魔王城に出発
その日の夕方___
「ヴォジャノーイ。ルゥを頼んだぞ」
「ルゥ……心配だよぉ」
ママとパパがじいじと話している。
じいじとピーちゃんとわたしで魔王城に向かう事になったからなんだけど……
全魔族王会議の時は『種族の王』と『問題を起こした当事者』『自力で魔王城に行く事ができない王と当事者を送迎する者』しか城に入る事ができないらしい。
これは以前の会議の時に従者同士が揉めた事があったからなんだって。
全魔族王会議は重要な案件がある時にだけ開かれて、そこで決まった事に関して不満を言ってはいけない。
全魔族王会議の場で死者が出ても、誰もとがめられないらしい。
簡単に言えば、王が問題の当事者や他国の王の命を奪ってもいいっていう事。
弱い王は生き残れないんだね。
今、魔王の座は空いている。
だから種族王が最高位になる。
種族王は三つ以上の種族を傘下に入れなければ名乗れない。
現在王位を持つのは……
ヴォジャノーイ王
グリフォン王
ウェアウルフ王
イフリート王
ベリス王
リヴァイアサン王
ケルベロス王
ドラゴン王
の八人。
ドラゴン王は傘下に入る魔族がいなくても王を名乗れるらしい。
どの種族王の傘下にも入っていない魔族もいるってじいじが言っていたよね。
こんな時に不謹慎だけど……
ケルベロス王……
モフモフしてそう……
あれ?
どうしてケルベロス王がモフモフだって分かったんだろう?
会った事はないのに……
「それにしても、そのドレスの色……ヴォジャノーイの瞳の色だな」
ドレスの色?
じいじが用意してくれたドレスを見てママが話しているけど……
赤黒いベルラインのドレスとミニハット。
黒いレースがたくさん使われている。
少しは魔王の娘っぽく見えるかな?
「人間は大切な存在の瞳や髪色と同じ物を身に着けるらしいからな」
じいじがわたしの髪を撫でながら教えてくれたね。
「じいじの瞳の色か……えへへ。嬉しいな」
じいじに守られている感じがするよ。
「ヴォジャノーイ! 次は紺色のドレスを用意してくれよ! わたしの髪色のやつ! 絶対ルゥに似合うから!」
ママ……
真剣だな……
「緑がいいよぉ。パパの身体の色だよぉ?」
パパまで……
嬉しいな。
いつも大切にしてくれる。
わたしも皆が大好きだよ。
「姫様……何もできなくて申し訳ないです……」
ダディも心配してくれているんだね。
「ありがとう。遅くなるだろうから子供達と先に寝ていてね」
ダディと子供達の頭を撫でる。
「キュッ」
子供達が気持ち良さそうにかわいい声を出したね。
無事に帰って来ないと……
明日は朝から皆でプリンを食べたいな。
マンドラゴラの赤ちゃんのかわいい踊りを見たいよ。
「プリン作ってぇ待ってるからねぇ」
さすがパパ。
わたしの事をよく分かっているね。
「うん。楽しみだよ」
パパに抱きつく。
パパのプヨプヨのお腹が気持ちいい。
「ルゥ。ヴォジャノーイから離れるなよ」
真剣な顔のママが髪を撫でてくれる。
「うん。ありがとう、ママ。……いってきます!」
じいじの魔術で海の中を進む。
魔王城までは一時間はかかるらしい。
ピーちゃんに色々尋ねてみようかな?
「ピーちゃん、どうして今までシームルグだって言わなかったの?」
「ソレハ、ピーチャンガ、ピーチャンダッタカラダヨ」
……?
「それは……? どういう事?」
「ピーチャンハ、ヒメサマノ、ヤサシイキモチデ、シームルグニ、ナッタノ」
わたしの光属性の力っていう事?
よく分からないな。
「シームルグハ、ユウシャノ、ハハオヤノ、アイノチカラデ、シームルグニナルノ」
母親の愛の力?
まだ子供はいないんだけど?
「マンドラゴラ、カワイガッテ、アイノチカラ、イッパイ、デテタノ」
だから最近急に大きくなったのか。
「シームルグ、イナイト、ユウシャ、ウマレナイノ。フツウノコ、ウマレル」
ピーちゃんがいるから勇者になるっていう事?
うーん。
よく分からないな。
「ミンナ、ヒメサマスキナノ、ユウシャノ、ハハオヤダカラ」
え?
勇者の母親は魔族に好かれるの?
嫌われそうだけど?
「……ピーチャン、ツカレタ、ネル」
「え?」
なんだろう?
大切な事を、はぐらかされた気がする。
片足をお腹の羽毛にしまい込んで寝ちゃった……
小さい時も片足立ちで寝ていたな。
お腹……モフモフ……触りたい。
「ルゥ、魔王様のお母上はどんなお方だった?」
じいじ?
おばあちゃんの事を知りたいの?
「どうして……?」
「ルゥは魔族が怖くないだろう? 魔王様もそうだった。だが、普通は怖がるものだ。どうやって育てられたのか不思議なのだ」
確かに、血まみれのグリフォン王を見た時もかわいいと思ったよね……
怖いはずなのに、どうしてだろう?
「おばあちゃんは……パンチパーマだったよ?」
「……え?」
じいじが真剣な顔をしたまま言葉に詰まった?




