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441.~450.

441.

今夜遅く、線路の修理があるようだ。暫く前工事があることを知らず、突然の騒音に怪獣か巨大ロボでも攻めてきたのかと本気で驚いたものだ。ゴトゴトと雨戸が揺れた。あれ?もう始まった?…違う、声だ。お母さんの声。こんな時間にどうしたの。お母さん、死んだはずだよね?


442.

ゲラゲラ誰かが笑ってる。眠気に耐えながら目を開けると、真っ赤な羊が床の上で笑い転げていた。羊の赤い毛皮からは一本の毛糸が伸びていて、その先では一輪車に乗ったヒトデが毛糸で何かを編んでいる。なんつう悪夢だ。毛布を被って寝た。翌朝、観葉植物が腐って赤く溶けていた。


443.

目が霞む。眼鏡を外して目の周りを揉んでみると、少し楽になった気がした。眼鏡をかけなおして顔を上げると、やっぱり目の前の友達の顔がねじれている。成人式のためにあつらえた煌びやかな衣装、ねじれていく友達の顔。朝掘りだしたタイムカプセルから吹き出た碧の煙のせいだろうか。


444.

死ぬことに決めて、昔住んでいた街へ行くことにした。大きな川があり、死体が不思議なぐらい上がらないと言われていた。なんだかステキなことのように思えたのだ。一番高さのある橋から飛び降りて、後悔した。死体が見つからない理由が、鋭い歯をガチガチ鳴らして水の下で待っていた。


445.(14日はツイノベの日お題「ペン」)

指先から血が滲み、腕は痺れて、激痛は肩や首筋から頭にまで及んでいる。だがすっかり感覚が失われた指は、しっかりと古い万年筆を掴んで一心不乱に文字を書き綴る。フリマで買ったそれは何か曰くのあるモノなのか。綴られる文章は私の好きな怪奇小説に似ている。


446.

カップ麺を食べようと熱湯を注いだ。猫舌なので3分経ってもすぐには食べられず、箸で持ち上げてふーふーを繰り返す。すると変なものが混じっているのを見つけてしまった。烏賊か蛸っぽいけど、大きなヒレ、いや羽が生えてる。なんだこれ。でも火は通ってるみたいなので食べた。


447.

近所の浜に未確認生物の死体が打ち上げられたから見に行こうと妻が言うので寒い中出掛けた。現場は黒山の人だかり。前へ出てみると小山のようなぶよんとした何かの死体。鯨とかじゃないかな。すると黝い肉が裂けて幾本もの管が伸び、人々の額に吸いつく。鯨じゃないよ。海に帰ろうよ。


448.

最近娘の表情が明るい。アパートの裏にこそこそパンクズを持ちこむのが笑顔の一因かもしれない。たぶん猫でも飼っているのだ。手伝いや宿題を率先してやり、時々わたしの顔色をそわそわ伺う。「ねえママ」ほらきた。「おねがいがあるの」「なあに」「このコにママをたべさせていい?」


449.

息を殺して、そっと角の向こうを覗き見る。冷たい冬の大気を裂く、生臭いにおい。一定の間合いで吹くそれは、吐息だ。道の先で嘆いている黒い影が吐息の主だ。異様に長い腕で郵便ポストを開けて、道路に手紙や封書を広げている。「ナイ、ナイヨォ」囁きながらびりびり紙を喰っている。


450.

手際の良いプロの作業風景というのは、魅力がある。料理人とか大工さんとか。流れに遅滞のないスマートさが好きのだ。だから心霊スポットとして有名な廃墟で化け物が友達の頭を割って脳を丸ごと取り出す光景をわくわくしながら眺めてしまった。あ、もうわたしの番?流石の手際。

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