オレ様王子とマンドラゴラ(2)
あれ?
無意識に魅了しちゃった?
でも、マンドラゴラは動いている。
やっぱりマンドラゴラは野菜だから魅了できなかったのかな?
ドサッ
魔族が膝から崩れ落ちた?
「うぅ! オレ様は魅了されないぞ!」
フラフラしながら立ち上がろうとしているけど……
それを見ていたマンドラゴラが大量に覆い被さって姿が見えなくなる。
うわ……
なんか残念な魔族?
ゴォォ
砂浜の砂が振動し始めた?
何?
すごい魔力を感じる。
この魔族が何かしようとしているの?
「パパ! わたしの後ろに隠れて!」
(ネーレウスのおじいちゃん! 防御膜を張りたいの!)
慌てて水の上位精霊に頼んで防御膜を張る。
なんとかパパと避難できたけど……
あれ?
マンドラゴラも一匹入っている。
いつの間にか、ピーちゃんもいる。
パパを置いて逃げたのに、いつの間に防御膜に入ったの?
「お前ら、赦さん! オレ様はイフリート王国の王子だ! 次期魔王だぞ!」
大量のマンドラゴラの塊の中に炎が見える。
覆い被さっていた大量のマンドラゴラが一瞬で灰になった!?
炎の中にうっすら魔族の姿が見える。
マンドラゴラを灰にしても炎の勢いは止まらない。
うわ!
すごい熱だ。
防御膜が激しく振動する。
しまった!
この防御膜は水でできている。
蒸発したら炎に巻き込まれる!
「パパ、ピーちゃん、マンドラゴラ、わたしの後ろにぴったりくっついて!」
火を消すしかない。
あの猛炎を消せるくらい強い水の魔術。
お願い!
ネーレウスのおじいちゃん!
力を貸して!
右腕を前に伸ばして、右手の人差し指と中指の間に意識を集中する。
身体中の血管が熱い……
水の魔法陣を空中に出す。
よし。
ここまでは、できている。
(ルゥよ。水が必要か?)
わたしにしか聞こえない声が、頭の中に低く響く。
相変わらず姿は見えないね。
この声は、水の上位精霊『ネーレウス』
海の老人と呼ばれている。
「おじいちゃん! 幸せの島が火の海なの。力を貸して!」
(……そうか、分かった。想像しろ、火が消えた景色を)
心を落ち着かせないと。
おじいちゃんはわたしの光の力を水の魔術に変換してくれる。
魔術の力の加減はわたしがするんだ。
おじいちゃんは、上位精霊だ。
気をつけないと、幸せの島を破壊してしまう。
わたしが制御しながら確実に火を消さないといけない。
大きく息を吐く。
大きな炎を水で消したい。
炎を水で包み込む。
炎が消えた島。
よし!
イメージできた。
「いくよ! おじいちゃん!」
伸ばした右腕の、手のひらの前にある魔法陣から大量の水が噴き出してくる。
ゴォォ
炎の熱で水が音をたてて蒸発している。
くっ!
水が魔法陣から出てくる勢いで、身体を後ろに押される。
もっと水が必要だ!
イメージするんだ。
もっと大量の水で火を包み込む!
水が水柱になって空高く昇っていく。
その水が豪雨みたいに幸せの島に降り注ぐ。
「火が消えていくよぉ! ルゥ頑張れぇ!」
パパが、水の勢いで倒れそうなわたしを押さえてくれている。
ありがとうパパ!
頑張るよ!
空に大きい虹が見える。
火が消えた。
「姫様ぁ!」
波打ち際に、慌てている魚族長が見える。
来てくれたんだ。
疲れた……
立っていられずにその場にしゃがみ込む。
「ふぅ……おじいちゃん、ありがとう」
(なかなか愉快だったぞ……)
お礼を言うとおじいちゃんは帰ったみたいだ。
愉快……か。
上位精霊達は楽しい事が大好きだからね。
良かった。
パパもピーちゃんも怪我はないみたい。
家は……?
振り返って家を見る。
……え?
家が焼け落ちて、崩れた柱から煙が出ている。
嘘……
家が……
しゃがみ込んだまま頭が真っ白になる。
涙が溢れ出してくる。
パパもわたしを抱きしめながら泣いている。




