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王宮へ乗り込む 2

 躊躇いもなく振るわれた剣。それによって、王城の壁が崩れ落ちる。本来なら、一瞬にして、そのようなことは出来ない。だけれど、エステル・ユーファミアは簡単にそれを成し遂げる。

 『黒剣のエステル』の名は伊達ではない。

 そもそもそういう力があったところで、こうして王城の壁を切り抜くなんて真似をするのはよっぽどの度胸がなければ出来ない。

 王城というのは、その名の通り、王の住まいである城である。そんな場所の壁を切り取るなんてまともではない。

「なっ」

「きゃああああ」

 悲鳴が響く。

 何が起こったか分からないといった戸惑ったような声。

 ――そんな声が聞こえてきても、エステル・ユーファミアは一切躊躇わない。

「貴様、何をしている!!」

「此処が何処だと思っているんだ!!」

 騎士たちが声をあげる。だけど、エステル・ユーファミアは気にしない。

 それらの人々を気絶させていく。エステルにとって、宰相が指示を出してやったこととはいえ、このドッキ王国がエステルに牙をむいたことは事実である。エステルにとっては敵でしかない。

 ――恨むなら、エステル・ユーファミアに牙を剥いたエガ宰相とドッキ国を恨めばいい。

 エステルは、躊躇わない。ただ自分がやりたいように生きている。

 そして彼は自分を討伐しようと向かってくる人の命を奪うことさえも躊躇わない。

「――エガ宰相は何処だ?」

「さ、宰相に何を?」

「答えないならいい」

 エステルは答えない者を一刀両断した。

「エステル様ぁ、楽しそう~」

「エステル、毒でもばらまく?」

「毒をばらまくのはあとでな」

 ……エステルはフローラとヴェネーノの言葉にそう答えた。彼にとってヴェネーノの毒をばらまくことも考えているらしい。あとでなら良いと思っているあたり、よっぽどちょっかいを出されたのが嫌だったのだと言える。

 エステルは、ただ前へと進んでいく。

 エガ宰相がいるという場所へと歩いていく――。向かっていく騎士たちは一人残らず殺害である。あまりにも躊躇いなく殺されていく様にエステルを恐れて逃げるものも多い。

 中にはエステルという有名な冒険者で、勇者に選ばれた存在のことを知っているものもいるのだ。

 エガ宰相が、他国の勇者に対して何かを起こしてしまったと知って、慌てて王族の元へ向かうものもいた。

 そういう騎士は、良い判断をしたと言えるだろう。




 分かっていないのは、エステルに手を出したエガ宰相のみである。






 エステル・ユーファミアに手を出さない方がいい――と分かっているものは分かっている。そういう者たちは、早急にエガ宰相を切り捨てることを選んだ。

 何故ならどうあがいても王城に襲来してきているエステル・ユーファミアを倒せるとは思えないからだ。

 唯一エステルと渡り合えるかもしれない存在は、ドッキ王国の勇者であるが、その勇者はまだ幼い。勝てない可能性の方が高い。それならばただ一人の勇者を殺されるわけにもいかない。

 幸いにもというべきか、エステル・ユーファミアはエガ宰相をターゲットにしている。エガ宰相さえ渡せば、そのまま引き下がってくれるのではないかとそう思えるのだ。

 ドッキ王国の勇者がエステル・ユーファミアに手を出すなどありえない。

 そう結論づける。そしてエステル・ユーファミアの襲来を受けて、エガ宰相のことを切り捨て、なんとか穏便に帰ってもらおうと思っているのだ。

 ちなみにエステルは、フローラに情報収集をさせ、そういう動向も確認していた。エステルは自分がやると決めたらすぐに行動を起こす感覚派だが、そういうところは理性的である。

「エステル様ぁ、勇者はどうします?」

「脅す」

 フローラの言葉に、エステルはそう答えた。

「宰相は脅すだけじゃなくて殺してもいいな。ここの連中は俺が宰相を殺しても気にしなさそうだし」

 フローラによる情報収集で、エガ宰相を殺したとしてもエステルを咎めることはしないだろうと結論付ける。此処までやっても自分は隠れて出てこない宰相――これだけの騒ぎが起こっているのは分かっているだろうに、エガ宰相は出てこないのだ。おそらく自分の保身に走っているのと、エステル一人ならどうにでもできる――と思い込んでいるのだろうと思われる。

 そういう思い込みというのは、時に人を窮地に追いやるものである。そのことをエガ宰相は知らずに此処まで来たのだろう。

「宰相」

「……お前たち、この不審者をどうにかしろ!!」

 エガ宰相は、逃げようとしていた。だけれどもエステルが到着する方が断然にはやかった。

 どうにか、目の前の敵を倒してしまおうと命令を下す。宰相は数の暴力というものを信じている。

 だけど、エステルにとって相手が何人いようとも関係がない。

 宰相の周りにいた騎士たちは、すぐに切り伏せられた。






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