191.~200.
191.
人間は知性によって、肉体の弱さを補っている弱い生命体だ。それは確かに「強さ」ではあるが、往々にして暴力は知力を凌駕する。携帯電話に気をとられ、私の車は信号待ちの一団を薙ぎ払う。電柱と車の間には潰れた人。フロントに突っ伏した…ソレがずるりとこちらへ這ってくる。
192.
そんなつもりはなかった。人間は人間以外の生き物に出会ったからといって片っ端から殺すわけじゃないだろう?僕もそうだ。だけど僕を見て逃げた人間は、転んで死んじゃった。仕方がないので生き返らせた。無事に帰りつけるかついていってみたところ、他の人間を襲って喰い始めた。
193.「13日の金曜日記念、ジェイソンVSティンダロスの猟犬」
部屋の真ん中に大量の血だまり。たぶん、この血液を流した者は生きてはいないだろう。静まり返る冷え切った室内。炊飯器から鳴り響いた音に飛び上がるほど驚く。ついそちらを見ているうちに部屋の角から煙とともにグロテスクな犬の化け物が襲いかかってきた。慌てず鉈を振り下ろす。
194.「14日はツイノベの日お題:環」
流星群を見ようと外に出た私は、星のように煌めく楕円の石が綺麗な環状に並べられているのを見つけた。煌めく環は隣家や道路のあちこちにある。するとハクビシンが向かいの家の屋根から環の中へ飛び降りた。流れ星が降ってきて獣を丸飲みにして環の中へ消えた。
195.
木乃伊のように干乾びた祖父に枕元に呼ばれた。変な匂いがするしで正直嫌だったが、父に小突かれて近寄った。震える手が指輪を渡してくる。指につけろ、と。私は祖父の指輪を指に通す。祖父が目を見開き、そのまま二度と動かなくなる。母の不義のおかげで、助かることになろうとは。
196.
頭が痛い。風邪のひき始めか、拍動に合わせてズキンズキンと痛む。気のせいと自己暗示しながら一日を乗り切り、電車に乗る。幸い空いていた隅っこに座ってよりかかる。不意に痛みがひいて目を開けると、寄り添って座る苦手な同級生。「ごちそうさま」ああ、だから私を苛めるのか。
197.
彼がニコニコと性悪そうな笑顔で説明してくれたことをざっくり纏めると、彼らの種族は苦痛に苦しむ精神波動を食べるらしい。普通のものだけだと死ぬんだそうだ。必須アミノ酸とかそんなものらしい。それなら手軽に苦しみが溢れる紛争地帯とかにいけばいいというと「俺、草食系だから」
198.
国産みの神は不具の子を葦の舟に乗せて川へ流したという。純粋に可哀想だと思った。植物で編んだ舟は浸水して寒かったろう。途中で沈没したかもしれない。でもきっと海へ辿り着いたのだ。海で溺れて奇跡的に助かってから生理が止まった。膨れた腹を撫でながら葦の舟を編んでいる。
199.
幻肢痛。事故で腕を失った私は、毎夜無い腕の激痛に苦しんでいる。脳の勘違いのせいなので痛み止めや麻酔は効かない。ミラーセラピーも試してみたが私には効果がなかった。命を捧げても良いピアノも弾けなくなったし、今から首を括ろうと思う。どうやってって、この両腕でだよ。
200.
確かに息の根を止めた。てか、斧で首を切り落としたんだから絶対死んだ。けれどクソ親父は起き上がって贅肉を揺らしながら脂ぎった自分の頭をCカップはありそうな胸に抱えて外へ飛び出していったのだ。茫然としていると、頭を小脇に戻った親父はブリーフだけ穿いてまた出て行った。




