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人類滅亡間近!食べて応援!人間の蒲焼!魔界スーパー特売セール

作者: 江戸川散歩

※魔王軍食料資源管理庁議事録より抜粋


『えー、お集まりの皆様。本日の議題は、減少の一途をたどる人間の収穫量にどう対処していくか、です』

『自然回復量を越えた人間の乱獲、これが地上の生態系を破壊していることは明らかです。ただちに人獲量の制限を行うべきと進言いたします』

『いやまあそれはみんなそうした方がいいってのはわかってんだけどねえ』

『地方魔族の生活はだいたい人間を獲って販売流通させることで成り立ってるからなあ』

『休業補償出すとかでどうにかなりませんかね』

『そりゃ財政的に厳しいでしょ。それに地方魔族とか中央の言う事全然聞かないじゃん。補償せしめた上に密猟はじめるのが関の山では』

『もはやあいつら反社会勢力だよ反社会勢力』

『しかし、ここまで乱獲されてしまうとは、やはり蒲焼という調理法が与えた影響は大きいよなあ』

『めちゃウマですもんね人間の蒲焼』

『あれでみんな人間獲るようになっちゃったもんねえ』

『何度魔王陛下が大号令出して人間との戦争を呼びかけても全然盛り上がんなかったのに、蒲焼流行ってからマッハで人類軍壊滅しちゃったの笑いどころとしか』

『食欲ほど恐ろしいものはないよマジで』

『しかし、自然な人間の収穫が厳しいわけですけど、養殖の方はどうにかなんないんです?』

『それが、完全養殖が難しくて……何やってもつがいにならないし子供作らねえ……。ほっとくと少子化すぎて勝手に滅びそうになる……どうしたらええんや……』

『人間養殖するならサキュバスとかインキュバス連れてきて子供産ませるのどう?』

『それはもうやったんですけど、子供世代が交雑で生殖能力ない上に、一度サキュバスとインキュバスに誘惑させた人間、もうヒトのオスメスと交尾してくんないんすよ』

『絶滅が加速してる』

『夢見すぎて現実見えなくなっちゃうんだね……』

『世知辛すぎます』

『なんというか、異次元の少子化対策から始まり、名状しがたき少子化対策、宇宙からの少子化対策、闇をさまよう少子化対策、狂気の少子化対策と、必死に養殖のための施策を打ってきたんですが、何やっても増えねえんすよ……』

『どうして今まで絶滅しなかったんだ』

『全くわかりません』

『こんなしょうもない種族だっていうのに、一時期我々が勇者に死ぬほど手を焼いていたの何だったんだろうな』

『我々が滅ぶかと思いましたもんね』

『今となってはなんかの集団幻覚だったんじゃねえかって気もしてきました』

『異常だったよねアイツだけ』

『で、結局人類のことどうするんですか』

『まあ結論としては――』



 『わあ、今日は人間が安い!今日のおかずはこれにしよっと!』魔界スーパーの特売情報チェック。結婚を機に魔王軍から引退して数百年、すっかり板についた主婦の日課であった。今日は奮発して人間の蒲焼!家族みんなの喜ぶ顔が浮かぶ。


――そう、彼らは全てを諦めたのであった。

とりあえず、今食べられるだけ食べてしまおう。魔界スーパーにでかでかと掲げられた『食べて応援!』のポップは、あまりにも明白に人類の滅亡を約束する。一体何を応援するというのだろう?

 無造作に並べられた蒲焼たちの声にならない声は、もはや誰にも届くことはなかった。

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