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花嫁とばあば

今回は、ばあばが主役です。

 すっかり遅くなったわね。

 

 宴は夕方からだから、あと二時間くらい。

 急げば二十分で着くわ。


「魔王城でドレスに着替えたりヘアメイクもしないといけないから……ドラゴン族で送って行くわ」


 指をパチンと鳴らすと、六体の巨大なドラゴンが上空に現れる。


 魔族達が騒ぎ出したわね。 

 ドラゴンが集団行動するなんて滅多にないから当然かしら。

 

「王よ。待たせたか?」

 

 レッドドラゴンがわたしに話しかける。

 

「大丈夫よ。宴に間に合うように飛んでちょうだい。魚族長達とレモラ族は泳いで来てね」


 海から出られないから仕方ないわ。

 

「さぁ、ルゥ。ばあばの背に乗りなさい。出発よ」


 空の高い所をかなりのスピードで進む。


「うわぁ! すごい! 速いね」


 ルゥったらご機嫌ね。

 しっかりヴォジャノーイちゃんに抱っこされて、かわいいわ。

 あらあら、ハーピーもオークに抱っこされてるわね。

 なかなかいい感じだわ。

 オークはバスケットも持ってるのね。

 バスケットの中には小さい子達とヒヨコが入ってるけど……

 あのヒヨコ、堕天使よね?

 悪い事はできないって言ってたけど大丈夫なのかしら?

 

 オークはかわいい物が好きだから、すっかり気に入ったみたいね。

 ルゥはオークに甘いから……

 このまま世話する事になりそうね。


「ばあば! すごいね。もう着いちゃった!」


 魔王城の宴をする会場の砂浜にゆっくり降りる。


 先に到着していた魔族達が騒いでいる。

 ドラゴンが姿を現す事自体珍しいから。

 前の魔族の争いの時もドラゴン族だけは参加しなかったし。


「わたしは、ドラゴン王よ。かわいい孫娘のルゥの為に来たの。今日はよろしくね」


 わたしが、そう言うと他のドラゴン達と人間の姿になる。

 ドラゴン族は性別が自由に変えられる種族だから皆、中性的な見た目なのよね。

 

「さぁ、ルゥ。湯浴みをして綺麗に着飾るわよ。ばあばに任せてちょうだい」

 

 今日の為にメイク道具とバラ湯に使う最上級のバラを準備したんだから。

 ピッカピカに磨きあげるわよ!


「マンドラゴラ達も手伝ってくれるかしら?」


 魔王に訊きたい事もあるし。


「ばばあ! わたしも手伝うぞ!」


 ハーピーも来るのね……

『ばばあ』じゃなくて『ばあば』よ?

 悪い子じゃないんだけど、ちょっと足りないのよね……

 相変わらず寝癖だらけね。

 せっかくかわいい顔をしてるのにもったいないわ。

 一緒に綺麗にしてあげましょう。

 ハーピーのドレスを用意して来てよかった。

 ヴォジャノーイちゃんはルゥの事しか興味がないから。


 ルゥとハーピーとマンドラゴラ達が湯浴みをしている間に魔王と話をしないとね。

 

「魔王……あなた何してるの?」


 わたしが尋ねると魔王が悲しそうな顔をしている。


「……天使に『ルゥに会いたい』と言ったら……マンドラゴラになっていたんだ」


 天族が?

 でも、どうしてマンドラゴラなのかしら?


「ルゥにもヴォジャノーイちゃんにも秘密にするの?」


 言ったら喜ぶと思うけど?


「気を遣わせそうだし……色々嘘もついてきたし、言いにくくて。それに今のままでも幸せなんだ」


 わたしが、とやかく言う事じゃないわね。

 魔王が生きていたと分かれば、また揉める事になるだろうし。


「困った事があったらいつでも言ってちょうだい。力になるわ」


 魔王のマンドラゴラのかわいい手と握手する。

 

「さぁ! ルゥを世界一かわいい花嫁にするわよ!」


 

 ハーピーは紺の短い髪にオイルを塗ってツヤツヤにして赤い髪飾りをつける。

 ドレスは赤で裾にバラの花の刺繍がある物にしてみた。

 メイクもしないとね。

 さすが美しいハーピー族ね。 

 綺麗だわ。 


 ルゥは……

 相変わらずかわいいわね。

 小さくて柔らかくて……

 赤ん坊の頃と変わらないわ。


 ヴォジャノーイちゃんなら安心して任せられるわね。

 幸せの島に来る敵からルゥを命がけで守り続けてきたんだから。


 最近はベリス王がルゥに会いに行っているみたいだけど、毎回阻止しているようね。

 ベリス王は笑顔の下に感情を隠しているから気をつけないと。

 ルゥに近づくのには理由があるんだけど……

 わたしにはどうする事もできないし……

 はぁ……

 ルゥの幸せの為に少し脅しておこうかしら?

 しばらく大人しくなるでしょ……

 それにしても全魔族王会議の時にヴォジャノーイちゃんに、かなりやられたらしいけど全然懲りないみたい。

 困ったものだわ。


 さて、編み込んでアップにした髪に青い宝石でできた飾りをつけて……

 完成ね。


 綺麗だわ……


 人間が用意した白いドレスはフワフワでレースをふんだんに使ってある。

 胸の所には青い宝石がついている。

 ルゥのイヤリングに使っていた物ね。

 宴が終わったらイヤリングの形に戻さないと。

 でもヴォジャノーイちゃんが考えているだろうから余計な事を言うのはやめましょう。


「できたわ。綺麗よ」


 ルゥ……

 恥ずかしそうにしている顔もかわいいわね。

 魔王は泣いている……

 今までの魔王の苦労を知っているからわたしまで泣きそうになっちゃうわ。


「さぁ、ヴォジャノーイちゃんが待っているわよ」


 始まるわね。

 きっと穏やかには終わらない。  

 魔族がつがいになるのは、地位を固める為の王と王妃。

 それと、ヴォジャノーイちゃんみたいに嫉妬心が強い魔族が他の男に取られないようにする為。


 ルゥは魔王の娘だし、世界の半分以上の魔族が好意を抱いている。

 ルゥを手に入れた魔族は次期魔王に決まったようなもの。

 でもヴォジャノーイちゃんは魔王の座が欲しいんじゃなくて、ただルゥが欲しいだけだから……

 そういうところがかわいいのよね。

 

 今日の宴にもルゥを狙う奴らが大勢いるはず。

 魔族は自分が欲しい物は奪ってでも手に入れるから……

 ふふ。

 賑やかな宴になりそうね。

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