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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

怪盗の親友とは

作者: 死黒白亜

「この宝は貰っていくぞ無能な警察諸君!!さらばだ!」

ふふふ、今日も無事に目的のお宝を手に入れることができたぞ。

あぁ、あいつが居なくなってやり易いことこの上ないなぁ!?

次のターゲットは何にしようか。


…戻ってこいよ…お前が居ないと、何を盗んだって、飾ったって、楽しくないんだよ…





Twitterに投稿したこちらの140字の小説のロングバージョンです。



どうにでも解釈できるように書いておりますので是非感想にてあなたの世界を聞かせてください。

あいつとは、中学生からの親友だったんだ。


2年生の2学期が始まった後1週間くらいに急に転校してきた。

第一印象は根暗、陰キャ、コミュ症。

典型的なオタクみたいな奴だと思った。

でも話していくうちに人見知りなだけだと知ったクラスメイト達の輪の中心に、あいつは静かに居るようになっていた。

あいつは正義感が強くて、揉め事が有れば止めに行ったし、怪盗が現れたニュースを見れば「人の物を盗むなんて!」と憤っていた。


あいつとは1番仲がよかったという自負があるが、転校してきた理由や親のこと、家庭のことは話そうとしなかった。子供心に聞いてはいけないことだと悟ったクラスメイト達も無理矢理聞く様なことは無かった。


中学3年生の頃、担任が変な人で志望校は話してはいけないというルールを作った。

そのせいで誰も仲のいい人の志望校すら知らなかった。頑なに守っていたのだ。

不思議な縁で、あいつとは高校も同じになった。知り合いがいて安心した記憶がある。


怪盗を始めたのは、丁度高校2年生の秋だった。

初めはちょっとした好奇心で追っていた有名な怪盗たちの背中を、2年生の春に本気で追いかけたいと思ったんだ。

自他共に認める猪突猛進さを遺憾無く発揮し、ある怪盗に弟子入りし、秋には活動が無理なくできる体力と技術を身につけていた。


そして、怪盗だとバレないまま高校を卒業した。

その後は師匠の会社に入って怪盗活動をした。

怪盗達の不文律はただ一つ。

盗んだ物で生活しないこと、ただの盗人には落ちてはいけないという戒めだった。

昼間はきちんと働き、夜は情報収集や鍛錬、計画したり、盗みに行ったり。

とても充実していた3年間だった。


5年も活動を続ければそこそこ有名になり警察も動く、油断せずに仕事をしていた。


ある日、またいつものように盗みに入った時。

あいつに出会ってしまった。

会っていない間に随分変わってしまっているが、紛れもなくあいつだった。

しばらく呆然としていると警察の声がする。

「居たぞ!!怪盗だ!逃すな!!」

その声で意識を取り戻し、すぐに逃げ出した。

これが、最初で最後の失敗だった。



あいつとは、盗みを重ねるたびに姿を合わせる回数が多くなっていった。

あいつが居ても、もう心を動かしはしなかった。

師匠から無敗の怪盗の名を受け継いでも、あいつはいつもそばにいるような気がしていた。



ある日、ふと、しばらくあいつの顔を見ていないと思ってしまった。

あいつの名前を調べるとすぐにニュースが出てきた。

丁度1ヶ月前の日付だ。

『○○県**市にてトラックが暴走。

 13名が重軽傷、うち3名が重体。』

『トラック暴走事故。

 1名が少女を庇い死亡。』

その死者の欄には、あいつの名前があった。

昔から正義感は強かったあいつが、子供を庇って死んだのか。はは、ざまぁないな。あいつらしい最期だ。仕事が楽になるな。



そして、次の日。

いつものように宝を盗みに行く。


「この宝は貰っていくぞ無能な警察諸君!!さらばだ!」


ふふふ、今日も無事に目的のお宝を手に入れることができたぞ。

あぁ、あいつが居なくなってやり易いことこの上ないなぁ!?

次のターゲットは何にしようか。


あぁ、あいつはこういうのが好きだっけ。

次はこれにしようか。



いつもの日々を繰り返す中で、確実に精神は擦り切れていた。



なんで…置いていったんだよ…

…戻ってこいよ

…お前が居ないと、何を盗んだって、飾ったって、楽しくないんだよ…

何をやっても満たされないんだ…



卒業してからのあいつなんて、ただ街中でよく顔を合わせるだけの他人なのに、なんでこんなに忘れられないんだ。

親友だったとしてもどうせ覚えてなんて居ないだろう。

運命が少し違えばもう死ぬまで会わなかっただろうに、なんで出会ってしまったんだろう。



神の悪戯か、気まぐれか、はたまた偶然か。

それは誰も知らない。

ただ、昔の親友が偶然出会い、1人が偶然死んだ。それだけの、この日常のどこにでも可能性のあるくだらない話だ。


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