イサヤの部屋
あらあら、2人はこれからどうするんでしょう(笑)
呆然としたまま連れてこられたから、どこをどう歩いたのかも覚えていない。気づいたら広々とした一室にいて、目の前には大きなベッドが…。
えっと…そうだ!あそこにあるソファ、あそこで寝かせてもらおう!
そんなことを思っていると、ガチャッとドアの開く音が。反射的にそちらを見ると、上半身裸のまま、濡れた髪をバスタオルで拭きながら歩いてくるイサヤ。
服を着ていた時にはわからなかった均整のとれた筋肉のある綺麗な体…。まだ髪から水滴がポタポタ滴っている。
まさしく水も滴る……って、私、今なにを!?
「お、ちょっとは状況が飲み込めてきたか?」
内心焦りまくる私を見て、そんなことを言ってくる。
「?」
「さっきから話しかけてもボーッとしてるし、返事も全然しないから、先にシャワー浴びてきたんだけど。大丈夫ならお前も浴びてこいよ。さっぱりするぞ?」
そう言いながら、そのまま近づいてきて私の顔を覗き込む。
って、近い! 顔が近い近い!!一瞬で馬車の中でのキスの記憶が蘇ってきて、思わず後ずさった。
でも、イサヤはそんな私はどうでもいいのか、
「バスルームに一通りのものが揃ってるから。お前用の部屋着も用意してあるみたいだし、それ使えば?」
緊張する私と、いたって普通のイサヤ。
……そっか、イサヤにしたら自分の部屋に女の子がいるのなんて珍しくないのかも。そう思ったら変に緊張している自分が馬鹿らしくなってきた。
「じゃぁ、お言葉に甘えてバスルーム、お借りします…」
できるだけ冷静な声で言ったつもり。そしてそのままイサヤが出てきたドアを開けてバスルームへ。
バスルームはとっても清潔感に溢れていた。イサヤが言っていた通り、私のためのものと思われるふわふわでモコモコした可愛いピンクの部屋着もきれいに畳んで置いてあった。
仕事用のローブを脱いで、その下に着ていたくるぶし丈の黒いワンピースも脱いだ。重いローブを脱ぐだけでもかなり開放感があるけど、全てを脱いだら身も心も軽くなった感じ。
それからシャワーを浴びて、ふと見ると浴槽にお湯が張ってあった。
これも私のために用意してくれたのかな?
今日は本当にいろんなことがあって疲れていたから、遠慮なく浴槽に身を沈めた。
「ふぅ〜、いい香り〜」
温かいお湯は花のいい香りがして、とってもリラックスできた。自然と漏れた声が広いバスルームに響く。ゆったりと浴槽に背を預けたら、1日の疲れがどっと押し寄せてきて、ゆっくりと目を閉じた。
どれくらいそうしてただろう。不意にドアをノックする音がして、パッと目を開けた。
「おい、大丈夫か?すっげー長風呂だけど、溺れてないよな?」
ドアの外からイサヤの心配そうな声がした。
!!私ってばもしかして寝てた!?
「だ、大丈夫!ちょっとお風呂が気持ちよすぎて長風呂になっちゃっただけ!もう上がるから!」
「ならいいけど…。何かあったら呼べよ?」
そう言い残して、イサヤの気配が遠ざかって行った。
私があんまり出てこないから、心配してくれたんだ…。いつもは意地悪なくせに、こうやって優しいところがあるんだよね。こーゆうところが、女の子にモテる理由なんだろうなぁ。おまけに普通は意地悪じゃないみたいだし、尚更だよね。
女の子にモテるイサヤのことを考えると、またあのモヤモヤが胸に溢れてくる。私はそれを振り払うようにして、大急ぎでお風呂から出た。
体を拭いて、用意してあったピンク色の部屋着を手に取って広げて…絶句した。
「何これ…」
でも、仕事用に着ていた服をもう一度着るのも嫌だしなぁ。仕方がないのでその部屋着に袖を通す。それから髪を乾かしてバスルームを出た。
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