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GAME CLEAR! その1

 ……急にこんな風に言われたって理解できる奴なんかいないはずだよな、そうだその通りだ。

 まあ時系列を順々に追って話して行こうか。

 今じゃ時間なんてあって有り余るくらいさ……


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 僕の本当の名前は……はは、忘れたな。

 もう何年も使っていなかったものだし、今では別の名前で呼ばれているものだから、すっかり記憶は薄れて消えている。

 そうだな、これを読んでいる君自身の名前に置き換えておけばいい。

 そう、君の名前だよ。

 僕は、君だ。


 僕は男で、年齢は23歳。

 身長は成人男性平均くらいの170cmで、体重は63kg。

 趣味は本を読むことと風呂に入ること、ギターを弾くこと。


 僕は6年くらい前、この世界……「ボロウドーン」にやってきた。

 ……ああよく覚えてるよ、この世界にやってきた時のことはね。

 特に何もないただの平日に、いつも通りベッドで寝て、起きたら森の中だよ、笑うだろう? 僕は笑ったさ。

 要するに、「異世界」モノの物語の主人公になってしまったってわけだ。


 異世界とか魔法とか、基本そう言ったオカルトじみた物事に関心興味もまるで無かった僕からすると、当時は本当、世界が目新しく見えたに違いない。

 今じゃもう、寝起きにすぐ魔法でランプに火を灯すくらいには、この世界に秩序にどっぷり浸かって慣れてしまったが。


 ……そう、君もこんな世界にやってきてやることといったら、わかるよな?

 僕もファンタジー小説の主人公みたいに、世界を旅してきたんだ、いままで、ずっと。


 相当長くなるから、ここで話すのはやめておく。

 僕も多分、話に込み入ってしまうだろうし……、かなり、濃密な時間を過ごしてきたと思う。

 前の世界じゃあ、絶対に経験できないことを、面倒いし辛いし痛かったけど、今じゃいい思い出だ。


 しかしまあ、ここもすっかり変わったな。

 ああ、知らない君のために説明すると、僕が今住んでいるここは僕が来た当初は、それはもう派手に荒れてたんだ。

 今では心地よい風が流れ、鳥のさえずり声がやまない緑生い茂る森林になってるが、そうじゃなかったんだ。

 草木はぼろぼろに枯れ、動物なんて何1匹いない平坦な荒地が続いていて、照りつく日差しで脳の奥まで乾きそうなほどの熱気があたりを覆い尽くしてたんだ、信じられるか?


 いやあ、その頃の僕には全く考えられなかっただろうな。

 数年後見違えるように変わったこの地に、コテージを持って住み着くなんてね。

 それも全て、旅の最後に自らの手で手に入れたものさ。



 ああ、あの旅に出た事で手に入れたものはたくさんある。

 もちろん……失ったものだってな。

 失ったものの中には、僕たちにとってかけがえの無いものもあった。

 ないものねだりはしたくは無いが、やはり時たま、不意に脳裏に浮かぶことだってあるんだ。

 不思議なことにそんな時は大体、一緒に旅をした奴らもおんなじ様なことを思い浮かべているらしい……、一種のテレパシーというか、なんだろうな? まあいい……


 奴らとの旅を終えて……言うなれば、「GAME CLEAR!」って画面に表示されそうな場面はもうとっくに過ぎてはいるんだが、未だに心に残った傷というのは、癒えずにいる。


 ただ奴らも僕のことはよくわかってるみたいでね、僕がたとえひどく心身をやられていても、首を吊ったりする人間じゃ無いってことを知っていたはずだ。

 じゃなきゃ僕はここで1人で暮らしてなんかいない。

 何がなんでも、僕を引き留めようとするはずだ。

 もちろん、死ぬつもりなんてさらさら無いが。


 しかしまあ、これからの物語はその後日譚というわけでも無さそうだ。

 なんなら、僕のストーリー第二部といったレベルのボリュームがあるはず、じゃなければこんな辞書くらい大きな帳簿を、奴が送ってくるはずがないよな?


 今日からまたしばらく、落ち着かない日々が続きそうだ。

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