表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Truth tales   作者: own
1/3

序章

序章


帝都市内 セントロイザス大聖堂


 深夜の大聖堂の中の礼拝堂は静寂に包まれていた。

見渡す限りに広い空間に、息を呑むほどに高い吹き抜け。

シャンデリアの蝋燭が放つ無数の炎がステンドグラスに映え、より情緒のある色を放つ。

もう夜も更けているというのに、そこには数多くの聖職者のみならず、帝国政府や帝国軍の重鎮、貴族、果ては近隣国の国賓までもが所狭しと席を連ねていた。

誰も一切口を開かない。静寂のみが空間を支配する。

そこは現実から切り離された異空間と化していた。

 

 それは、突然の報せだった。

本日の午前零時、神より重大な神告が下る――

その日の早朝、教皇が直々に皇帝に送った極秘文章の内容はそういうものだった。

教皇のみが受けることの出来る、神よりの神告。

それは帝国のみならず、世紀が始まって以来地上全ての人間の歴史を大きく動かしてきた、絶対無二の啓示。

この報せを受け取った皇帝は、急遽大聖堂に自国の重鎮のみならず、近隣国の要人をも呼び寄せた。

夕方にになる頃には、どこから情報が漏れたかは分からないが、山のような数の市民が大聖堂を取り囲んだ。

周囲には衛兵が配置され、一部区間が通行止めや立ち入り禁止となり、大聖堂の周囲には厳戒態勢がしかれた。


 そして現在、教皇は礼拝堂の最深部の祭壇のある部屋に閉じこもったまま、神よりの神告を受けている最中である。

居合わせた全ての者が、一言も言葉を発さず、身を切る思いで神告を待ちかねていた。

その内容は、全人類に救いをもたらすものか、かたや――

世界を揺るがす瞬間が、もうすぐ来る。

しかし、定刻を過ぎてもその重い扉が開かれる気配は一向に無い。

予定時刻の零時から、一時間が過ぎようとしているが・・・


 そのとき。

重々しい音を立てながら、扉が開いた。

跳ね上がる心拍数。

軋むような緊張。

しかし、誰も口を開かず。

開いた扉の向こうから現れる人物に、無数の意識が集中する。


コツコツと足音を立てながら、一つの人影が現れる。

白い髭を胸元まで生やした老人。

第18代教皇、アルマリシウス。


彼は、礼拝堂全体が見渡せる場所まで歩く。


歩みを止めた。


礼拝堂をぐるりと見渡す。


そしてまるで、壁を突き破るような、帝都全体に響き渡るような声で。


沈黙を、破った。







「この場に居合わせた者達、そして、全世界の神の子らに、これより神告を授く!」



「主は仰せになった!!――」








「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

大聖堂内が破裂するような声が響き渡った。


そして。


「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

神告の内容を知った大聖堂前の広場の市民達の歓声が、帝都を揺らした。






帝都市内 皇居 


「皇帝陛下!」


「大臣か。聞いておるぞ。帝都市内はもの凄い騒ぎだそうだな。」


「はっ!市民達の興奮は未だ収まらず、ただ今警備兵達が騒ぎを鎮圧している状況であります。朝までには、どうにか事は収まるかと。」


「そうか。」


「はっ。・・・」


「・・・」


「・・・」


「どうした、お主らしくもない。まるで魂が抜けたようではないか。」


「はっ・・・。陛下、恐れながら・・・。」


「構わん。申せ。」


「はっ。実は不肖この私・・・誠に不法者ながら、アルマシリウス教皇の神告が、今でもにわかに信じがたくございまして・・・」


「・・・」


「このようなことが、誠にあって良いものなのかと・・・これではまさに、かの伝説と全く同じ・・・」


「・・・」


「・・・」


「私も、先ほど事の仔細を聞いたばかりのときは、夢でも見ているのかと思うた。」


「だが、今では確信している。此度の神告、従来のそれと同じくして、またも世界を揺るがす、動かぬ現実になる。そして・・・」


「人類の、一筋の希望になる、とな。」


「!!」


「願望、ではない。私の中の直感が、確かにそう告げているのだ・・・。」


「陛下・・・」


「・・・全世界の国家、もしくは集落に、神告の内容をもれなく通達せよ!!」


「大魔王ヴィルゼラードを打ち倒し、そして、生きとし生けるもの全てをその手で救済する――」





「『勇者』が遂に現れたと!!」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ