_はしがき
こどもとはなんだろう、大人とはなんだろう。童話とはこどもに向けた噺のことだが、こどもというその概念は、どこまでのものを指しているのだろうか。どの範囲の人間までを、童話の対象にすべきなのだろうか。……仮に、天国への切符を手にしているものを大人とするなら、私は、いまだ大人というものに出会ったことがない。
(M.ウィーナー「傲慢」より)
現代社会において「大人」というものは、簡易な区別としては責任の有無があげられよう。大人には責任がつきまとう。
つまり言い換えれば「子供」に責任は問われないのだ。子供は社会に過剰なほどに守られている。
(ポール・リー「大人と子供」より)
論理展開の誤謬として、白黒思考というものがあります。白か黒かの、両極端にしか考えない考え方のことで、これも日常でよく見かける誤謬です。
たとえば、小学校でのある一場面。ある女の子が、男の子に、「**ちゃんのことが好きなの?」と訊ねました。男の子は咄嗟に「違うよ! 好きじゃないよ!」と答えました。実はその会話を、**ちゃんが聞いていたのですが、**ちゃんは自分が嫌われていると思って、泣いてしまったそうです(注:これは作り話です)。これは「好き」か「嫌い」かの両端しか見えていない、「好きでない=嫌い」と考えてしまう誤りですね。これが白黒思考です。
(笹原由宇「蜚語小説入門」より)
やあ、せかいの子どものみんな!
ぼくは作者のグルコースだ。きみたち子どものうち、サイエンスを習ったことのある子なら、ぼくの名前を聞いて少しおかしく思ったかもしれないね。でもぼくを食べてもあまり栄養にはならないだろうよ。
これからみっつの物語を紹介するよ。どれもぼくが昔書いた童話だ。きっと楽しんでくれるだろう。きみたちは子どもなのだからね。でも、もしかしたら、きみたちは怒るかもしれない。悲しむかもしれない。なにも思わないかもしれない。それでも、きみたちは、みとめなければならないだろう。
きみたちは子どもなのだから。