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仲間も聖剣も欲しくない。

 リィナに会いにいって、その後与えられた客室に戻ったエステルはその後、眠りについた。

 そうして、時間が経過して、翌朝。

 目を覚まして、客室の扉がノックされる。朝早くに目が覚め、すっかり準備も終えているエステルはそのノックに、どうぞと声をかける。

 そうすれば、開かれた扉からは一人の侍女が現れる。

 「勇者様、陛下がおよびです」

 「ふぅん? 国王がねぇ?」

 不敬にも陛下と呼ばなかった事に、侍女は眉をひそめたが、何もいわなかった。その後、愛剣を腰に下げて、エステルは侍女の後をついていく。

 赤い絨毯のひかれた廊下を、歩く。そうしてたどり着いた先は、昨日の会議室だった。

 侍女が扉をコンコンッとノックをして、開ける。

 「勇者、エステル・ユーファミア様をお連れいたしました」

 侍女がそんな言葉と共に、会釈をする。エステルは中にいる面々を見まわす。国王に、宰相に、あの聖剣の初代勇者、あとは知らない顔がちらちらいる。

 おそらく仲間を選出したのだろうと、エステルは予測する。とはいっても、仲間も聖剣も格別欲しいものではない。寧ろ、エステルからすれば邪魔だと言えるものだ。

 「エステル・ユーファミアよ。仲間を紹介する」

 国王がそういって、前に出るが、

 「いらない」

 ばっさりとエステルは清々しいほどに言いきった。そして、そんな言葉に固まっている周りに、また言った。

 「ついでにその聖剣のババアもいらねぇよ。俺は俺で好き勝手に魔王潰してくるから、それでいいだろ?」

 めんどくさそうに、そんな言葉を言い放つエステルであった。

 実際仲間なんていらない、と彼は思っている。そんなものが居ても邪魔なだけだと、そう思っているのだ。

 「な――…、そんな我儘が通ると思っているのか!!」

 「はっ、黙れよ。そっちこそ、俺に雑魚を押し付けようなんざんな真似してんじゃねーつーの。俺は足手まといはいらねぇっていってんの。わかるか?」

 偉そうに不服そうに言ったその言葉に、眉をひそめるのは仲間として用意されていた人物たちである。

 用意されていたのは、二人の騎士、一人の魔術師、一人の巫女であった。

 騎士の身にまとっている鎧には、王家の紋章が刻まれている。そこから、彼らが王宮に勤めている騎士である事がわかる。王家に忠誠を誓った王宮騎士団の名は有名であり、実力主義な騎士団だ。そのため、騎士団に所属しているというだけで箔が付くというものである。

 魔術師の一人はおそらく、宮廷魔術師の一人だろうとエステルは思考する。ロープを見に付けている魔術師は若い女だ。髪は赤く染まっており、まだ十代後半ぐらいだろう。

 巫女は神殿よりつかわされた存在である。回復魔術に関してのプロというのが神殿に集う巫女や神官であった。その巫女もまだ若い。信仰深い存在であるからか、エステルの言葉に不服そうにエステルを睨みつけている。

 「雑魚だと、貴様…、『黒剣のエステル』と呼ばれているらしいが、俺を愚弄する気か…」

 「そうです。あなたは本当に勇者なのですか?」

 「………」

 「何て言う無礼な…」

 二人の騎士は、いきり立ったようにエステルを睨む。一人の魔術師は、エステルに何もいわないがその目や口は不服そうに歪んでいる。一人の巫女は心外だとでも言う風にエステルに言葉を放つ。

 エステルは睨まれたとしても、特に慌てることもなくめんどくさそうに息を吐く。

 そんな態度が、きっと彼らの怒りをもっと増長させているのだろう。その場の空気は、雰囲気は、険悪であった。

 『そうです。選ばれた戦士達に向かって雑魚などというなど…、あなたがどれだけ強いのか知りませんが仲間がいるにこした事はないでしょう。一人で魔王を退治に行く気だなんて何て言う、愚かな行為でしょう』

 「ババアは猫かぶってんじゃねぇよ。気持ち悪い。大体俺は、別に一人だっていうわけじゃねぇよ。仲間なら居るさ。少なくともこいつらよりも、有能な奴らがな」

 聖剣に宿る初代勇者、メアの言葉にエステルは笑ってそういった。

 『仲間…? 何処にそんな方がいると言うのです! 仲間が欲しくないからと…、それに私をいらないだなんて聖剣より使い勝手のよい武器などあるはずないでしょう!』

 「あー、めんどくせぇな。そんなに言うなら勝ってみせろよ。俺の仲間に。そうしたら連れてやってもいいぜ?」

 挑発をして、エステルはぐるりっとその場をみわたし、仲間候補一人一人を見る。

 国王達は何もいえずにどうするべきかと思案しているのか、黙り込んでいた。

 「いいじゃねぇか、勝ってやる!」

 「いいでしょう、やりましょう」

 「…やる」

 「私たち四人でかかれば負けるはずがありませんわ」

 そして、その挑発に乗った。

 「その言葉、忘れるなよ」

 エステルは、自身満々に笑みを零すのであった。



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