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オレ様王子とマンドラゴラ(4)

「ルゥ、あのねぇ? 家の事なんだけどぉ」


 パパがクラゲを抱っこしながら話し始める。


「今までの家はぁもう燃えちゃったけどぉ。明日にはぁ新しい家がぁできてるとぉ思うよぉ?」


 え?

 家が一日で建つの?


「あのねぇ。今までの家もぉ一日でぇできちゃったのぉ」


 ……?

 リビングにキッチンにお風呂にトイレ、部屋も八つあったのに?

 一日で建った?

 この世界の大工さんは、どうなっているの!?

 いや……

 まさか……

 ヴォジャノーイ族のおじちゃん達がやらされた……?


「パパ? 家を建てたのって……」


「ヴォジャノーイ族だよぉ?」


 やっぱり!

 ……想像できる。

 簡単に想像できるよ!

 椅子か何かに座って指示だけ出すじいじと、休憩も無く働かされるおじちゃん達……


 わたしの顔を見て察したのか、魚族長が話し始める。


「ここだけの話ですが……椅子に座るヴォジャノーイ様が、ヴォジャノーイ族の戦士達に一日で建てろと……」


 あぁ……やっぱりそうだったんだね。

 魚族長が遠い目になっているよ。


「先程、連絡用の小魚がヴォジャノーイ王国に向かったのでもうすぐヴォジャノーイ族の戦士達が泣きながら……いえ……あの……すぐに到着するはずです」


 泣きながら……?

 

「わたしもお手伝いする! おじちゃん達がかわいそうだし。わたし力持ちなんだよ」


 ニコッと笑うわたしに、パパと魚族長が笑顔になる。


「でも、木も全部燃えちゃったけど……どうするんだろう?」


 まさかおじちゃん達が遠くから運ばされるとか?


「ウェアウルフ王国は木がたくさんあるので、たぶんそこから調達するかと。今回はウェアウルフ族も手伝わされる……いえ……あの……手伝うと思います」

 

 手伝わされる……

 そういえば、ガゼボもあっという間に建てていたよね。

 おじちゃん達も少しは楽ができるかも。


 ……?

 海中で、すごい勢いの何かが通り過ぎて行った?


 あれ?

 なんだろう?

 戻って来た?


「姫様? ご無事でしたか! 家を建てにやって来ました!」 

「わたしが一番に建て終わります!」

「オレが一番だ!」


 また自分が一番アピールが始まった。

 かわいいな……

 でも、家はひとつあればいいんだけどな……


 そう、家はひとつあればよかったんだ。

 それなのに……


 

 五時間後___


 手伝おうとしたらじいじに『危ない』って止められたから、魚族長とイルカを見て帰って来たんだけど……


 何これ?


 五時間で家が建っている……

 しかも三軒も。

 ウェアウルフ族、ハーピー族、ヴォジャノーイ族、グリフォン族の姿が見える。

 なぜか、グリフォン王が悔しそうにしている?


「あぁ! 我々の手では家を建てる事ができませんでしたぁ!」


 あぁ……

 大きい猫の手みたいだから……

 でも、肉球がかわいいな。

 プニプニしたい……


「ルゥ! 帰ったか。見てみろ! ハーピー族の家だぞ!」


 ママは帰って来ていたんだね。

 ママに抱きつくと優しく抱きしめ返してくれる。


 木と藁でできた家が建っている。

 四人で住むには、ちょうどいい大きさだね。

 

「この家、ハーピー族の皆が建ててくれたの?」


「あぁ! そうだ! すごいだろ? 一番だろ?」


 ママ……

 おじちゃん達みたいになっているよ……


「何を言うか! 我がウェアウルフ族が一番だ! 聖女様! ご覧ください!」


 え?

 すごい家が建っている……

 お屋敷みたい。

 二階建てだ。

 五時間で建てたって……

 どうやったんだろう?


「姫様! 姫様あぁ! 以前と同じ家を建てましたあぁ! 我々が一番です! 姫様に頭を撫でられるのは我々だ!」


 もしかして皆、頭を撫でられたくて頑張ったの……?

 え?

 今、同じ家って言った?

 おじちゃん達の後ろの方を見ると……

 ……!

 今までと同じ家だ!

 

 涙が溢れてきたよ……

 

「うぅ……」


 涙が止まらないわたしを、皆が心配してくれる。


「ありがとう……皆……ありがとう」


 皆も涙ぐんだり、声を出して泣いたりしている。

 黙って見ていたじいじが抱きしめてくれる。

 そして口を開いた。


「さぁ、ルゥ。この愚か者をどうする?」


 え?

 愚か者?

 そこには、数匹のマンドラゴラに火あぶりにされている魔族がいる。


 あれ?

 何族の王子だっけ?


「誰……だっけ?」


「はぁ? 何で忘れるんだよ! オレ様はイフリート王国の王子だよ!」


 大声で叫ぶ王子に魔族の皆が殺気立つ。

 

「姫様! ジワジワがいいですか? ゴリゴリがいいですか?」


 え?

 おじちゃん……?

 ジワジワ?

 ゴリゴリ?

 何それ?


「えっと……」


 ジワジワとゴリゴリが何か訊いてみよう。


「ジワジ……」


 途中まで言いかけたところで魔族の皆が叫び出す。


「姫様はジワジワをご所望だあぁ!」

「さすが聖女様だあぁ!」

「ジワジワだあぁ!」


 え?

 いや、あの……

 ジワジワって……何?


「やめてくれええぇ!」


 王子の悲鳴が幸せの島に響いた。

 

 ……これがジワジワ。

 とても口には出せない事をしている。

 ジワジワ……

 恐ろしい……


 ちなみに魔族は簡単には死なないから縄でぐるぐる巻きにして、じいじがイフリート王国まで連れて行った。

 イフリート王国でじいじが何をするか……

 考えただけで恐ろしい。

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