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331.~340.

331.

けっこう大きな蛇がとぐろを巻いている。脇を通ろうとして、真正面から目があってしまった。なぜか足が止まる。動けない?そんな馬鹿な。ぽんっと肩に冷たい手。蛇の呪縛がとけて振り向けば、にっこり笑うのは苦手な男子…。「なんで見つめ合ってたの?」唇の間から覗く舌が割れている。


332.

頭が痛くて本の内容が入ってこない。痛む部分を指先で揉み解すが、それでどうにかなるわけでもない。寝ちゃおうかなとベッドに倒れ込んだ。べそっと重い音がして頭に死人の肌が触れる。人皮装丁の魔導書が構えと縋る猫のように頭にへばりつき、閉じた瞼の上から内容を送り込み始めた。


333.

ニャルラトテップの化身が家に遊びに来た。大抵アーティファクトをくれようとする。今日も実に怪しい匣を断り、TVを見せつつ酒で潰すことに成功した。海賊映画を横目に「いつか人間の想像力を越えられなくなったら…商売あがったりだ!」と泣き崩れた。慰めてるうちに寝てくれます。


334.

うちの猫は5回死んでいるらしい。私の家に住みつき始めてからは1回死んでいるのは確かだ。彼は確かに猫そのものだが、表情が分かる。今もニヤニヤ笑っている。「何?」「今日も美しいなと思って」「夢の中ではね」「夢の国の強さと美しさは、貴女の本物の美しさだよ」ちなみに美声。


335.

冷たい風が二の腕に触れた。眩しいほどだった空が真っ暗になる。これはゲリラ豪雨が来るな。私は早々に傍の喫茶店に入った。この手の雨は長くは続かない。お茶でも飲んで止むのを待とう。人々の悲鳴。窓から覗くと、無数の奇怪な深海魚が宙を泳いで道行く人に食らいついていた。


336.

視界がほとんど白で埋まる。霧雨だ。レインコートでないと意味がなさそうだが、傘しかないから仕方ない。歩き出すとすぐに全身濡れそぼる。視界も悪い。ふと白の中に黄色の長靴が見えた。15年前に消えた姉のお気に入りの…それからずっと見え隠れする黄色を追って歩き続けている。


337.

喰べてしまいたいほど好きだ。けど喰べてしまったら声が聞けなくなるし、笑顔も見られなくなる。「あの…なんか変なところある?」日直日誌から顔を上げ、彼女が首を傾げる。「指」「え?ああ、紙で切った」人差し指の腹に赤い血の筋。ひと口、いやひと舐めぐらいと思うけど我慢だ。


338.

喰べてしまいたいほど大好きな彼女は推理小説が大好き。新作が出ると休み時間に夢中で読んでる。授業中にも読んでる。急に前のページに戻って一心不乱に読み直し始め…天使のように笑った。謎が解けたらしい。うっとり見てると、俺が人喰いだと知る友達に叩かれた。「牙しまえっ」


339.

私が初めて見たのは、恐怖に歪んだ彼女の顔。けれど二言三言話すうち、老いた彼女の顔には哀しみの度合いが濃くなって、最後には私を抱きしめて泣いていた。鏡に映る私の顔は彼女の少女の頃に瓜二つ。明日は学校だ。歯車の調子が悪い右肩に油をさす。ぎこちないと心配されるからね。


340.「#七夕一夢に参加」

近所の河原で笹が飾られてると聞いて、コンビニついでに見に行った。真剣なものからふざけたもの、様々な短冊が笹に飾られていた。「復活の儀式が邪魔されませんように」は意味不明なりに願い事だけど、「星辰が1年に1度も揃うとか羨ましい」ってのは願い事?

337話・338話は、ツイノベ作品集の778話と繋がっています。

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