次々色々なアクセサリーを作っては飾り、ネットで販売も始めた。売り上げは案外良い。特に妖精や小妖怪を閉じ込めたものは、高値で売れる。


728.

裏山から聴こえる音に耳をそば立ててはいけない。物心つく前から何度も教えられてきたことだ。風や雨音が煩い時、人が多くて騒がしい時に限って、その音は意識に滑り込んでくる。思わず、なんだろうと意識を向けそうになる。だめだ、聞くな。祖母や弟のようにはなりたくない。


729.

ハムスターが自分で産んだ仔を食べてしまった。金魚も猫も小鳥も我が家で子どもを産んだ生き物は、我が子を喰う。飼育の専門書を読み、獣医にも対処法を学んだが、ダメだ。出産のため戻った娘が産気づいた。外は、雷雨で出られない。落雷の轟音の合間に産声が上がらぬよう祈っている。


730.

部屋が増殖し始めた。といっても人が普通に住む部屋というより、シューシューと何かが通り抜けているパイプやバルブ、打ちっ放しのコンクリの通路だ。ドアから先に突然増えていき、昨日は窓の先に長い通路ができていた。今、玄関のドアの前にいる。開けたら外に通じているのだろうか。

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