イサヤとエイリ
先程のエイリと再会です
「おい、お前」
部屋を出て歩きだした途端、上から目線で言われてカチンときた。
「メイです」
硬い声で返事したら、
「はいー?」
ってイラついた感じで返された。ムッ、なんでそんな言い方されなきゃいけないわけ!?
「私にはメイっていう名前が…」
という私の言葉を遠慮なく遮って、
「知ってるつーの。さっき聞いたし」
ちょ〜偉そうだし!!!
「じゃあなんで!」
こっちも喧嘩腰。
「お前みたいなちびっ子、名前で呼ぶほどでもねぇだろ」
「な!なんて失礼な!!身長はこれからまだ伸びるもん!それよりあなた、ホントに天使!?」
「なにぃ〜?」
きゃ〜、怖い!怒ってる!!でも負けないもん!
「だって、天使さんって普通は穏やかで優しいものなんじゃないの?」
「ふん、俺は普通じゃねーってのか?」
「どうみたって天使っていうより悪魔っていうか…」
「はぁ?お前がそれを言う?どっちかってぇーと、お前の方がよっぽど悪魔らしくねぇだろーが」
「う…でも!これでも一応、学校は首席で卒業したんだから!」
「だから?」
「だから?って言われても…」
「ほらみろ。たいしたことねー。やっぱお前なんか”ちび”か”お前”で十分だ」
ム〜…悔しいけどなんだか言い返す言葉が見つからない。
私が言葉に詰まって黙っていると、
「ぷっ!なんだ、その顔。それって怒った顔か?ほっぺた膨らんでるぞ。お前、リスかよ!?」
あ!笑った!!すごい、こんな顔もするんだ♪
(黙ってればカッコイイし、笑うとすごくキラキラなのに〜)
「あ?黙ってればってどういうことだよ。俺はしゃべると残念ってことか?」
「ぎゃ〜!やめて〜!」
こめかみをグーでぐりぐりされるのは痛いです!
ってゆーか、私また声に出てたのか。気をつけなきゃ…。
「あれ?イサヤと…もしかしてメイちゃん?」
私がジタバタしてると、後ろから声をかけられた。
「なんだ、エイリか」
「エイリさん!?」
振り向くと、さっきリール大佐の部屋の前で会ったエイリさんがいた。さっきはエンジェルスマイルだったのに、今はなんだかびっくりしたような顔。
エイリさん、イサヤ少尉と知り合いだったんだ。
「エイリ〜、聞いてくれよ!俺の新しいパートナー、このちびなんだぜ?おまけにど新人だし…」
イサヤ少尉がエイリさんの肩に寄りかかって、さも面倒って顔を私に向けて言うから、カチンときちゃった!
「新人で悪かったですね!誰だって最初は新人でしょ!?」
勢い良く言い返すと、
「お前、ちびのくせに生意気」
って冷めた目でチラリと私を見て一言。もー!腹立つ!!
「うわぁ、イサヤ、どうしたの?こんなかわいい女の子相手に思いっきり素じゃないか」
私たちのやりとりを聞いていたエイリさんが、ほんとうにびっくりした顔で聞いてきた。
大佐といいエイリさんといい…。逆に普段のイサヤ少尉ってどんな?
おまけにイサヤ少尉ってばエイリさんにもタメ口。
エイリさんは中尉って言ってたから、どう考えてもイサヤ少尉の方が階級が下だし!イサヤ少尉にとって階級って意味無し!?天使の世界で階級って、かなり重要って聞いてるのに大丈夫なのかな?
って、なに私ってば意地悪天使を心配するようなこと考えてるんだろ。別にイサヤ少尉が誰にどう思われようと私には関係ないし!
「大佐と同じこと言ってんじゃねーよ。こんなちび相手にかっこつけたってしょーがねーってこと」
不機嫌そうなイサヤ少尉。でも本物の天使のエイリさんは、
「えぇ〜、メイちゃんってば、その小さいところも含めてものすごくかわいいと思うけど?」
って。
やっぱりエイリさんって素敵!私のことかわいいって!お世辞でもエイリさんが言うとイヤミじゃないなぁ。
あーあ、どうして私のパートナーはエイリさんじゃないんだろ…。
エイリさんにうっとりと見とれていたら、いつの間にか私の後ろに回っていたイサヤ少尉に突然、腕をつかまれてひっぱられた。
「わっ!!」
あんまり強く引っ張られたので、思わずイサヤ少尉の胸に飛び込むみたいになっちゃった。
「わわっ、ご、ごめんなさい」
あわてて離れたけど、イサヤ少尉は腕をはなしてくれない。
なんで〜?
「イサヤ?」
声をかけてくるエイリさんだって怪訝そうな顔だよ。
「別に…。これから仕事だから」
「ふーん、そっか」
一瞬、エイリさんは何かを言いたそうな顔をしたけど、でも何も言わなかった。
「じゃあね、メイちゃん。もしイサヤにいじめられたら僕のところにおいで。いつでも待ってるからね」
エンジェルスマイルが戻ったエイリさんが手を振って見送ってくれたけど…。イサヤ少尉が私の腕をつかんだまま、引っぱっるようにしてズンズン歩くので、エイリさんを振り返る余裕さえなかった。
「あ、あの!」
つかまれている腕が痛くて声をかけるけど、イサヤ少尉は振り返りもせず歩いていく。
背の高いイサヤ少尉についていこうと思うと、背の低い私は自然と小走りだ。
も〜!私なんかした?いくらなんでもこんな扱い受けるのって理不尽じゃない!?
「あの!腕、痛いんですけど!!」
いろいろが我慢できなくなって、思わず大きな声で言っちゃった。また怒るかと思ったのに、振り返ったイサヤ少尉はちょっとびっくりした顔。
「あ、わりぃ」
ぱっと腕をはなしたあと、なんとなくバツの悪そうな顔をした。なんでそんな顔になるんだろ?
「仕事に行くぞ」
それだけ言うと、また前を向いて歩き出したけど、今度は私が走らなくてもいいスピード。
あれ?ちょっとは私のこと気遣ってくれてるのかな?なんだかよくわかんないや。
私はすでに見慣れてきた気もするその背中を見ながら、ついて行くことにした。
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