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341.~350.

341.

お盆が近付くと所謂「境目」が曖昧になるからか、毎年異様なモノドモを見る。いまも、熟れ過ぎた桃に似た匂いのする赤黒くてドロドロした球体が、五つある口から「暑いぃうひひ暑いやっははは暑いききき」と呟きながら、陽炎立つアスファルトの上で白鷺に突っつかれている。


342.

子どもの頃住んでいたのは山間の小さな村だった。怖くもあったが、楽しい遊び場だった。一度だけ、ジブリで人気のでっかい生き物に似た何かを見たことがある。耳までがばちょと開いた口で、町から来てキャンプをしていた若者をもりもり食べていた。たぶんゴミを片付けなかったからだ。


343.

彼女は恋多き女だ。性格は穏やかで、笑顔は明るく、趣味も幅広い。そんな彼女はいまヤケ酒をかっくらっている。失恋したのだ。恋の相手はもうこの世にいない。「生贄に惚れる癖なんとかしなよ」「だって、星座とか帰り道とかの行動パターンとか調べてるとに好きになっちゃうんだもん」


344.

徘徊だろうか。その老人は毎日一輪花を買う。聞くと妻の誕生日と答える。汚れ切った姿で異臭が酷いが代金を払うので断れない。老人が来るようになってからちょうど千日目、老人が「妻」を伴ってきた。「今日はぜんぶ買います」私は売り物でも喰い物でもないが聞いてはいないだろう。


345.

風邪を引いて、相方に事務所を任せた私が悪かった。依頼主から渡されたメモを握り潰す私に、相方はスマイル。「俺たち二人でならできるよ」「そのキラキラした笑顔やめろ腹立つ殴るぞ」「もう殴ってる…」「うるさい。…まずは、ツァトゥグァのオカリナの音色、獲りに行くぞ」「OK」


346.

木に人の首が生っている。飛んできた蟲が鋭く尖った口を、彼女のやわらかそうな頬に突き刺そうとしたので慌てて叩き落した。ほっとしたのもつかの間、彼女に僕を盗られたという妄想に憑かれた女の首が、彼女を枝から噛みちぎってしまった。掌で受けると、彼女は見る間に枯れ崩れた。


347.

すすり泣く声で目が覚めた。枕元を見ると、サラサラの黒髪をおかっぱにした着物の幼女が泣いていた。「どうしたの?」思わず聞くと舌ったらずな可愛い声で「だきまくらがなくなったの」と。よく見ると手に干乾びた人間の死体を持っている。「だからあたらしいだきまくらになって」


348.

河童たちが泣いて頼むので、彼は彼女を誘って川へ向かった。案内役の河童と一緒に藪にしゃがんでいると、最近河童を獲って喰う5メートルぐらいのタガメが現れた。震え上がる河童。彼女は彼が持ってくるよういった油と鍋の意味に気づいて嬉々としてタガメに襲いかかった。


349.

金魚すくいやヨーヨーも良いけれど、スーパーボールすくいが一番好きだ。冷たく心地好い水の中を色とりどりのボールが流れていく様子が、きゃっきゃと遊んでいるようで楽しい。今年もたくさん取れた。ついでにオヤツの人の首も。水につけとくとふやけて腐るのだけが悲しい。


350.

寝苦しくて目が覚めた。冷房がタイマーで切れたのだろう。薄暗がりの中リモコンを取ろうと腕を動かそうとして―動けない。薄いブランケットが巻き付いている。暑くてやたらに寝がえりをうったから絡まったのだろう。そうに違いない。寝惚けているから解けないのだ。苦しい。骨が軋む。

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