表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/402

家族で穴掘り~ママが主役の物語~

家族で穴掘り~ルゥが主役の物語~の時の出来事をママから見た物語です。

 人間め。

 よりによって死の島の近くで血を流しやがって。

 人間の死体を始末しに来た島で『奴ら』の気配を感じる。

 ルゥは……?

 オークと話している。

 グズオークが、またバカな事をやっているな。

 

『奴ら』にルゥの存在がバレたら……

 今、空いている魔王の座を狙う奴は大勢いる。

 だがヴォジャノーイ族と魚族がルゥの存在を隠しているから、ここまで守る事ができた。


 もしバレたら?

 ヴォジャノーイ族は強いから戦力になるだろう。

 ヴォジャノーイ王も会いに来たいのを我慢してまでルゥの存在を誰にも知られないようにしているらしい。

 ハーピー族とオーク族も前魔王に助けられたから、いつ現れるかも分からない『姫』を守る為に各種族から一人ずつ死の島に置いたんだ。

 魔王に会った事は無いが、世話になった分は返さないとな。


 わたしはハーピー族最高の戦士だ。

 グズオークはバカだけどオーク族の子育て担当だったらしく、赤ん坊の世話には慣れているし薬草にも詳しい。

 あとは……あのでかい『ばばぁ』もいざとなれば助けに来るだろう。

 

『奴ら』はまだルゥの存在に気づいていない。

 ルゥには魅了の力があるから、バレても上手く魅了できれば……

 でも、もしできなかったら?


 ルゥに初めて会った時、確かに魅了の力で惑わされた。

 だが今は違う。

 わたしはルゥが心から大切なんだ。

 

 初めて笑ってくれた時。

 初めて抱っこして空を飛んだ時。

 初めて一緒に寝た時。

 初めてママと呼んでくれた時。

  

 全部がわたしの幸せだった。

 そして、今この瞬間も……

 

 誰だろうがルゥを傷つける奴は赦さない。

 

 それにしても、グズオークは相変わらずバカだな。

 

 腹は出ているが……

 顔だけは勇ましくて……

 なかなか……

 

 は!?

 わたしは何を考えているんだ!?

 

「お前、顔怖いぞ」 

 

 って、わたしは何を言っているんだ!?

 こんな事をオークに言うつもりは無かったのに!

 

 ザッザッ

 

 良かった。

 オークの奴、穴り堀りに夢中で聞こえていなかったか……


 いや、何でホッとしているんだ?

 

 どうしたんだ?

 わたし……

 最近おかしい……?

 

 きっと『奴ら』の事で疲れているんだ。

 

 はぁ。

 死の島に帰ったらゆっくり寝よう。

 

 そうだ。

 ルゥを抱っこして寝れば疲れなんてすぐに取れるさ。

 

 初めてルゥを抱っこして寝た時のかわいさを思い出すなぁ……

 あれはルゥに初めて会った日の夜。

 ヴォジャノーイが人間の赤ん坊は夜は一人で寝るって言うからそうしたんだけど、ちゃんと生きているか見に行ったんだ。

 

 魔王の娘だから死んでいたら大変だからな。

(いや、本当はかわいい姿を見たかったからなんだけど……)


 ルゥの部屋は、いつ魔王の娘が来てもいいように人間用のベットとか、赤ん坊用の服とかを準備してあった。

 全部ヴォジャノーイが人間の本を読んで用意した物だ。

 でも魔王が死んでから十数年経っているんだよな?

 赤ん坊が大きくなっているって思わなかったのか?

 全部赤ん坊用の物ばかりだし……? 


 ヴォジャノーイはルゥが赤ん坊の姿でこの世界に来るって知っていたのか?


 赤ん坊のルゥの部屋に入ると気持ち良さそうに寝ている。

 生きている。

 よし。

 大丈夫だな。 


 それにしても小さいな。

 いっぱい食わせて大きくして。

 そうだ、ハーピー族に伝わる武術を教えてやろう。

 それから……


 あれ?

 さっきオークがルゥを寝かしつけた時にかけた布が足元でグシャグシャになっている。


 風邪でもひいたら大変だ。


 そっと布を取ってかけると……

 あぁ……

 かわいい寝顔だな。

 

 ほら、もう大丈夫だ。

 これで寒くないだろう。

 

 ……あれ?

 今、足でバタバタして布を取った?

 風邪をひくからちゃんとかけろ。

 人間は弱いから、すぐに死ぬからな。


 仕方ない、もう一度布をかけるか。


 ……ん?

 また足で布を取った?


 ダメだな。

 布が嫌いなのか?

 困ったな。


 そうだ!

 わたしの腕の羽毛で温めてやればいいんだ!


 起こさないようにそっとベットに入る。

 

 そっと、そっとだぞ。

 腕の羽毛で包み込むと……


 柔らかい。

 かわいいな。 

 魅了の力があるって言っていたけど、そのせいでかわいいって思うのか?


 まぁ何でもいい。

 なんだか今日はよく眠れそうだ。



 あぁ……

 ルゥが小さい頃を思い出して思わずにやけてしまった。

 いけない。

 今は、しっかりしないとな。

『奴ら』がいつ来るか分からないんだ。


 

 死の島に帰って来て、夜になる___

 

 ……あぁ。

 今日は疲れたな。

 

 さてと、ルゥと寝るか。

 

 ルゥはどこだ?

 風呂にもいなかったし……?

 

 ん?

 波打ち際で寝ているのか。

 

 まったく。

 いつまで経っても赤ん坊だな。

 ルゥの左耳で、青い宝石がキラキラ光っている。

 

 ルゥに初めて会った時に光っていた耳飾りか。

 月に照らされて綺麗だな。

 

 ルゥの産みの親が持たせた物か……

 

 ヴォジャノーイが言っていたな。

 身体はこの世界の人間の物で、心は違う世界から来た前魔王の娘……

 

 ルゥは違う世界の事を覚えているのか?

 怖くて訊けないな。

 それに、今のルゥの母親はわたしなんだ。

 

 ルゥの心の母親も、身体の母親も……

 そんな存在は、いらない。 


 わたしがルゥの母親だ。

 だから、そのかわいい口でわたし以外をママと呼ばないでくれ。


「……こんな所で寝ると風邪をひくぞ?」


 眠っているルゥに優しく話しかける。

 かわいい寝顔だな。

 大きくなったが、まだ軽々抱っこできる。


 今日はわたしのベットで一緒に寝よう。

 

 かわいいルゥ。

 愛しているよ。

 これからもずっとずっと一緒にいよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ