五
あっけない程だった。
彼らはグントの入国口を揃って通過した。
天下御免の、正にフリーパスだった。
「魔道軍って、やっぱ凄いんだなー」
しみじみとマーシュが漏らす。
「まあ、大陸で当たる処敵無しの常勝軍隊だったからなー」
そして受け入れ先は無条件で迎え入れる。
当然だ。
彼らが付けば、勝利が約束されるのだから。
大金を積んで漸く掴んだ証文を反故にする謂れは無い。
結局、当期生32名全員が志願していた。
メクレルの熱弁がそれを後押しした事は言うまでもない。
「ほら、観光に来たんじゃないわよ、貴方たち」
以外だったのは、指導教官のクレシア・アネサニスが自ら引率を買って出た事だ。
てっきり、全力で止められると思っていたのに。
メクレルはまだ彼女への不信が拭えない。
騎長であるシュナイツァーが自騎に魔力を注ぎ。
ぐったりとした倦怠感と共にそれを終え、一服付けている時だった。
「上衛士殿!」
緊張した顔で、操縦士のウェラ・ミケリー二級曹が駆け付けてきた。
「なんだね」
さすがに物憂げな言葉で対してしまう。
「御休息中失礼致します」
ただならぬ気配を感じ、シュナイツァーは背を伸ばし申告を待ち受ける姿勢に。
「よい、但し手短に頼む」
二級曹は息を呑み、続ける。
「百騎長より呼集が発せらました。シェルカッチーが遂に包囲された模様です」
シュナイツァーは二口も吸っていない紙巻を踏み消し、無言で立ち上がった。
「了解した」
乾いた声で、告げる。