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601.~610.

601.

雲間からいくつもの光の帯が、通称天使のきざはしが地上に降り立っていた。思わず立ち止まり、きれいだなと見上げる。すると、薄ぼんやりとした人影が神秘的な光の中をゆっくりと登っていくのが見える。いくつもの人影がきざはしを上って行き、次々と飛び降り始めた。


602.

帰り道、ふと顔を上げると、夕焼けがとてもきれいだった。白い雲を強すぎないけれど鮮やかな赤が染めて、頭の上の方は濃い藍色が迫っている。疲れを一瞬忘れた。「きれいだなあ」思わずそう呟いてから、空が夕焼けで止まってしまって、半月が経つ。


603.

駅のホームから、操車場見える。停まっている電車は、最近見かけなくなった型。照明の消えた暗い車内に蠢く黒い影がある。点検なら灯りをつける筈だ。思わず身を乗り出すと警笛。叫び声。宙を舞う視界。千切れ飛んだ私の首が古い電車の窓を割って飛び込み、ぬめる手に受け止められた。


604.

UMAのミイラを手に入れた。妻は変な馬とのたまい、猫は食べようとする。貴重なものが分からない奴らだ。#twnovel 部屋に夫が引っ込むと妻と猫は嘆息する。「全く、こんな危険なものをありがたがって。寝入ったら処分しなきゃ」「バカね、人間て」「そこが可愛いのだけど」


605.

口笛が聞こえる。夜、口笛を吹くと蛇が出るなんて今の若者は知らないだろうか。私も特に信じてはいなかったのだけど、そのたびに星空を巨大な細長いモノが横切っていく。つい口笛を真似てみた。段々上手くなってきたころ、一枚だけしか翼を持たないソレが、回転しながらこっちへ来る。


606.

呪いの絵画を手に入れた。無名の画家の肖像画だ。この絵を描きあげた後、画家は行方知れずとなったという。そして絵を手に入れた者もまた、程なくして消えてしまうと。理由は分からないが持ち主がどこへ行ったのかは分かった。前の持ち主は私の友で、今絵の中からこちらを睨んでいる。


607.

葬儀の最中、母がゾンビとなって甦った。読経していた坊主の喉笛を食い千切り、古い映画のように指を曲げた手を突き出して私に迫る。慌てず取り出した鉈で一刀で頭を切り落とす。参列者の間に嘆息が満ちる。最近葬儀中に死者が甦り、読経中の坊主を殺す。彼が最後のひとりだった。


608.

白い生き物が見つかるとニュースになる。生まれる確率が低く、自然界では目立つため生存率が低いゆえに希少だから。人間はレア物が好きだ。けれど。突如現れた純白の蝶が舞い、振り撒かれる白い鱗粉に触れた全ての生物が白くなる。これからは色つきの生き物がニュースになるのだろう。


609.

月が眩しい。満月の夜というのは、本当に灯りが必要ないのだなと空を見上げて思う。窓の隙間から青い霧が室内満ち始める。霧の中に佇む痩せ細った犬に似た生き物がハイエナに似た声でわたしを誘う。青い霧に思考や視界は霞むが、月光だけは鋭く降ってくる。もう少し抗えそうだ。


610.

パイプオルガンに似た音色が空から響いてきた。見上げると、鯨が飛んでいた。この美しい音はあれの鳴き声のようだ。たくさんの鯨が現れ、音色が重なる。大気が震える。高層ビルの窓ガラスが割れ始める。きらきら輝くガラスの粉が降り注ぐ。何も見えなくなり、何も聴こえなくなった。

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