イサヤの目覚め
今回はイサヤ目線です
…
……
なんかよくわかんねぇけど、すっげぇ苦しくて辛い思いと、すっげぇ気持ち良くてすっきりした思いをした気がしてふっと目が覚めた。
そこは天井も壁も真っ白な、見慣れない部屋だった。
「お、やっと目が覚めたかい?」
と聞き慣れた声がした。声がした方に顔を向けると、エイリが呆れたような顔をして俺のことを見ていた。
「ここどこだよ?なんで俺はここにいる?」
状況が飲み込めなくて不機嫌に聞く俺に、エイリは呆れたような顔のまま答えた。
「あれ?覚えてない?
仕事から帰ってきたかと思ったら、ゲートの近くで血を吐いて倒れたんだよ。
ったく、メイちゃんから聞いたけど、むちゃくちゃにもほどがあるだろ?」
最後はちょっと咎めるように言う。
「何のことだ?」
俺が素知らぬふりで答えると、
「とぼけちゃって…まぁいいけどね」
エイリはそう言うと、それ以上は追及してこなかった。こういうとこ、エイリには敵わねぇなぁって思う。
ってゆーか、俺がこんなことになってるわけだし、あいつ相当困ったんじゃねぇか?
でっかい瞳に涙をいっぱい浮かべているメイの顔が浮かんできた。どこかで一人で泣いているかもしれないと思うとものすごく気になってきた。
「そういえば、メイは?」
エイリに聞いたら、ちょっと目を細めて俺を見た。一瞬、なんでそんな目で見られなきゃなんねーんだよ!?と思ったけど、次のエイリの言葉にそんなこと吹っ飛んだ。
「メイちゃんなら、隣のベットで眠ってるよ」
「なに!?」
まさか、あいつの身になんかあったのか!?
慌てて起き上がりながら隣のベッドを見てみると、メイが静かに眠っていた。
「あいつ、どうしたんだ!?何かあったのか?どっか怪我してるとか?」
「違うよ、落ち着けって…。別に怪我もしてないし何か異常があるわけではない。ただちょっと…」
「ちょっとなんだよ?」
「まぁなんというか…。刺激が強すぎだというか、なんというか…」
言葉を選んでるのかなんなのか、歯切れの悪いエイリにイライラした。
「なんだよはっきり言えよ」
ややキレ気味に言ったら、やっと返事が返ってきた。
「まぁなんというか、イサヤの体の中で暴れまくってた闇の力を浄化するのに、いろんな力を使い切っちゃったってところかな?」
「まじかよ…。あいつが俺の中の闇を?あいつ、闇祓いなんてできたんだな…」
「そうだよ。それはもうすごかったんだから…。いろいろと、ね」
「なんだよ?なんか含みのある言い方だな?」
俺の知らないメイのことを知ってるエイリにますますイライラした。
「でも、ここってもしかしなくてもゲートの近くにある医療棟じゃねーの?だったら、闇祓いを専門にやってる悪魔がいるだろ?」
わかっているけど、突っかかるような言い方になるのを止められない。
「そうだよ。だけど、途中で倒れちゃったんだ。だから仕方なく続きをメイちゃんが引き受けたってわけ」
「ふーん…。よくわかんねぇけど、とにかくあいつに迷惑かけちまったんだな…」
イライラをぐっと抑えつけて言うと、
「そう思うなら、まずはゆっくり療養して。それと、たくさん出しちゃった血を元に戻して早く元気になりなよ」
やっとエイリがいつもの感じに戻ったので、俺も気持ちを切り替えることにした。
「俺ってそんなに血、失なっちゃったわけ?」
「それはもう結構な量をね」
エイリがやれやれとため息をつきながらそう言ったから、結構危なかったのかもしれねぇな、と思った。
それにしても、隣で眠るメイはピンク色の頬をしていて、スヤスヤと気持ちよさそうだったりする。俺は、またこいつに助けられたってことか…。
相変わらずスヤスヤ眠るメイを横目で見ながら、俺はそんなことを考えた。その後、エイリと今後のことについて話し合った後、さすがの俺も疲れを感じたので、もう一眠りすることにした。
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