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第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞

お菓子の甘さを控えたら…。

作者: 文学壮女

甘い感じのものを書いてみました。

楽しんでいただけると嬉しいです。

その日も僕は先輩のお部屋で、一緒に新しいお菓子のレシピを考えていました。


「甘さ控えめのお菓子もいくつか置いた方がよさそうだよね。」

「そうですね…。」

「“スイーツ”なのにね。」

「“スイーツ”なんですけどね。」


お菓子と言えば甘いもの!と思っている僕たちにとってそれは本当に難しい問題なんだけど…。


「でも、甘いのが苦手な人も一緒に楽しいおやつタイムが過ごせたらきっと楽しいよね!」


そう言って笑う先輩を見ていると、なんとかしなきゃって頑張る気持ちが湧いてきます。


「と、言うわけで早速いくつか作ったので試食してみよう。」

「はい。」


目の前に並べられたお菓子はどれも素敵で、僕は思わず食べるのがもったいないと思ってしまいます。


フルーツを多めにしたもの、いっそビターに仕上げたもの、スポンジのフワフワさを強調したもの…

甘さを控えるために色々な工夫を施されたお菓子たちです。


食べながら説明を聞いているうちに、先輩の様子がおかしいことに気付きました。

なんとなくボーッとしています。

「先輩、どうかしましたか?」

問いかける僕に向けられた先輩の目は潤んでいます。

「えっ?大丈夫ですか?何かありました?」

慌てる僕に先輩はしょんぼりと答えます。

「あぁ、やっぱりダメでした。ごめんなさい。」


僕は先輩の近くへ行くために、手に持っていたままだったお菓子をひとまず口に放り込みます。

そして気付きました。


「先輩、このお菓子…。」

「…はい、少しお酒を入れてみました。」


僕を見る先輩の顔がどんどん赤くなっていきます。


「甘さを抑える代わりに風味を…と。

ほんの少しだから大丈夫だと思ったんだけど、やっぱり食べるのはやめておけばよかった…。」


僕はちゃんと覚えています。

先輩がお酒を全く飲めないことを。


「お水を持ってきます!」


そう言って立ち上がろうとする僕の手を先輩がつかみます。


「あの…?」


戸惑っているうちに、僕は先輩に抱き締められていました。

優しい、優しいハグ。

そして…。


「うん。やっぱり()()()()が好き。」


先輩はニッコリと笑って、そのままパタリと床に寝転んでしまいました。


どれくらい放心していたのでしょう。

先輩の寝息に気付いた僕は、寝室から持ってきた布団をそっとその体にかけました。


先輩の幸せそうな寝顔。

そして僕は改めて唇の感触を思い出します。


「せっかくお菓子の甘さを控えたのに…。」


でもやっぱり僕も、甘い方が好きみたいです。

読んでいただきありがとうございました。

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