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異世界で暇してたら ――ご令嬢と見慣れない美女とで大騒ぎ――

作者: 甘い秋空
掲載日:2026/06/10

「ふわぁ~……」

 王立騎士学園中等部の昼休み。中庭の隅で、ベンチに深く腰をかけ、俺――クロガネは、大きなあくびをかました。

 青い空に、心地よい風が俺の短髪を撫でる。今日は風属性との相性が良いようだ……俺は、魔法を使えないけど、なんかそんな気がする。

「クロガネ君、退屈しているところ悪いけれど、面白い情報よ」

 すっと影が差す。


 成金侯爵のご令嬢フランソワーズが、風で金髪を少し揺らしながら、いつもの涼しい顔で立っていた。

「今日、学園に『研修生』が来るらしいわ。しかも、かなりの美人だとか」

「へぇ……美人?」

 この異世界には、フランソワーズよりも美人が、いたんだ。


 ◇


 学園の中庭、何やら女性の声がする。

 声のする方向を見ると、見慣れない美女。その美女に、学園の生徒である令息が、絡んでいた。

「ねぇ、ちょっと付き合いな。俺は、子爵家なんだぜ、男爵家とは違うんだよ」

「困ります。離してください」

 美女は困惑している。

 ……ああ、これは助けるしかない。


「おい、やめとけよ」

 俺は声をかけた。

 令息が振り向き、そして、鼻で笑った。

「平民が口を挟むな――」

 俺の拳が軽く空を切った。風圧だけで、令息が吹っ飛んだ。やはり、今日は風属性が冴えている。


「ひ、ひでぇ! 暴力だ! 平民が暴力を振るったぞ!」

 令息は、情けない悲鳴を上げながら逃げていった。

「触ってもいないのに」

 本当なら殴りたかったが、平民が貴族を殴ると、不敬だと言われてしまう。


「助けていただき、ありがとうございます」

 見慣れない美女が、平民の俺に、深々と頭を下げた。

「い、いや……」

 当たり前のことをしただけなのにと、照れてしまう。俺は、誉められると恐縮するタイプなんだ。


 横を見ると、フランソワーズがニヤニヤしていた。

 なんでそんな楽しそうなんだ?


 ◇


 その日の午後、俺は学園長室に呼び出された。

「クロガネ。平民が貴族に暴力を振るうとは前代未聞だ。停学処分とする」

「はぁ? 風圧ですよ? ノーダメージですよ?」

 そこへ、ドアが勢いよく開いた。


「学園長、彼は悪くありません。助けただけです」

 フランソワーズが堂々と入ってきた。

 彼女が、令息側にも非があると証言してくれたおかげで、結果――

「……今回は不問とする」

 俺はなんとか停学を免れた。


「しばらく大人しくしてなさい。あなたは目立ちすぎるのよ」

 フランソワーズにそう言うが、なぜか楽しそうだ。


 ◇


 放課後、案の定、令息が仲間を引き連れて、教室へやってきた。

「昼はよくもやってくれたな、平民!」

 ……ああ、やっぱり来たか。

 だが、俺には「フランソワーズとの約束」があるので、手を出せない。約束が無くても、貴族を殴るのは、それ相当の理由が必要だ

「ちょ、ちょっと待て! 俺は戦えないんだって!」

 俺は校舎を逃げ回る。

 そのせいで、学園中が大騒ぎに。

 そして――

『ズガァァァン!』

 轟音とともに、令息たちがまとめて吹き飛んだ。


 フランソワーズの魔法だ。

「フランソワーズ嬢、助かった……」

「あなたが逃げ回るから、余計に面倒になったのよ」

 しかし……

「「……あ」」

 勢い余った魔法は、校舎の壁まで吹き飛ばしていた。

 俺とフランソワーズは、同時に固まった。


 ◇


 再び学園長室に呼び出された。

「学園内で乱闘騒ぎを起こすとは……二人とも停学だ」

 まいったな……

 困っていると、学園長室の扉が静かに開いた。


「ちょっと待ってください!」

 なんと、あの見慣れない美女が入ってきた。

「彼らは悪くありません。私は一部始終を見ていました」

 美女は静かに名乗った。


「私は友好国から来た研修生……そして、友好国の王女です」

 学園長の顔色が変わった。

「お、王女殿下……!」


「彼は、私を助けてくれた恩人です。フランソワーズ様も、学園の治安維持に尽力されました」

 こうして、俺とご令嬢の停学は、取り消された。


 ◇


 数日後、成金侯爵が新しい校舎を寄付し、学園はピカピカになった。

 そして――


「姉御! 今日もよろしくお願いします!」

「姉御、ついていきます!」

 あの令息たちが、なぜかフランソワーズを「姉御」と呼んでいた。

「姉御? ……フランソワーズ嬢、彼らに何したんですか?」

「貴族として教育しただけよ……でも、少しキツすぎたかも」

 フランソワーズは、涼しい顔で微笑んだ。その笑顔が一番怖い。


 友好国の王女は、そんな俺たちを見て、クスッと笑った。

「クロガネ様の周りは、とても賑やかですね」

 平民の俺に、王女が「様」を付けて呼んでいる。これは事件だ。


 こうして、俺の平凡な学園生活は、ますます騒がしくなっていくのだった。


  ―― 少し休みますが、またね (^o^)/ ――


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