メイとイサヤ2
一旦イサヤ視点です。
俺にとって、メイの存在が特殊なことに思い至った時、馬車の扉が静かに開く音がした。
閉じていた目をゆっくりと開けて、開け放たれた扉の外を見る。少し向こうから、息を切らして走ってくるメイの姿が見えた。
馬車の少し手前で何かに気づいて立ち止まるメイ。でっかい瞳が馬車全体をガン見している。
プッと自然に小さく吹き出してしまいながら、やっぱりな、と思った。
あいつのことだから、この馬車の装丁を見て戸惑ってるんだろうな。それにしても、親父は何を思ってこの馬車をよこしたんだか…。まぁ俺としてはメイの面白い顔が見れたからそれで十分だけどな。
メイはやっとのことで動きだせたらしく、恐る恐るといった感じで近づいてきて、素早く中に体を滑り込ませた。入ってきたら入ってきたで、中をキョロキョロと見回している。
警戒心の強い小動物みてぇだ…。
そんなメイの背後で馬車の扉が静かに閉じられたけど、その小さな音にもビクッと体を震わせている。
どこまでも小動物だな。。。
キョロキョロしていたのが、扉が閉まった音で止まって……。渋々?怖々?といった感じで俺の方に視線を向けてきた。心なしか赤く染まった頬で俺のことをじっと見つめている。
きっと、さっきの俺の態度を思い出して、俺が怒っているんじゃないか、とか、いろいろ考えているんだろう。ダメだ…もうこれ以上笑いをこらえられそうにねぇ……。
「ぷはっ! ハハハッ!」
突然笑い出した俺を見て、メイはきょとんとした顔をしている。
まぁそうだろうな。
怒ってると思ってた俺が突然笑い出すんだから。こいつには何が何だかわからないってところだろう。
そうこうしているうちに馬車がゆっくりと進み始めた。
「そんなとこ突っ立ってないで座れば?」
「う、うん…」
メイはぎこちなく返事すると、そっと俺の向かいに腰を下ろした。緊張しているのか、膝の上でぎゅっと拳を握ったままうつむいて俺のほうを見ようとしない。
これは…どうしてやろっかな。
……お、いいこと思いついた。
メイ〜!逃げろ〜(笑)




