パートナー
再会ですね
「どうぞ」
エイリさんに教えてもらった部屋のドアをノックすると、穏やかな声が返ってきた。
その声にほっとして部屋に入ると、落ち着いた色調の部屋の真ん中に大きな執務用の机があって、口元に微笑みを浮かべたおじさまの天使さんが座っていた。
机の手前には、立ち姿がスラリと美しい天使さんが1人立っていて…。
あれ?この長身の天使さんの後ろ姿、どこかで見た気が…?
すると、その天使さんがゆっくりと振り向いた。
「あぁっ!」
ぎゃ〜!さっきの怖い天使!!
「あっ!お前、さっきの!」
怖い天使さんも私に気づいちゃったよ〜!って当たり前か。ついさっきのことだもんね。
緊迫感あふれる私たちのやりとりに反して、リール大佐が穏やか〜な声で言ってきた。
「おや、2人は知り合いだったのかい?」
「違う!」「違います!」
あ、ハモッちゃった。なんて呑気に感心してる場合じゃなかった。思いっきりにらまれてるよ〜!
「てんめぇ〜、さっきはよくも逃げやがったな!」
「いや、その、あの…」
やばい!やばいよ〜。なんでさっきの怖い天使がここにいるの〜?しかも逃げたから!?さっきよりも怒りが増してる気がする!
やだやだ!もう帰りたい。泣きたくなってきた…。
「なっ、なんでお前が泣きそうになってんだよ!」
私の目に涙がたまるのを見たのか、突然焦った声で聞かれる。
「だ、だってぇ〜」
涙で鼻声になっちゃうし…もうやだ。
「泣きたいのはこっちだっつーの。お前のせいで痛い目みるし、おまけに今ここに来たってことは…」
なおも私に詰め寄ろうとする天使さんだったけど、
「めずらしいね。イサヤが女性に対して素のままで話すなんて」
という、穏やかなリール大佐の声に遮られて、イサヤと呼ばれた天使さんの勢いが半減した。
よ、よかったよ〜。
「ちっ、しょーがねぇじゃん。さっき会ったときに、つい素が出ちまったんだよ」
リール大佐にブツブツ言うイサヤさん。
”つい素が出た”
どういうこと?
「イサヤに初対面で素を出させるなんて。なかなかやるね、メイさん」
訳が分からないけれど、なんだかリール大佐に褒められた感じなので一応お礼を言ってみる。
「お、お褒めに預かり光栄です?」
すると、すかさず意地悪な声が。
「ばーか、調子に乗ってんじゃねぇ」
と容赦なくツッコンできた。
「な、バカって!」
いくらなんでもさっきが初対面なのに失礼すぎない!?
「リール大佐、俺の新しいパートナーって…」
なのに、私の言葉は完全にスルーしてリール大佐と話し始めたし!もう!さすがの私も怒りがわいてきた。
「ちょっと、無視しないでよ!」
かなり勢い込んで言ったけど、
「まぁまぁ2人とも」
という相変わらず穏やか〜なリール大佐の声に、私の勢いも削がれちゃった。
「イサヤ。こちらの可愛らしい悪魔のメイさん、彼女が君の新しいパートナーだ。メイさん、彼はイサヤ少尉。地上任務には詳しい優秀な先輩だから、いろんなことを彼から学ぶといい」
(えぇ〜!私のパートナーが、この怖い天使!?)
「ぷっ!あはははは!イサヤを怖い天使と評する女性はそう多くはないね…」
そう言ってリール大佐は目に涙までためて笑ってる。
しまった!私、また声に出てた!?
「まぁ、なにはともあれ今日から2人はパートナーだ。仲良くやるんだよ。ふふふ…」
まだ笑いが止まらない様子のリール大佐は、それでも私たちに今日の指令が書かれた書類を渡してくれた。
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