姉妹と保護者
ほのぼの、かな?
スカーレッツとの零れ話です。
軽く鼻歌を歌いリズムを取りながら、手に持った菜箸を動かす。
紅魔館のお昼時。久し振りに俺が昼食を作る事になったのだ。
何時もは美鈴か妖精メイドにやらせているのだが、今回は姉妹たっての要望と言う事で俺が駆り出された次第。なしてさ。知らん。
「……こんなものか」
ボウルに入った玉子がよく混ざったのを確認したらそれをフライパンに投入し、コンロ(安心のmade in KAPPA。燃料は妖力だからecoだよこれは!)を点火させる。
作る料理は玉子焼きとホットサンド、ついでに紅茶とクッキー。栄養バランスなんて分からないが多分緑の食べ物が不足してると言われそうだ。
元から料理のレパートリーが多い訳では無いので単純なものしか作れないが、暇を持て余して磨き上げた調理スキルは一級品だろうと自負している。今なら目を瞑ってキャベツの千切りをしたって指チョンパする事はあるまい。
クッキーは既に焼き上がり、紅茶の準備も出来ている。後もうちょいかなーと思っていると、ベキョッと何かが粉砕された音がした。
「てっしょ〜、ま〜だ〜?」
「……女の子なんだからもうちょっと淑やかさを持て」
そう言う事を口うるさく言うつもりはさらさら無いが、自分が育てたような子がドアをぶち破るような所を見ると流石に言いたくもなる。
そんな親心には全く耳を貸さず俺の首に腕を引っ掛けブラブラとぶら下がっているのは懐かれてるのか嘗められてるのかどっちだ。どっちもか。
「後玉子が焼けたら終わりだから、レミリアと一緒に大人しく待ってろ」
「え〜」
「え〜ったって、こっちにいても面白い事がある訳じゃねえぞ?」
手伝ってくれる訳では無いようだし、手伝うような事も無い。むしろ邪魔になるであろう。いやレミリアよりはマシか?あっちはよく手伝ってくれるのはいいけど砂糖と片栗粉を間違える事が日常茶飯事だし。
「暇なんだもん」
「そーかい」
「そーだよ」
全体重を首に掛けられてるにも関わらず、あまり息苦しさは感じない。ただフランの体温が背中や首筋に感じるだけだ。
「……やっぱり、もう少し恥じらいを持て」
「?」
いや、なんか気恥ずかしくなった。それだけ。
中庭で日光を堂々と浴びながら談笑する吸血鬼と妖怪。
ん?吸血鬼が日光を浴びるなんて自殺行為じゃねって?何の為に俺の能力があるんだよ。作者だってオリ主チートマジハンパねぇが書きたいんじゃなくてこーゆー面倒臭い設定やらを無視して話を進める為に〈粛正しました〉
「……お兄様?目が死んでますよ?」
「いや、ちょっと限界まで試して見ただけだ。気にすんな」
いやぁ、主人公のメタ発言は問題があるよね。度が過ぎると色んな人から粛正を受けそうだ。
それはともかく、三人が囲んでいるテーブルには先程作ったクッキーと三人分のティーカップが置いてある。
昼食を済ませ下らない話でお茶を濁していると、ふとレミリアがこんな事を言った。
「そう言えば、私達と同じ位の妖怪っていたかしら」
「む?」
同じ位……?
「……ルーミアとか?」
「……お兄様、今どこを見てそう判断しました?」
顔を真っ赤にして自分の胸部を隠そうとするレミリア。いや、誰もそんな事はチラリとしか考えて無いって。
「同じくらいの歳って事?」
「そ、そうよフラン!体型的な意味じゃなくてそう言う事を言いたかったんですお兄様!」
「そうならそう言えば良かろうが……」
はて、同じ位ね……妖夢とか橙とかはそれっぽいけど。ルーミアは知らんし、リグル?まだ見てもいないので何とも言えない。
「同じねぇ……ま、妖怪だから五十位は誤差の範囲だろうが、そんなにいないんじゃないか?」
後はミスティアとか大妖精、チルノ……年齢が分かんない奴らばっかだな。
「あ!」
「あ?」
フランが立ち上がり、嬉しそうにこちらを見つめてくる。
「いたよ、私達と同じ位の歳の人!」
「おう、誰だ?」
まるで探偵が犯人を言い当てるように腕を高らかに上げ、振り下ろした指が指していたのは……
「……俺?」
「そーだよ、てっしょー!前に言ってたでしょ?もうすぐ三百になるって」
「……あぁ、んな事も言ってたっけ」
如何ね、最近トシで脳がボケちゃってて。
「お姉様は二百五十の誕生日が近いし、ね?」
「いや、そんな風に“ね?”って言われても……」
……そういや俺と幽香って結構歳の差があるんだよな。幽香の歳は怖くて聞いた事無いけど。
「……お、お兄様と……」
「……ん、どうしたレミリア?」
俯いてブツブツ呟きながら高速で首を横に振っている。犬がなんかかお前は。
「じゃあ、お姉様と一番歳が近いのはてっしょーなんだね」
「みたいだな」
他がどうかは知らないが、まぁそうなんだろう。
「……良かったねお姉様」
「え、ちょ、どういう意味よフラン!」
またもや顔全体を紅く染めながら妹を睨みつけるスカーレットデビル。
「だっていっつも言ってたじゃない。お兄様と釣り合いがとれそうなのは私位だっt「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」
そのまま弾幕ごっこに移行。俺に出来る事は空間結界が壊れないよう注意する位だった。止める?俺が?あれらを?イヤダヨ俺!
「全く……まんまガキだよな」
一時間近く続いた弾幕ごっこはレーヴァティンとグングニルのクロスカウンターでドローと言う幕切れになった。お互いのノーガード戦法(一撃食らわせる事しか考えていない、の意)にはおにーさんびっくりだったよ。
「よいしょ、と。やっぱ軽いなー」
肩に掛かる重さは、俺が二百年以上前から知っている重さと変わっていなかった。
こんな感じかな?
日常的に弾幕ごっこがあったら大変そうだけどスカーレッツならやってそうだ。