イサヤができるまで2(学生編)
ここからはイサヤの過去(学生時代)が明かされます
天界で生まれた天使は、一定の年齢になると、全員が必ず学院に通うことになっている。当然、俺も規定通り入学したが、すぐに飛び級でいくつか学年をすっ飛ばすことになった。
もともとの俺様な性格に加えて、負けず嫌いなところもあったから、周りの期待に大いに応えようとしたのがよかったらしい。俺自身も、学院に通うことで新しいことを知る楽しみがあったし、人知れず努力することも嫌ではなかったので、その結果としてグングンと実力を伸ばすことになった。
学院は、個人の実力に合わせて随時カリキュラムが組み直されるから、おかげで俺の伸びは天井知らずだった。
周囲からは期待以上の結果に対する賛美もあり、やっかみまじりの批判もあった。この頃の俺は、自分に対する批判は力で捻じ伏せるっていう荒々しい方法を取っていた。もちろんそうやって周りを黙らせれば、反感も大きい。
けど、俺はそんなこと気にしなかった。正直言って、次代のミカエルっていう肩書きを笠に着て、調子に乗りまくっていたとも言えるな…。
当然、そんな俺についてくる奴は少数派で、俺と俺を囲む奴らは常に悪目立ちしていた。かといって、俺が周りの奴らに、完全に心を許しているとか、信頼しているということはなかった。
勝手に慕ってきてるだけ。次代のミカエルという肩書きのある俺に心酔しているだけ。それがなければ自己中で横暴な俺についてくるやつなんていない。小さい頃の俺に大人たちが媚びてきたのと同じで、学校でもそんな奴らがいるっていうだけ。
その証拠に、俺と周りの奴らとのあいだには完全な上下関係ができていた。
でも、そんなことを俺は全く気にしていなかった。むしろ、俺の周りには俺の言うことを聞く舎弟的なやつばっかりがいて、逆に気分の良い毎日を過ごしていたと言っても過言ではない。
俺の心は冷めきっていた。見た目もそうだし、やっていることも派手だから、いい加減な気持ちで女が擦り寄ってくることも多々あって、女がらみのトラブルも絶えなかった。まぁ、それはそれで、俺も自ら楽しんでトラブルに首を突っ込んでいたようなところもあるから、お互い様ってやつだけど。
当然、それを面白く思ってないやつなんて腐るほどいたわけで…。女がらみで男から恨まれるのは当たり前。横暴で、振る舞いも粗野な俺が、どうして次代のミカエルなんだ!?って。
周囲の大人はもちろん、生徒の中にも侮蔑のこもった目で見てくるやつは多かった。
でも、どんなに妬まれようと、暴言を吐かれようと、次代のミカエルは俺だという絶対的な決定事項がさらに俺を調子に乗せていた。
はぁ…。今思うとダサいな、俺。
超ガキ臭い…。
でも、そんな俺に、担任のマチアス先生だけはいつも真剣に怒ってくれたし、真剣に心配してくれた。
もっと丁寧な言葉で話せとか、振る舞いがガサツすぎるとか…。お前は俺の親かってくらいに、毎日毎日飽きもせずにガミガミ言ってきた。
見た目は小柄で華奢。当時の俺よりも背が低かったから、いつも俺を見上げながら、顔を真っ赤にして怒る姿が新鮮だった。
まだ新米の教師のくせに、他の教師が俺を腫れ物を扱うように接するのなんて無視して、他の生徒と同じように接してくれた。特別扱いもせず、媚びもせず。ただ真っ直ぐに俺自身を見てくれていた。
だから俺も少しずつ心を開いていったんだと思う。
冷めきっていた俺の心に小さく留まる暖かな光。
俺にとって、マチアス先生はそんな存在だった。でもある日、あの事件は起こった。
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次回はイサヤが変わるきっかけになった事件のお話です。




