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581.~590.

581.

沿岸に怪獣が現れた。しかも何頭も。映画の宣伝ではない。軍の全勢力を投入し第一陣は退けたが、被害甚大。そこへ大陸からの侵略。一方的な虐殺で街は火の海になった。世界は憤りを見せたが海に怪獣がいるから助けは来ない。我々は呼ぶことにした。海からはすぐに答えが返ってきた。


582.

川岸に流れ着いたその生き物は、鯨に似ていた。けれど色は薄桃色の半透明で、目がない。唇は人に似ていて、鰭は三対、尾鰭は丸い。胎の中に鮮やかな青い蠢くもの。興味本位で鉈で裂いた。溢れ出たのは玉のような生き物で次々山へ転がっていく。以来、月夜に子どもが狂うようになった。


583.【毎月14日はツイノベの日お題「つくる」】

今日は記念すべき日、そう私だけの魔導書をつくるのだ。星辰とか魔力の波長とか色々調べた結果、ママが最適だと分かった。長が発表した瞬間逃げようとしたので、みんなで慌てて捕まえた。暴れないでよ。ママの魔導書だって、おばあちゃんの皮製じゃないの。


584.

トイレに入ったきり、お客様が出てこない。体調でも悪いのか。それとも何かよからぬことをしているのか。気になってチラチラ見ていると、徐にトイレに入った店長がドアをノックした。かちゃりと鍵が外れドアが開く。中には誰もいない。満足げに笑む店長。今日も店は繁盛している。


585.

肩になにかが当たって落ちた。咄嗟にピアスだと思って足元を見る。落ちていたのは、人生初のボーナスで買ったゴールドのピアスをつけた耳まるごと。血の気が引いて倒れそうになる。恐る恐る自分の耳元に手をやる。耳が、ある。目の前には私のピアス付きの耳まるごとが落ちている。


586.

体を丸めて眠る癖がある。胎児のように小さく丸まり、毛布に完全に包まる。この寝相は不安の現れらしい。変な夢なら毎夜見ている。最初は目覚ましの音かと思った。違う。およそ人が楽しめるとは思えない、めちゃくちゃなフルートの音色。分厚い何かに包まれて、狂った音楽を聴く夢を。


587.

おつむが弱いか、極度に鈍いと思い込んでいた。中途入社の新人を大人しいのを幸い、地味にいじめていた。やり過ぎたかなと思うこともあったがニコニコ笑っているから調子に乗ったのだ。「腹を割って話しましょう先輩」ニコニコしながら、鋭い歯を生やした腹の口をぱっかり開いている。


588.

久し振りの晴天の中を歩いていると、アカトンボの群れが飛び交い始めた。涼しくなると山から降りてくるんだっけ?秋なんだなと思わず微笑む。それにしてもたくさんいるな、アカトンボ。痛っ、顔にぶつかって、痛っ、痛い、ぶつかってるんじゃない、齧られてる。アカトンボじゃなくて、血で染まっ―


589.

咳が止まらないのでマスクを買った。症状が咳だけでは仕事は休めない。咳込みつつも仕事をこなしていると、上司や同僚たちが病院に行くことを薦めてくれた。これで安心して行けるというものだ。社を出ようとして咳をひとつ。「はい百度目」上司同僚後輩たちが咳に似た音と共に弾けた。


590.

薄い雲の合間にまばゆい月がそっと顔を覗かせた。昼間の雨で大気は澄み渡り、雲に月光が反射して中々に美しい。餅つきをしている兎もよく見える。本当の月の兎は肉食性のようだけど。血と臓物で赤の斑模様の兎が掲げる杵ならぬ鬼の金棒の如き巨大な鈍器が頭に向かって振り下ろされた。

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