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611.~620.

611.

朝起きると顔がカボチャになっていた。今の時期巷に溢れ返るオレンジ色で顔を彫られたカボチャだ。妻子と犬、熱帯魚も空飛ぶ鳥の顔もカボチャになっていた。TVの中のニュースキャスターも、お隣さんも道行く人も皆カボチャ頭。ひとまず朝食にパンを食べたが、カボチャ味だった。


612.

ハロウィンは終わったというのに、街は未だ浮かれ気分のコスプレたちであふれ返っていた。まあ日曜だから仕方がないか。俺は日曜でも仕事だっていうのにいい気なもんだ。家を出ると、いつも犬の散歩をしている主婦がゾンビコスの集団に押し倒されていた。俺の方にもやってくる。


613.

えらいことになった。金曜日が不死になったのだ。永遠に土日が訪れることはない。日付は進むがずっと金曜。このままではみんな死んでしまう。長い苦難と多くの犠牲の後、人類は金曜を殺した。ついに訪れる土日。続く月火水木…そして金曜は来ない。殺されたからだ。土日ももう来ない。


614.

朝目覚めると、隣に三日月が寝ていた。硬いのかなと思っていたら、案外柔らかい。実家によくいたヤモリに冷たさと柔らかさが似ている気がする。寝ぼけながら撫でていると、キュだかキャだか甲高い音を立て、羽根布団を巻きつけたまま天井と上階三つ分を突き破って飛び去って行った。


615.

首から上のある鳩の死体が見つかった。顎が揃った猫や犬、鼠の死体も次々路上で発見された。死んだ獣や鳥、人は首を落とすか最低でも顎を砕かなければならない。そうしないと。夫だったモノがよろよろと歩いてくる。腕に噛み痕。緊急ボタンを押して窓のシャッターを閉めた。


616.

長く飼っていた鳥が死んだ。昨日まで元気だったのに、朝起きたら鳥籠の底で白目をむいて冷たくなっていた。死に顔が凄惨だったので、子どもに見せずに処分した。ひと月後の月命日、子どもの頭が鳥籠にすげ変わっていた。頭は白目をむいて棚の上、体についた鳥籠が元気に喋る。


617.

貝殻を探そうと砂浜を掘っていたら、星が出てきた。五つの角を持つ、記号とか絵の星だ。艶がありエナメルのような手触りで、明るい灰色、長く持っていられないほど熱い。だから石ではなさそうだ。異常な殺人事件を調べに来た人が欲しいと言うので譲ったが、次の日他殺体で見つかった。


618.

恋人が蒸発した。行方不明ではなく、本当に蒸発してしまったのだ。朝目を覚まし、ベッドから元気に出ていった恋人は雨戸を開けた。外から射し込んだのは眩しい、とても眩しい光。じゅっ、と熱したフライパンに水滴を垂らしたような音を立てて、恋人は蒸発した。光がベッドの私に迫る。


619.

筋肉痛だと思っていたら、違った。でも病気でも怪我でもない。これは、変異というのではなかろうか。腹筋に鼻とまぶたと思しき輪郭が浮かび、ヘソに歯が生え始めた。ヘソと鼻の穴を絹糸で縫いつけて塞ぐと、三日後の夜にまぶたのあたりに激痛が走ったが、朝には跡形もなかった。


620.

最近咳をするたびに変なものが耳から飛び出るようになった。初めて出たのは錆びた釘。次は百合の花びら。その次はなぜか光ったままの豆電球。生きたオタマジャクシ。指の第一関節から先(爪は煌びやかなネイルアート)。今朝は血塗れの腕時計が出てきたが、耳は無傷だ。

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