攻防のその後
ミカエル様はやっぱりミカエル様ってことでしょうか(笑)
ヨフィ様とばかり話していた私は気づかなかった。ミカエル様がスヴァルツォさんを呼んで、何事かを耳打ちしていたのに。
しばらくしてスヴァルツォさんが、
「お部屋の準備ができました」
と伝えてくれた。それを合図に全員で立ち上がる。
「ではメイさん、ゆっくりお休みになってね」
そう言って、最初にヨフィ様が出て行かれた。その優雅な後ろ姿を見届けたミカエル様が、おもむろに私とイサヤに向けて話し始める。
「大変申し訳ないんだが、急なことだったからメイさんにきちんとした部屋が準備できなかったんだ」
……えっ?
でも、これには、さすがのイサヤも違和感を感じたみたいで、
「はぁ?屋敷の中にいくつ部屋があると思ってんだ?普段から来客用やら何やらで使ってない部屋が山ほどあるだろーが」
って言ってくれた。
だよね。この規模で、しかもミカエル様のお屋敷で、いくら急なこととはいえ、おかしいよね。
でも、ミカエル様は真顔のまま、イサヤと私の怪訝な顔と質問なんて華麗にスルーして、
「それがね、もうすぐ大々的にパーティーを開く予定があって、それに備えて客室をリメイクしている最中なんだよ。いくらなんでも工事中の部屋にイさんを寝かせるなんてこと、できないだろう?」
って。
”じゃあ、なんで招待したんですか!?”
という質問をすることは、続くミカエル様の言葉で永久にできなくなった。
「だから、申し訳ないが、今夜はイサヤの部屋でメイさんを寝かせて差し上げるように」
にっこりと笑ったミカエル様は、言うだけ言って、さっさとティールームを後にした。
……はい?
残された私とイサヤは、多分、同じ顔をしていたに違いない。ポッカーンと、まさしく開いた口が塞がらないとはこのこと。
最初に口を開いたのはイサヤ。
「はぁ〜、ったく。親父のやつ、何考えてんだ?」
「へっ、あれって本気?ミカエル様、本気で私にイサヤの部屋で寝ろって?」
違うよね!?
っていう期待を込めた私の質問には、超期待はずれの返事が…。
「そうなんじゃねーの?」
って、なんでそんなに冷静!?
「な、なんで?」
「そんなの俺が聞きたいっつーの。 はぁ…。しゃーねーな。俺もさすがに今日は疲れたし、さっさと風呂入って寝るぞ」
そう言って、髪をガシガシしながら歩き出すイサヤ。
「えっ!?イ、イサヤはいいの!?」
「あ?何が?」
「いや、だって、私と一緒にって…」
もしかして、サラリとこの状況を受け入れちゃってるの!?
「心配すんな、俺の部屋わりと広いし。ベッドもデカイから2人で寝るのなんて余裕だし」
「ちょ!そーいう問題!?」
「なに?他になにが問題なわけ?」
そんな・・・心底わからない、って顔をされたら、私がおかしいのかと思っちゃう。
けど、おかしいよね!?
絶対この流れっておかしいよね!?
しかもイサヤと2人で1つのベッドで寝るの!?ありえないでしょ!?
「あー、もしかしてそういう心配?」
「へっ?」
「大丈夫だって。さすがの俺も、お前を襲うほど女に飢えてねぇから」
そう言って今度こそスタスタ歩き始めるイサヤ。イサヤは扉のところで振り返ると、なおも呆然として動けないでいる私を見て、小さく溜息をついた。そして、私のところまで戻ってくると、
「ショックを受けてるとこ悪いけど、親父ってああ見えて結構頑固だから、一度言い出したら聞かねぇ。今日は諦めるんだな」
そう言って、今度は私の手をとって歩き始めた。ミカエル様の言葉とイサヤの行動に思いっきり戸惑いながらも、なす術のない私。
神様!あんまりです!!
私が何をしたって言うんですか〜〜〜〜〜!!!
今更ですが、メイが助けを求めるなら神様じゃなくて魔王様では?(笑)




