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灰色からの青

作者: 美緒

この小説は、精神病院内という

異色の世界で、繰り広げられる。

心を病んだ、若者の日常が、描かれている。それんを、踏まえて、青春とは何かを、追求している。

街並みはずれた静かな高台に、その病院は、建っていた。 そこは、心療内科専門で、思春期障害の少年少女達が、入院していた。

真は、この春から入院していた。

この病院は、朝のラジオ体操から始まり、朝食を取る。

九時から十時半まで、勉強にあてられた。

その後、談話室で、自由時間を過ごした。

トランプをしたり、オセロをしたり、テレビを、見たりする、少年少女達がいた。


俺は、勉強にあてた。


そして、昼食、決しておいしい食事とは言えないが、文句を言うものは、いなかった。

一時から、三時まで、勉強の時間と、決まっていた。

その後皆で集まり、悩みを打ち明け合っていく

という時間があった。

真は、この時間が一番嫌いだった。

どうして人に俺の悩みを、打ち明けなければいけないんだ。

そんな事言うつもりなんかない。

その集いは、 すぐ泣きじゃくる少女、


同情を引きたいだけの子


私は、世界で、一番不幸です。


等様々だった。


俺は、集いが、終わると、すぐに部屋に入り、自分の好きな曲を聞いていた。

無名なアーティストだけど、心が落ち着いた。


そして、参考書を何冊か、広げ、むさぼる様に

勉強した。


俺は、絶対T大へ行く。

この考えだけは、ゆるがない。


真は、黒い闇を、一瞬でも忘れる様に、勉強に、没頭した。


真は、高校を、中退している。


大検を受けるのが最初だ。


俺の心の闇、暗くて深い。

悩み、それは、誰にも言わない。


医者の、診察が週に一度ある。


真は、医者にも、何も言わない。

真は、おざなりの、診察で、話せる時がきたら

言いなさいと、言われる。

いつものことだ。

真は、医者など信じられなかった。


そんな日々が続いたある日、女の子が入院してきた。



その子は、前髪を目が見えないほど伸ばし、顔は、よく見えなかったが、寂しそうに思えた。


看護師が、皆の前で、「浅田美幸さんてす。

みんなよろしくね。」


そう言って、その場合を離れて行った。


その子は、恥ずかしそうに、椅子に座って外をながめていた。


ある日、談話室で、参考書を読んでいた時、

その子がいた。

何をするでもなく、ただ静かに座っていた。

気まずい雰囲気の中、俺は、「ここには、馴れた?」と聞いてみた。

美幸は、「私、ここに居るの楽です。」

と言った。

「俺もここは、落ち着くよ。」

二人は、くすっと笑った。


美幸は、長く伸ばした髪の事を、打ち明けた。

「私、気持ち悪い顔だから自分を見られるのが

いやなの。」

悲しげに言った。

俺から見るととても可愛いのに、どうしてそう

思うんだろう。

深くは、聞かなかった。


美幸と俺は、同じ歳だとわかった。

そして、彼女は、高校一年で、退学していた事

を話した。ひどいいじめに、あったことも話した。

俺も中退してる事。

でも、大学へ、行こうと思っでいる事を、話した。


「私は、大学生が羨ましい。友達とわいわいと

遊んだり、勉強して、資格を取ったり、もう叶わない夢だけどね。」




俺は、美幸の夢を現実にしてやろうと思った。

死ぬほど、勉強しないといけないけど、絶対一緒に、大学に、行こうと思った。

美幸は、寂しげに言った。。


俺達を暗い闇に、突き落とした奴らを、見返してやろうと改めて真は、T大へ行く事を誓った。


それから、談話室で死ぬほど勉強した。

勉強の合間に、たわいのない会話もするようになった。

美幸は、シングソングライターのAIと言うアーティストが好きだと言った。今流行りの曲だった。

「俺は、無名の曲が好きなんだよ。」

と言った。

テレビ番組の話しでも盛り上がった。


そんな時、同じ病棟に、入院している、男性が話しかけてきた。


「君達高校生?」 その質問には、答えられなかった。

「僕は、大学三回生で、石田隆っていうんだ。」

大学生か、俺達が手に入れようとしている夢を

叶えている人なんだ。

「大学生ですか、僕達は、今そこを目指してるんです。」

「そうか、うーん僕は、大学には何の意味も感じないんだけどなぁ、むしろ行かないでいた方が良かったと思ってる。」



少し暗い表情をした。


「でも、君達が夢を、叶えたいんだったら、

応援するよ。」

彼は、俺達に、勉強を、教えてくれた。


この、病院は、週に一度、中庭で、運動ができた。


バドミントン、バレーボール、ミニサッカー


それで、気分転換ができた。


美幸は、何もせずベンチに座っていた。

俺は、サッカーボールを、転がしていた。

石田さんは、バドミントンをしていた。

とてもうまかった。


真もしようと誘ってくれた。 思うように、できない。

石田さんは、教えてくれた。

少し出来るる様になって、石田さんと、遊んだ。


石田さんは、俺の兄のようだった。


俺は、少しずつ心の痛みが薄らいでいくのを感じた。

でも、あの事はどうしても忘れられない。


運動時間が終わり、病室で、休息する事になっていた。

少し休み、談話室に、いくと、石田さんがいた。

石田さんは、大学の話をしてくれた。

「勉強しようと思えばいくらでも出来るよ。二十歳になれば酒も飲めるしね。

皆で集まって、飲み会もできる。

君たちも、きっと楽しめるよ。」


俺には、夢のような話だった。


石田さんは、いつも優しくいろんな事を、教えてくれた。

俺と美幸は、いっそう勉強した。


ある日、看護師たちが忙しそうに小走りしていた。

何だろう。


看護師が「あなた達、部屋にいなさい。」

と、強い口調でいった。


俺達は、不安になった。


部屋から出れるようになると、石田さんの部屋を、ノックした。

部屋には、石田さんのベッドがなかった。


「何があったんだ。」

少年達が、泣き腫らした顔で言った。

「石田さんは、亡くなったよ。」

「嘘だろ!なんでだよ、石田さんが死ぬなんて。」


後から聞くと、石田さんは、自殺未遂をなんども繰返していたそうだ。

俺達に優しくしてくれた、石田さんにも闇があったんだ。


俺は、何もする気がしなかった。

美幸も、泣いてばかりいた。


時は過ぎ、秋がきた。

俺達は、大検を受ける時期がきた。

しかし俺は、本当に大学へ行って、楽しく過ごせるのか。 なんだか不安になってきた。

美幸は、「真くんが大学へ、行かないのだった

私も行かないと言った。」

「俺は、行くよ。石田さんの分まで、勉強に励むよ」

自分に言い聞かせた。

石田さんの事があって、外での運動は、中止になった。


俺は、勉強の合間、腹筋をして体も鍛えた。

美幸も、必死で勉強していた。

談話室では、美幸と、いろいろと、冗談を

言って笑い合った。


そしてお互いに惹かれあった。

気がつけば、美幸は、前髪を上げていた ああ、その髪型にしたんだ。

「良く頑張ったね。似合ってる、」

「私、真君や、石田さんに出会って少しずつ

心癒されてきたの。 真君、ありがとう。」

「俺は、何もしてないよ。」と笑った。

俺は、美幸の心の闇が晴れてきたのを嬉しく思った。

「真君、私、A短大へ、行きたいの。

そして、保育士になりたい。」

「俺は、T大の医学部に、入るよ。

そして、精神科医になる。

医者になって誰も死なせやしない。

俺達の闇も消してくれるような医者になる。

俺は、高二の時、ひどいいじめにあった。

机は、落書きだらけ、教科書は、破られ、弁当は、砂を振りかけられ、帰り道、待ち伏せされ殴る、蹴る、万引きもさせられた。


だけどどうしても誰にも言えなかった俺の最大のいじめは、下校中、電信柱に、転がっていた、犬の糞を、無理やり食べさせられた事、

これほど屈辱的な事は、なかった。

そして、次の日から、学校へ、行かなくなった。俺は、家のなかで、暴れた。

親も殴った。

そんな俺をみかねて、この病院に、入れられた。」俺は、美幸に打ち明けた。「そんな辛い過去があったのね。

私は、友達と思っていた子がいつの間にか、他のグループに入って、気持ち悪いからあっちに行ってと言われて、学校にいけなくなった。」


お互いに、ずっと言えなくて、悩みを抱え込んでいた事を

話せる事ができた。

心が軽くなった。

「美幸、ありがとう。」


数日後、俺達は、外出許可が出た。

俺と美幸は、一緒に、外にでた。

空気がおいしかった。


俺達は、病院の周りを散歩する事にした。何故か、外での見ると、美幸が

いっそう可愛く見えた。


美幸は、子供のようにはしゃいだ。

美幸は、恥ずかしそうに言った。

「真君、手をつないでくれる?」

俺は、女の子と手をつないだ事なんてなかった。

繋いだ時、胸が高鳴った。

ベンチに座り、美幸は、「私ね、入院した時からずっと気になっていてね…

「真君の事が好きだったの。」

「俺も好きだったよ。」

美幸は、弾んだ声で嬉しいと言った。

俺の心の闇が完全に消えたわけではないが、

静かに、柔らかにとけだした事に、間違いはない。

俺達は、時間になったので病院へ戻った。


それから俺達は、必死に、勉強した。


そして、大検の、試験を受けた。


そして、晴れて、二人は、合格した。


これで大学へ、一歩進んだ。

俺達には、もう闇はない。


数日後、バスで町まででかけた。


クレープを食べ歩きしたり、プリクラもした。 美幸は、ウィンドショッピングをして楽しそうだった。


俺達は、それぞれの主治医に、心の闇は、消えました。と報告した。

先生は、喜んでくれた。

そして、間もなく、俺達は、退院した。


俺と美幸は、大学受験に向かって、頑張ろうと誓いあった。。


そして、、「美幸好きだよ」とキスをした。


俺達の青春は、これからだ。


二人は、ジャンプした。





完 美緒

この小説を読んで、何かに、打ち込む事の大切さを、感じとって頂けたら、幸いです。努力とその先の成功が、心の病をも、克服する。そこに、私の狙いが、ありました。一つの青春を描いたつもりです。

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