メイの想い
ここからはメイに戻ります
あれ、真っ暗?さっきまで真っ白なベッドを真っ赤な血で染めながら苦しむイサヤの姿が目の前にあったはずなのに…?
「ここ、どこ?」
「メイちゃん?大丈夫?目隠ししてごめんね。こうでもしないと僕の声が聞こえないかな、と思って」
そう言われた後にパッと眩しくなった。状況を理解するのに数秒かかったと思う。
不安気な顔で私をのぞき込むエイリさんを見ながら、エイリさんが言った言葉を反芻して、ようやく。
あぁ、私の目を覆っていたエイリさんの手がなくなったんだ。だから真っ暗から眩しいくらい明るくなったのね。
「あれ、エイリさん、イサヤは?」
自分の声が自分のものじゃないみたいに冷静にしゃべっている気がした。
「イサヤは隣の部屋だよ。今、優秀な医療チームが全力で治療中だから大丈夫」
エイリさんは声に力が入りつつも、なるべく静かにゆっくり話そうとしているみたいに見える。
「そっか…」
私はかろうじてそれだけ返事した。
「メイちゃん、動揺してるかもしれないけれど、とっても大事なことだから、よーく思い出して教えて欲しいんだ」
エイリさんが一生懸命私に話しかけてくれてる。頭の片隅ではわかっているのに、私の頭はこんな時にぼんやりとしか働いてくれないみたい。
「イサヤと仕事に出ている間になにがあったか教えてくれない?」
エイリさんの声がちょっと遠くで聞こえるように思えた。なんだか現実味がない。
「……エイリさん…どうしよう?イサヤ死んじゃうの?イサヤが死んじゃったら、私どうしたらいい?」
「大丈夫、大丈夫だよメイちゃん。イサヤはこんなことで死んだりしないから」
慌てたように言った後、少し間をおいてから、またエイリさんが話し始めた。
「メイちゃん、僕の話をよーく聞いて?今とっても大事な時なんだ。イサヤがどうしてあんな風になったのか、原因がわからなくて医療チームも困っている。原因が分かれば確実な治療が行える。そうすればイサヤは必ず助かる。でも原因がわからないまま治療を行っていては間に合わないかもしれない。出血量が多すぎるんだ…」
最後はほとんど消え入るような声でエイリさんが言った。エイリさんの最後のほうの言葉が頭の中でぐるぐる回る。
間に合わないかもしれない、出血量が多すぎる…。
それって、それって…イサヤが死んじゃうってこと!?
そんなのやだ!!やだやだやだ!!
神様お願いイサヤを連れてかないで!
私にできる事だったら何でもするからお願いします!
私はそれを心の中でつぶやいたのか、声に出して叫んだのかはわからなかったけれど、とにかくイサヤがいなくなっちゃうのが嫌で嫌で。イサヤがいなくなるっていうことを想像するだけで胸の奥がぎゅっと掴まれてつぶれてしまいそうになった。
苦しくて苦しくて息が止まっちゃいそう。
気づいたら目から熱いものが溢れてきて、いつの間にか胸のあたりをぎゅっと握っていた私の手にポタリポタリと水滴が落ちるのが分かった。
久しぶりのメイなのに、ちょっと頼りなげ。がんばれメイ!!




