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121.~130.

121.

午前二時、誰もいないはずの体育館でボールをつく音がする。覗いてみると自分の頭をボールがわりに遊んでいる子どもがいる―という噂があるらしい。どうやらこの子ども達はその噂を確かめに来たらしい。試しにひとりの首を引き千切ってついてみたが、ボールと違って全然跳ねなかった。


122.

ドラマで「復讐しても死んだ人は喜ばない」と説得するのをよく見る。私もそう思っていた。けれど惨たらしく殺されて初めてそんなの嘘だと分かった。海の底で私の目玉を啜った異形は、礼にと私を殺した婚約者と愛人を海中に引きずり込んでくれた。ふやけた喉でゴボゴボと私は笑った。


123.

本が大好きな祖母が死んで二年が経つ。本当になんでも読む人で最近のライトノベルも嗜んでいた。大学ノートにはびっしりと感想文。片づけながらつい読んでいると、つい昨日新刊が出た小説の1つ前の巻の感想文。ぶわりと文字が解れて私の目鼻に傾れ込んできた。これで新作が読める。


124.

昔から音楽が好きだった。母がクラシック好きで音楽に溢れていたせいかもしれない。歌の入った曲も嫌いではないが、歌詞を眺めながらオフヴォーカルはなお良い。今は最近手に入れた曲を聴いている。ギターを抱えて蝋人形のごとく固まった死体は、嵐の夜に狂ったように良い演奏をする。


125.

スカートを翻した少女がとても嬉しそうにスキップしながら駆けてくるのが見えた。通勤時間帯の駅前は人が多い。彼女は何人もの人にぶつかりながら、走ってくる。ぶつかった人たちから悲鳴が上がる。気付いた時には少女の腹から生えたイカか何かに似た触手が私の目に潜り込んでいた。


126.

父さんは浮気をしている。土日は家でゴロゴロしているのが普通だったのに、家にいない日が増えた。友達と遊んで遅くなった日曜の夜、見知らぬ派手な女と父が腕を組んで歩いているのを見つけた。二人の後を、昨晩母が弟を生贄に呼び出した不定形の生き物がズルズルとついてゆく。


127.

そんな目で見るなよ。私は薪を積みながら籠の中の生き物を横目に見る。海で行方知れずになった姉は、一カ月後海岸に打ち上げられた。魚神の仔を孕んだ姉は今朝、我が子に腹を裂かれて死んだ。神の仔は焼き殺すのがしきたりだ。魚は陸では焼かれるものだ。だから、そんな目で見るなよ。


128.

月下美人の馨りがする。植物は話しかけると応えるという。実家の玄関の内側に置かれていて、いってきますとただいまを一番よく聞いていたからか、年に数度花が咲いた。アパートのドアを開けると、白く輝く美女が「おかえり」と笑いながら、白く柔らかい触手を喉に突き刺してきた。


129.

恐竜の卵の化石だと聞いていたのだが、違った。彼の束縛が愛情ではなくDVだということは分かっていた。もしかしたらいつか…と祈っていたが、刃物を持ち出されて、私は手近にあった化石で彼の頭をカチ割った。今、重くて丸い石は、じゅるると美味そうに彼の脳味噌を啜っている。


130.

やはり台風の中買い物に行かせたのは間違いだった。私は木の枝がべっしべっし当たるガラス窓から、雨と風と葉っぱが踊り狂う外を眺めた。雨戸を閉めないとガラス割れるかも…などと考えていると買い物袋を腕に抱えたうちのビヤーキーが風に巻かれてくるくる吹っ飛んでいくのが見えた。

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