小悪魔のメイ
出会った2人のこれからをお楽しみください!
今日から初仕事の私、悪魔のメイ。
昨日の夜は緊張してなかなか眠れなかった。
お母様は「そんなに心配しなくても大丈夫」って笑って言ってくれたけど、でもやっぱり緊張するよ!
なんたって初仕事だし、おまけに天使さんと話すのだって、なんなら魔界から出ることですら初めて。
なにもかもが初めてなんだもん!
でも、まぁそのせいで今朝は寝坊…。
おまけにくせ毛に思いっきりついた寝癖は、どんなにがんばっても全然なおらないし…泣きたいくらいだった。
メイドのマリノが見かねて手伝ってくれたから何とかなったけど。初仕事の日だし、パートナーの天使さんとの初顔合わせの日でもあるのに…。
そんなわけで、やや遅刻気味で家を出た私は、目的の建物に着いてから廊下を猛烈にダッシュしていた。
しかも迷った…。
「なんなのこの建物。やたら廊下が長いし〜」
泣きそうになりながら走っていた私は、前方に、キラキラ光る金髪のストレートヘア、そして純白のローブを身に着けた長身の天使を見つけた。
ラッキー!!あの天使さんに場所を聞いてみよう!
天使さんだし、きっと親切に教えてくれるはず♪
そんな私の浅はかな考えが木っ端みじんに吹き飛んだのはこの直後。
焦って走り寄ったせいで、前を歩く天使さんに声をかけようした瞬間、自分の服の裾を自分で踏んでしまった。
誰よ!!仕事用の正装に、床まで届きそうなローブの着用を決めたのは!?
慣れない服装のせいにしたけど状況は変わらず…。
その結果…天使さんの背中めがけてダイビングしちゃった私。
天使さんの背中に思いっきりおでこをぶつけたあげく、反動で廊下に尻もち。
いや〜ん、超カッコ悪い!!
おまけに私からぶつかったのに、嫌な顔をするどころか心配そうな顔で手を差し伸べてくれた超絶カッコイイ天使さんに、今度は頭突き…。
やっちゃったよ〜〜〜。いきなり大失敗だよ。もう本当に泣きたい。
はっ!
そんなこと考えてる場合じゃなかった!!
天使さんに謝らなくちゃ!!!
カッコイイはもちろんだけど、美しいという形容詞さえ浮かんでくる、きれいな顔をした金髪の天使さん。
彼は、私の頭突きを喰らって痛むアゴを、切れ長の瞳を細めながら押さえている。
私を見たその力強い瞳は吸い込まれそうなほどの深い青。
明るい青色なのに深くて…。
神様が愛してやまないという地球を守るあの青と同じ色だった。
でも、形の良いその唇から出た言葉は。
「てめぇ〜…!バカかっ!!俺様が手を貸してやろうってのに、なんで自分で立ち上がるんだよ!?」
えぇ〜!マジギレ!?
きれいな顔で怒られると半端なく怖いんですけど…。
しかもきれいな顔に似合わず口が悪い…。
自分のこと俺様って…どうなのそれ?
これ、本当に天使?実は悪魔が化けてるんじゃ?
…でも、悪いのは私。天使さんが怒るのは無理もない。なので必死で頭を下げた。
「すいません!!ほんとうにごめんなさいっ!」
精一杯、頭を下げながら一生懸命に謝っていると、
「はぁ〜」
というため息が聞こえてきた。おそるおそる顔を上げると
「ったく、危うくキャラが崩壊するところだったじゃねーか」
「あ、あの…」
キャラ???
頭に盛大な?マークが浮かぶのを止められないんですけど?
「もういいっつーの。お前、名前は?」
ひぃ~、怖いよ~。
「あ、あの、メイです」
「ふーん…」
今度はジロジロ見てる〜。
「おい、お前。俺の顔に傷つけて、ただで済むと思ってんの?」
こんどはニヤリと口角をあげて意地悪な笑み。
(えぇ〜、なんなの?これって脅し!?ぜったいこれ天使じゃないよ…)
「お前…いい度胸してんじゃん。俺にケンカ売ってんのか?どっからどうみても天使だろーが」
「えっ!? はっ!」
(きゃ〜、もしかして声に出てた?)
「思いっきり出てるっつーの」
いや〜、もっと睨まれた!!
「あ、あの、その、私っ!失礼します!すいませんでしたぁ〜!!」
「あ!おまっ…!」
私は怖い天使さんからダッシュで逃げた。
だってめちゃくちゃ怖かったんだもん…。
謝ってるのに許してくれそうにないしさ。
それに、この後、逃げたことを思いっきり後悔することになるなんて思ってもなかったから…。
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