翔の願い事は?
引き続きシリアス展開(残酷なシーンがありますので、苦手な方は読み飛ばしてください)
まだ子供だし、なんのことか理解できなかったり、もっと感情的になって大変なことになるかと思ったんだけど…。
さすが先輩ってことかな?
「気ぃぬいてんじゃねーぞ」
「え?」
ドスの利いた低音でボソッと言われて、背筋がピンと伸びたかも。
「それじゃ聞くけど、最後に1つだけ願い事を叶えてやる。なんでもいいから言ってみろ」
「ねがいごと?」
「ああ」
「なんでもいいの?」
「そうだ」
「……」
「なんにもおもいつかない」
翔くんの魂は、そう言ったかと思うとスッとイサヤの手の中から飛び出した。
「あ、こら待て!どこに行く気だ?」
「翔くんダメだよ!勝手に動いたら危ないよ!」
私たちは翔くんの魂を慌てて追いかけた。
きれいな白い光の残像を残しながら飛んでいく魂の後を追いかけていくと、事故があった場所に戻ってきてしまった。
事故現場には動かなくなった翔くんの小さな体と、その体を抱きかかえて離そうとしないお母さんの姿が。
翔くんの魂は、それからしばらく、お母さんの側をフワフワと漂っていた。
そりゃそうだよね。
まだまだお母さんに甘えたいだろうし、甘えて当然の年頃だもんね。
お母さんから離れたくないに決まってる…。
でも、だからって、このままずっと地上を彷徨わせておくことはできない。
ちゃんと魂が戻るべき場所へ還って、次の新しい命になる準備をしなくちゃ。
それに、こんなにキレイな光を放つ魂が彷徨ったりなんかしたら、すぐにアイツらが嗅ぎ付けてやって来るに違いないし!
アイツら…餓鬼は確かにうざったいけど大した力はないから追い払うのは簡単。
私が最も警戒しているアイツらっていうのは、
「死神」
「ひゃっ!」
1人で考え込んでいると、ちょうど頭の中に浮かんだ言葉を突然声に出されたから、ものすご〜くびっくりした!!
「なーに変な声だしてんだよ」
「えっと、それはその…」
「まぁいい。死神の奴らが嗅ぎつけるとやっかいだからさっさとカタをつけるか」
「カタって…どうやって?」
翔くんが私たちに願い事を1つしてくれなければ、私たちは翔くんの魂を導いていくことはできない。
なんでも勝手にしちゃっていいわけではないの。
でも、今の状況からすると翔くんがすぐに願い事を言ってくれるとは思えないし…。かといって、そのままにしておくと、餓鬼どころか死神なんていう手強い奴らが来てしまうかもしれない。
特に死神は何のために魂を手に入れたがっているかイマイチわからない奴ら。
魂に取り憑いてエネルギーを自分たちの力にしようとする餓鬼の方がよっぽどわかりやすくていいかも。
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