翔とイサヤとメイと
メイの顔面が崩壊しそうです(笑)
ちょっと嬉しくてニヤケそうになる頬にグッと力を入れながら、できるだけ落ち着いた声で…。
「そうだよ、翔くん。私たちは、翔くんが”翔くん”として最後に願うお願いを叶えるために来たの」
「ほらな」
ドヤ顔で言うイサヤに、私の表情筋もついに限界がきちゃったけど、まぁいいよね。
「ボクがボクとして、さいごにするおねがいなの?」
「そうだ。翔っていう人間は死んだ。死んだ人間は生き返ったりするか?」
「ううん、しないってママがいってた」
「そうだろ。だから、お前は1度、俺と一緒に天国へ行く。そして、そこでまっさらな状態に戻る。それから、今度は全く新しい人間として愛羅やお前の両親のそばに生まれ変わるんだ」
「うまれかわるってどんなふうに?」
「そりゃ、今のお前が願うなら、どんな風にだって生まれ変われるぞ」
「じゃあ、すっごくつよくて、かしこくて、おかねもちにうまれたい!」
あれれ!?翔くん、なんだかノリノリ?
「強くて賢くてまではわかるけど、なんだよ、その金持ちってのは」
確かに。なかなかに世知辛い…。
「だって、おいしゃさまになるには、いっぱいべんきょうしなくちゃいけないし、がっこうもたくさんいかなくちゃいけないでしょ?それに、しんぞうのしゅじゅちゅは、おかねがいっぱいいるって…」
翔くんゴメン!そんないじらしい思いが込められていたなんて!!感動して、ちょっとうるっとしそうになったよ。
それなのに…!
「ぶっ、翔、お前今、しゅじゅちゅって言ったろ?ちゅって」
な〜!感動してる横で、そこをツッコむ!?
もう!
イサヤってば意地悪なんだから!!
案の定、翔くんもイサヤにブーブー言ってるし。でも、結果的にイサヤの考えた通りになってるよね。
俺様だし意地悪だけど、先輩としては尊敬しちゃうかも。じゃれあっているようなイサヤと翔くんを見ながら、そんな風に感じた。
それに…初仕事だったから、前日の夜からものすごく緊張してたけど、思い返すと仕事に就いた頃には緊張なんてどっかに飛んでいっちゃってたし。まさか、私が緊張してガチガチだったことに気づいてた?
なーんてね、そんなわけないか。
「こら〜、二人とも!遊んでないで、そろそろ行こう」
いい加減、待ちくたびれたから二人の方を振り向いてみたら、イサヤが無邪気な笑顔を浮かべながら、追いかけてくる翔くんから逃げてる…。なんかもう、兄弟のじゃれあいみたいに見えるんですけど。
「翔く〜ん、翔くんの願い事は決まりでいい?」
「あ、おねえちゃん!おにいちゃんのことつかまえて!!」
「ば〜か!俺がそんなちび悪魔につかまるわけねぇだろ」
「なに〜!!見てなさい、翔くん!すぐに捕まえてあげるから!!」
それからヘトヘトになるまで追いかけっこをしたことは…報告書には書けないな。
幼い命がまっすぐ見つめる先に希望の光が満ちていてよかった!




